2012年厳しい社会情勢の中、自然派ワインはどうなる?


予想される激動の2012年が始まった朝、地中海に浮かぶ初日の出(撮影:伊藤)

自然派ワインを愛する皆さん、新年明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

私は毎年、この初日の出を拝むために年末年始は地中海の街ラ・グランドモットに滞在する。2012年1月1日、ここ地中海は快晴に近い晴天だった。
気温は何と百数年ぶりの暖かい小春日和だった。テレビでは19度と公表、でも街のレストランのテラスでは25度にもなっていた。本当に気持ちの良い日だった。でも、地球は大丈夫かな?とやや心配になってしまう。

あらゆる分野で世界の激動が予想される2012年の門出には穏やかすぎる小春日和の元日だった。
しかし、ここヨーロッパは正月そうそうまさに激動の金融危機が動きだしている。この12年に入って1ヨーロが100円を切る安値を記録して、その後も更新が続いている。
ギリシャを筆頭にイタリアでも崩壊的な厳しい経済状況下にある。それを救おうとしているフランス、ドイツ大国も決して楽な状況ではない。金融市場のみならず資本主義社会システム自体が行き詰ってきているのを多くの人が感じている。
もう一つ、自分だけ、自社だけ、自国だけの儲けを第一に追及した人間社会の超エゴが造りだした地球環境の悪化。
2012年の元日に象徴されるような温暖化など地球環境の悪化による人間も含む生態系存続の危機を多くの人達が認識するようになった。
厳しい社会情勢の中、なぜか爆発的に人気が伸びている自然派ワイン そんな厳しい社会情勢の中、ヨーロッパにおける自然派ワイン市場をみるに、販売、伝搬が急激に伸びている現実がある。
まるで、この厳しい社会情勢が追い風になっているのではと思わざるをえない状況がある。フランスのワイン屋での自然派ワインの売上が急激に伸びている。
自然派ワイン専門ビストロは連日超満員の活況。自然派ワインは決して安くはない。グランクリュと比べれば安いけど、一般的には知名度の割には高い方である。
だから、安いから売れているのではなく、消費者が明らかに意志を持って選んでいるのである。昔あったスタイルのボルドーワインを中心にしたワインバー、ワインビストロは跡形もない。ミッシェランの三星レストランも自然派ワインを普通のワインの如くリストアップしているところが多くなった。2010年、2011年と二年連続レストラン世界1位に選ばれたNOMAのワインリストの中心は自然派ワインである。
だから、もう自然派ワインは品質的にも味覚上から見ても立派にワイン業界の中心に成りつつあるように思う。これは偶然ではない。
明らかに社会情勢や地球環境の変化が、人々の社会生活の価値観を変えているのに違いない。貧困層が増えている反面、ワインを飲める層の人達のライフスタイルが激変してるのを感じる。
カルチャー・クリエーティヴ層の人達(文化的創造性を持つ人々)が急増中。 社会的権威への不信感、危機感が人々の価値観、ライフスタイルを変えている 今までの社会的権威への不信感、そこから発生してくる危機感が人々のライフスタイルを明らかに変えている。今までの社会システムの最もお堅いはずだった銀行が、不健全な世界金融システムの中の泥沼に入りこんでいる。世界中の真面目に仕事をしている人々の生活をひっくり返してしまうような状況を造り上げてしまった。極度のエゴの塊のような人間達(今の自分だけ、今の自分の会社だけ、今の自分の国だけ儲かればいい)の組織が造り上げてしまった地球環境の悪化。世界的科学者、国も勧めていた原発も不安定きわまりない存在であった事実。
この不幸な事実が世界の人達に与えた影響は計り知れなく大きいことなのである。
ドイツでは原発全面廃止を決定した。あらゆる分野で普通の人が普通に生活することを不可能にしてしまう程の現実を見せつけられてしまった。
カルチャー・クリエーティヴと云われる層が急増中 今までの権威であった人達、国、社会システム、経済システムへの信用性の失墜、不信感がライフスタイルの変化を余儀なくした、と云った方が妥当かもしれない。
今までは革新的な人達が警告を発していたが、今度は普通の人達が実際に自分の生活スタイルの中に健全なものを取り入れて生活を開始したということだと思う。
この層の人達が今、急増してる。世界の有識者の組織、世界賢人クラブではこの層をカルチャー・クリエーティヴと呼んでいる。どんな人達かというと、今までの権威が発表したこと、認めたことを盲信しない人達。
自分で調べて納得いくまで本当のところを追及する。そして、極力、それが自分の為、他の人のため、国の為、世界の為、地球の為に良いかの判断基準を持っている良識人の層だとのことである。
彼らの特徴は、今までのような革新的な人達と違って、他人を自分と同じ考え方に転向させようとするようなことはめったにしない。
むしろ自分自身の個人的成長を心がけることを好む、と云うようなライフスタイルの人達のようです。だから目立たない存在ではあるが、ものごとの本質を見たり、洞察する人達が確実に増えているようです。
世界賢人クラブの調査では先進国では28%ほど割合に達するようです。私はもの凄い多い数値だと思う。
例えば消費に関しても、今までのように、外的な権威が認めていたものを盲信することなく、自分達の尺度がありものの本物度とか、消費する際の、自分や他の人や、他の生態や地球などへの影響なども考慮しながら生活するライフスタイルを自己実現的に実践している人達のようです。 ワインを消費できる層であるカルチャー・クリエーティヴの人達がワイン消費時の基準が変化しつつある。
このカルチャー・クリエーティヴの層がワインを買う時の事を想像してみよう。彼らは、単なる業界権威の決めた事など盲信するはずもない。
金メダル、グランクリュ格付け、業界雑誌すらも盲信することはないだろう。何故なら、今までの最高権威の人達の一部が現在の厳しい社会・地球環境を創りあげてしまったのだから。
今までのやり方を続ければ自分も含めて世界、地球をも継続できないことを彼らは感じているからだ。例えワインを買う際でも、自分自身の自己実現ライフスタイルとして、自分だけのメリットでなく、他への影響、地球や生態系の継続に繋がるもの求めていくだろう。ワインの本質を見ようとする人達が増えていくのは素晴らしいことだ、と思う。ヨーロッパにおける自然派ワインの急人気は当然に成るべくして成ったなと思う。この流れは止められないし、自然派ワインがワインの世界の中心になっていく区切りがこの2012年かなと位置づけられると思う。

