DOMAINE LEONIS ドメーヌ・レオニス

ラファエルの性格は一言でいうと“控えめ”。

自分から意見を主張したり、ワインを売り込む為の語りを自分からすること全くない。

ラファエルの蔵に行ってテースティングしても、黙ってグラス に注いでくれたあとは、ジッと私の試飲を眺めている。

こちらから、質問しなければ殆ど語らない。

こんなフランス人は珍しい。普通は自分のやっていることを2倍に強調して説明、喋りまくる人が多い。

だから、私はいつも話半分で聞いている。

ここまで無口だとチョット心配になってくるほどである。

私にとって沈黙は全く邪魔にならないので、二人でしばらく何も喋らないで試飲に集中することもある。

ワインの品質、レベルは驚くほど高い。

じっくり考えて、目標を定めて、一つ一つの作業を狙った通り実行しない限り、絶対にできないレベルの品質だ。

相当の努力をしているのが分る。

決して表向きに分りやすい味わいではない。ジワリジワリと奥からいろんな要素の味わいが表現されてくる深味がある。

まるでラファエルのような性格のワイン質だ。

 

ラファエルは地元ボジョレの醸造家の家に生を享けた。何と14人兄弟がいて、11人目の子だった。

多分、この控えめの性格は、大勢いる兄弟の中で築かれたものであろう。

 

ラファエルは小さい頃から、ワイン造りに大変興味をもっていた。でも兄弟が多いので家業を継ぐことは不可能だった。

近所に若者達がワイン造りを手伝いながら楽しそうに仕事している醸造元があった。

それがジャン・クロード・ラパリュの蔵だった。ラファエルはジャンクロードにお願いして一緒に働くことになった。

ここにも、ラパリュ学校の薫陶をうけた醸造家がいる。

ラファエルは、ジャンクロードのワインの美味しさに感動していた。

自分もこんなワインを造りたいと願っていた。

ある時、近所の栽培家から畑を借りられるオファーがあった。

ラファエルはこんなチャンスは二度とないだろうと、この控えめな性格ながらこの時は一番に手を挙げた。

それが2011年だった。

(夢が叶ったその当時のラファエルの控えめながらも嬉しそうな写真を添付しておく。)

しかも、この畑はローマ時代から栽培されていたといわれるボジョレ最古の歴史があるLACARELLEラカレルと呼ばれている区画だった。

ここは最高のミクロクリマ(微気象)を備えていた。ブルイ山の南東に位置していて北からの寒い風をブルイ山が弱めてくれる。ボジョレの中でも最も早く熟す区画の一つだった。

土壌も花崗岩を中心に花崗岩が風化した砂、そしてブルイ山から流れてきたシスト土壌も混じっている。

実に興味深いテロワールだ。

そして、2015年にもう一度、転機がやってきた。一生懸命に頑張るラファエルをみて、実家からモルゴンの畑を分けてもらえるようになった。

その機会に、正式にLEONISレオニスという名をつけて醸造元を設立した。

しかも、70歳、100歳を超える古木が植わっている特別な畑である。

初リリースから12年が過ぎた。

最初からいつもラファエルを横から支えている奥さんクリステルの存在も大きい。

丹念に世話をしてきた畑は、イキイキしている。

最近のラファエルの醸すワインの深味、繊細さは感動的な美味しさである。

特に、ラファエルの醸すCOTES DE BROUILLYブルイは、もうとんでもないレベルの美味しさだ。

標高380mの区画で育つ70歳の古木の葡萄ばかりを仕込んだワインだ。

素晴らしい濃縮感、柔らかい品のあるタンニン、標高からくる爽やかな酸、背骨を支えるミネラル感、これは凄いです。

2023年のLeonisレオニス・ヌーヴォーは如何に?

栽培、醸造に静かなPassionを振り絞って頑張ってきた技を見事に発揮したミレジムとなった。

猛暑、乾燥、そして数回にわたる雹の襲来、決して楽なミレジムではなかった。

収穫は雹と強烈な太陽光線に痛めつけられた葡萄を丹念に選別作業する必要があった。

モクモクと黙ってやるべきことをこなして出来上がった。Leonis nouveau23

自然度の高いナチュール・ヌーヴォー、ホワっとした柔らかいアタック、ジワリジワリと広がる旨味、黙ってスーっと入っていきそうなスタイル。

まさに、ラファエルっぽいヌーヴォーだ。