南フランスの星付きレストランのソムリエだったローラン。

スヴィニャルグ村にやって来た時、世話もされず放置されて野生化していたこの葡萄達を見て醸造家になることを決意したローラン。

100歳を超えた葡萄木達がローランに語りかけてきた。

『ローラン、何とかしてくれ!』

ラングドック地元品種で、もう絶滅しかけている品種Ouilladeウイヤードだった。

南仏のソムリエだったローランは、この地元品種の希少価値を十分に理解していた。

ソムリエの仕事をしていたローランは、当時自分のやっていることに疑問を感じていた。

このままソムリエの仕事をしていくことに、“これでいいのか?”

ローランのお父さんは農業者だった。お父さんの背中を見ながら育ったローランは自分の原点に戻りたかった。

自分も土と触りながら自然の中で働く仕事をしたくなっていた。

そんな精神状態の時にこのスヴィニャルグ村にやって来たローランだった。こんな希少な葡萄品種、しかも100歳を超えている世界遺産級の葡萄だった。このまま放置して絶滅させていい訳ない。

ローランは決意した。

スヴィニャルグ騎士3人衆 モン・ド・マリの Thierry ,マスローのLaurentローラン、フォン・ロンドのヴァンサン

ローランがこの村にたどり着いた頃の若き3人の写真を添付。

当時、この村にやってきて、新規の醸造家として孤軍奮闘努力していたMont de Marieモンド・マリー醸造のティエリー と巡り合い、自分のワイン造りへの夢を相談した。

ティエリーは大賛成だった。ローランがすぐ始められるように、自分の醸造所の一部を使うことを提案した。

そして、地元農家のFont de rondeフォン・ド・ロンドのVincentヴァンサンを紹介して、他にも売りに出ている畑を紹介してもらった。

ローランは、焦らずじっくりじっくりコツコツやるタイプの人間性を備えている。

何年も放置されていた野生化した葡萄畑を、ビオ栽培で再生させるのに、体力の限りを尽くして農作業に集中した。

完璧に再生するには時間がかかった。

10年以上の歳月が流れて、畑に色んな種類の雑草が生えて、地中にもミミズ、微生物も勿論、自生酵母をイキイキしているのが分るようになってきた。

3年程前に、Ouilladeウイヤードの畑の近所に醸造所を建てて引っ越してきた。

今は、自前の醸造所で、自生酵母だけで、発酵槽に入れるのは葡萄だけで完璧な自然醸造で造っている。

最近のローランが造るワインの品質が一段と上がっている。狙っていた通り、素晴らしいワイン質を備えたワインが完成している。

特に100歳を超えたOuilladeウイヤードの畑のワイン、Clin d’Ouilleクラン・ドイユはもう素晴らしいワインとなっている。クラン・ドイユとは“ウィンク”の意。奥さんがラベルのウィンクの絵を書いてくれた。

100年の歳月をかけて生存し続けてきたOuilladeウイヤード品種、深く地中に入りこんだ根っ子が吸い上げたミネラリがたっぷりで、この土壌で育った自生酵母だけで醸したワイン、もう絶品である。

いいワインには、果実味とミネラル感そして深味がある。SO2は基本的に混入しないゼロ、年によって必要な場合は極小だけ使用する。

透明感があって、スーと体に入っていく。

これだけ、手間暇かけて自然に造っていても、嬉しいことに価格はホントにリーズナブルである。

ローランのお父さんは農業者であり、お金持ちでもなく、貧乏人でもない普通のフランス人。

普通のフランス人が、『今日はチョットワインでも飲みたいな。』って思った時、誰でもが買える価格帯であることが大切だとローランは考えている。 だからどんなに手間暇かけてもリーズナブルな価格いることは大切なことなのである。

さて、ローランはQuiies de Joie試飲会に、ブースを若い人達に譲る、と云って参加していなかった。

ローランに逢うためと23年ミレジムをテースティングする為に醸造所に寄った。

いつも元気印のローランが、どことなく元気がなかったのでチョット心配になった。

今年は、ちょうどローランの畑の区画に何と3回も雹が襲ってきて、収穫量は普通の年の30%以下となってしまった。

いつもポジティフなエネルギーとスカッとしたローランなのに、今日はホントにチョット寂しそうだった。

そんな中でも、2023年ミレジムを熟成中のタンクからテースティングをさせてくれた。

量は、極端に少ないけど、品質はホントに素晴らしかった。

23年は量が少ないので、通常のワインを出荷することはできないので、全部を程よくブレンドして数種類だけのリストになるだろう。

★チョット元気がないローラン

いつ来ても元気印の象徴のようなローランでも、こんな状態の時があるんだなと、思った。

収穫量が極端に少ないのも原因だろうが、そればかりではなさそう。

口に出す言葉が、否定的なところが多かったので驚いた次第。

生身の人間、人生いろいろあるよね。

何とか、いつものローランのように元気印に戻れるように、応援したい!!

チョット安心したのは、娘のMerinaメリナちゃんの話になると、大きな目に元気が戻っていた。

皆さん、ローランのMAS LAU マス・ロー醸造のワインを見たら、飲んでみてください!

きっと、その美味しさとリーズナブルさに驚くと思います。ローランに元気をとりもどしたい!