自然派ワイン人気の急上昇の流れは、日本でも既に始まっている。 当然、日本でもこの流れは既に始まっている。昨年11月に東京のワインビストロ祥瑞経営者の勝山晋介さんが主宰した自然派ワインイベント“FESTIVIN”に何と1500人程の多く自然派ファンが集まった。今、ワインイベントでこんなに人を集められるのは自然派ワイン以外にないでしょう。私は素晴らしいことだと思う。世も捨てたものでもないな、と心から思う。
自然派ワインは人に天と地のエネルギーとゆとりをもたらし、地球にも優しく微生物にもやさしい本物だ 自然ワインの多くは本物だ。
人、地球の土壌、宇宙からの光、葡萄木などが一致協力して一本のワインが出来上がる。金儲けだけを考えてしまうと農作業経費を減らす為、除草剤や殺虫剤を撒いてしまう。地球が汚れて微生物も死んでしまう。
勿論、自然派は撒かない。化学肥料も撒かない。だから葡萄の数が少ないだけに旨味の濃縮した葡萄が収穫できる。根っ子は養分を求めて地中深く伸びてミネラル分を運んでくれる。
だから潮っぽい旨味やワインの背骨となるミネラル感をワインに与えてくれる。根っ子が地中深く入り込んでいくと葡萄木が健康でパワフルになって葉っぱに活力があり、宇宙の光(主に太陽)をしっかり受けてとめて光合成をやりながらプロテイン、宇宙のメッセージやエネルギーが一杯詰まった果肉や果皮を創ってくれる。美味しい果実味やタンニンをワインの中で表現してくれる。
自然派を造る人は、やはり農業だから素朴な人、質素な人、誠実な人、元気な人、繊細な人、明るい人、健全な人が多い。
今の自分だけの利益のみを追求する人は殆どいない。2012年は自然派ワインが自然な流れで、世界の多くの人達に幸をもたらす大飛躍の節目年となるだろう。

伊藤與志男 CLUB PASSION DU VIN PARIS PARISにて