ロワールのサロンで会ったときから感じていたが、オーナーのヴァンサン・ジローはとても精力的だ。いいワインを造ろうという強い意志を感じる。会場で約束した通り、この生産者を訪ねた。やはり訪問は畑からだ。さあ畑を見に行こう、と思った瞬間、思いがけない出迎えがあった。イモリだ!しかも大きいイモリだ。黒と黄色のツートンカラー。ヴァンサンいわく、イモリが出迎えてくれるなんて滅多にないという。幸先のよさを感じた。 現在10haからなるこのドメーヌの歴史は古く、このドメーヌが位置するロワール・エ・シェール県で最も古い11世紀まで遡るという。しかも、現当主ヴァンサンは1994年からビオディナミを実践しており、フランスでも最も昔からビオディナミを実践する10人に含まれているそうだ。ビオディナミを始めた当初は誰にもそのことを言わなかったそうだが、雨が多く周りのすべての生産者でカビが蔓延しいい収穫が出来なかったとき、彼だけが素晴らしいブドウを収穫しいいワインを造った。それから彼の行動に皆が注目するようになったそうだ。ビオディナミの実践は、先日訪問したドメーヌ・デュ・シャトー・ド・ガイヤールのお父さん、フランソワ・ブーシェに教わったそうだ。 彼によれば、ワイン造りで最も大切な要素は、素晴らしいテロワールだという。彼がビオディナミを実践するのは、その素晴らしいテロワールを最大限発揮するワイン造りを実現する為だ。だから、つい最近今持っている畑の南に位置するロワール川を望む真南向きの斜面の雑木林を18haも買ったそうだ。以前はこの畑にはブドウが植わっており、素晴らしいワインが出来ていたそうだ。 彼のワインはこれだけ手を掛けて造っているのにとてもリーズナブルだ。白は辛口だがやや甘みを感じるように優しい味わい。ガメをそのままプレスして造ったロゼは淡い色調で、やはり辛口ながら優しい味わい。コ、ガメ、カベルネ・フラン各1/3から造った赤は、熟したダークチェーリのような果実味とまろやかなタンニン、程よい濃厚さのバランスがとてもよく取れている。さらに上級キュヴェの白と赤を造っており、白はシュナン70%、シャルドネ30%を500Lの樽で発酵、5ヶ月樽塾させたリッチなワイン。赤はやはり3品種を1/3ずつ用いブルゴーニュ樽で7ヶ月樽熟させた、滑らかで深みのあるワインだ。またここのクレマンもコストパフォーマンスに優れた安心して飲めるタイプの良質ワインだ。