畑仕事が本格的に始まる前に、大きな自然派ワイン見本市がARLESアルルの街で行われた。アルルと云えば日本の皆さんは“アルルの女”でご存じかと思う。ローヌとラングドックの境界に位置している南仏の街である。
70社程の自然派蔵が全フランス、イタリア、スペインから集まってきた。しかし、自然派の活況は本当に凄い!
1月から4月まで毎週の如くにどこかで、自然派ワイン見本市が行われている。普通のフランスワイン業界では、全くこのような見本市は存在しない。自然なワイン、ビオ・ワインの境界線も薄まっていきた。ビオ栽培家も自然な醸造を始めてきた。
つまり、自生酵母でSO2の添加も少ない醸造をやり始めた。これが当たり前になってきた。
グランクリュ・クラッセの醸造元まで、宣伝文句に“自然”というイメージを使い始めている。つまり一昔前のように新樽使用率100%というような宣伝文句が通用しなくなっている。“自然”というイメージの方が宣伝効果があるのだろう。世の中も変わってきたものだ。何はともあれ、除草剤や化学物質の使用が少なくなれば、地球の汚染が減少するのは良いことだ。ワインの本来のあるべき姿に戻りつつあるのはよいことだ。 ともかくルミーズ会場の熱気は凄い!!自然派の発展は違うスタードに入ってきた。これからが面白い。

フランスで頑張る日本人シェフも集まっていた。

左はリヨンの石田さん、右端はヴァランスのカシェットのMASAさん。中央はバニュルスの人気醸造家ブルノ・ド・シェーヌ。ブルノは自分のブースがあるのにも関わらず一日中会場内を闊歩して遊んでいた。今年は船乗りの様相で参加。食の街リヨンで日本人フレンチレストランシェフとして名を轟かせている石田さんは相変わらず重要な自然派見本市には家族全員で参加。カシェットのMASAさんは、近々に全面改装をしてカシェットの横に気軽に自然派ワインを飲めるワインバーを併設する予定。

ガンちゃんこと岩田さん、フランスではKOKIと呼ばれて愛されている。BEDARIEUX試飲会からルミーズに直行しての参加。
ガンチャンは今、サン・シニアンのBIO栽培・醸造家DOMAINE DES SOULIE ドメーヌ・デ・スリエ醸造で働いている。
毎日、畑仕事と醸造の仕事で体が更にガッチリして貫禄がついてきた。石田さんとの久々の対面で大喜び。
ガンチャンの夢はいつの日か自分でワインを造ること。

フランスにて自然派ワイン初期の時代から取り組んでいる面々が勢ぞろい。

今や、変化の速い自然派ワインの世界、重要な変化を見逃さないように
世界中のバイヤーも集まっていた。
勿論、パリの老舗・自然派ワイン・ビストロ“VERRE VOLEE”のシリルもやってきた。
同じくパリの自然派ワイン屋の老舗かーヴ・デ・パピーユの面々もやって来ていた。

元TABLE DE CHANTRE時代にボジョレの自然派の元祖マルセル・ラピーエルなどと共に自然派をレストラン経営者として支えてきた重要人物、 現在はRESTAURANT ALONSOのジェラールもやってきた。まるで自然派ワインの初期から取り組んでいる面々の同窓会のようだった。

スペインのバルセロナで自然派ワインBISTO,ワイン屋L’Amima del Viをやっているフランス人のBeoitブノワとユリアもやって来た。
3年前始めた頃は自然派ワインの販売に大変に苦労していた。今やスペインも自然派ワインが浸透してきた。一カ月前にはバルセロナで自然派ワイン見本市が開かれた。ブノワのこの笑顔で景気を図れる。

つい最近まで、パリのモンマルトルの丘の上で超人気ワイン・ビストロ GRAND 8を経営していたカメルも来ていた。今はやや休養中のカメル。深夜遅くまで客を相手に連夜飲み続けた疲れが溜まっていた。ゆっくり休養してあとは、あのカメルのことだから、また素晴らしいことをやってくれるだろう。

NICOLAS CARMARANS ニコラ・カルマラン

日本からも、ビストロ、レストランで働く若手の人達が来ていた。フランス中央部の山中の寒冷な土地で、素晴らしく軽快でエモーションを感じるワインを造るNICOLAS CARMARANSのワインを飲んで感激。透明感があってスーット体に入っていくスタイル。元パリでヌーベル・メリーと云うワインビストロをやっていたニコラ。自分の地元に戻ってフィロキセラ以前に栽培されていた畑の復活に人生をかけているニコラ。ガメ品種の葡萄苗木は尊敬するマルセル・ラピエールの畑から貰ってきた。

自然派ワインの進化!! バランスのとり方が多様化してきた。

自然派ワインも明らかに進化している。
これだけ多くの醸造家が集まると、大きく動きつつある傾向が分かる。自然派ワインは“果実味系”と“薄旨系”タイプのスタイルが主流だった。
今、その主流から脱皮しつつある醸造家が増えている。。
REMISEルミーズの象徴でもある綱渡りのバランスのとる位置が多様化してきている。
造りの変化、多様化がある。今まで、ルミーズに来る醸造家の殆どは、除梗をしないグラップ・アンティエールのセミ・マセラッション・カルボ醸造が主流だった。その造りが本当に多様化してきた。その変化の理由は、まず第一に自然派ワインのファンが急増したことにある。色んなタイプを好む愛好家が増えている。
薄旨スタイルに、やや飽きている、こともある。
みんな同じ顔のワインではつまらないと思う自然派ワイン・ファンが増えつつある。第二の理由として、造っている本人達がやや飽きつつある。もう一つ違うものを追究してみたいという醸造家が増えている。この辺の事情はFACE BOOKでは書ききれないので、また別の機会か違う媒体でご説明したい。これからも自然派ワインを楽しみたい人達にとっては重要なポイントになるでしょう。

DOMAINE DE L’ESCARPOLETTE レスカーポレット

イヴォさんも元気に参加。2009年に始めて、今年で7年目になるイヴォさん。ラングドックの北、アルザック大地にある真っ白な石灰岩岩盤の土壌。7年を過ぎてテロワールを熟知してきた。イヴォさんはボルドーのCH-DU PUYシャトー・デュプイとJEAN-MARC BRIGNOTジャンマールク・ブリニョから自然なワイン造りを学んだ。イヴォさんは云う『自分はこの二人のような造りしかできない。』この二人の造りを南仏のミクロ・クリマに調和させたイヴォは凄い。イヴォのワインには、南仏とは思えない酸が常にある。
ESCAROLETTE BLANC エスカーポレット白
酸と石灰岩盤からくる潮っぽい旨味が素晴らしい。ムスカ、テレブレ、テレ、グルナッシュ・ブラン、グルナッシュ・ノワールで醸す絶品白だ。 
JEU DE MAINSジュー・ド・マンはサンソー100%で造る果実の爆発のようなワイン。
まるで葡萄ジュース。旨味ののっていてスーっと入ってしまうワイン。
LES VIELLES レ・ヴィエーユはカリニャンの古木100%のワイン。造りは最近の自然派醸造家が頻繁に取り入れているグレーン・アンティエール醸造である。
除梗はするがフラージ(破砕)は一切しない。葡萄の粒が潰れていない丸ごと粒がそのまま発酵槽に入る。つまり粒内で酵素が働きマセラッション・カルボのような現象が起こる造りである。 最近、この造りをする醸造家が増えている。

LA ROCHE BUISSIERE ロッシュ・ブッシエール

南ローヌ河の左岸山の上FAUCONフォコン村に18Hの畑。畑も標高が高く、もうアトワーヌ・ジョリーのお父さんの代から続くビオ栽培で葡萄の根っ子が石灰岩盤土壌を打ち破って地中深く伸びている。だから南ローヌ強い太陽を浴びても常に酸が残るようになった。今日、アントワーヌは畑仕事、いつも元気な奥さんのローランスが担当。皆がローランスのところに集まってくる。
PETIE JO プティ・ジョ
グルナッシュ70%、シラー30%。粘土石灰土壌、除梗して、破砕しない葡萄粒丸ごとのグレン・アンティエール醸造。もう爽やかで透明感もあってスーと入ってしまう心地よいワイン。

SYLVAIN BOCK シルヴァン・ボック

今、フランスで最も自然派醸造元同志のチームワークが良いアルデッシュ地方。マゼルで働きながら、2010年にマゼルから畑を借りて独立。ここ2,3年前よりグングン腕を上げてきた。もともと白は透明感もあって美味しかった。最近、除梗なしのセミ・マセラッション・カルボ醸造で醸す赤が大変美味しくなった。
透明感ができた。土壌に慣れてきたのだろう。酸も残ってグイグイいける心地よいワインになった。
ここ近年、アルデッシュでは最も品質が素晴らしくなった醸造家の一つ。お見逃しなく。

MYLENE BRU ミレーヌ・ブリュ

今、ミレーヌはオーストラリアに行っている。南半球は今収穫と醸造が行われている季節。ミレーヌは知り合いの蔵でワイン造りをやっている。
今日は、お母さんに代わって娘、レアちゃんが来ていた。彼女は今、ソルボンヌ大学の学生。お母さんとそっくりな風貌、まるでコピーしたようだ。
ミレーヌは子供の時からの夢であったワイン造りを、PASSIONで実現した女性だ。南フランスのラングドック地方、コルビエールの醸造家の娘だった。
醸造家になる夢を家族に反対されて、パリでワイン学校の先生をやっていたが、数年前に我慢できなくなり、自分の夢を実現する為に子供達を連れてラングドックに戻ってきた。ペゼナスとモンペリエの中間に故郷のコルビエールにそっくりの畑を見つけて、あらゆるオブジェクション壁を乗り越えて、醸造元を立ち上げたPASSIONの女性だ。

LADY CHASERA レディー・シャスラ

シャスラ品種から ミレレーヌが醸すシャスラは優しく、酸の代わりにミネラル感でバランスをとっている。白。石灰土壌のミネラル感が強く、畑の隣村のブジーグ村の牡蠣に合わせると完璧だ。