小松屋と言えば大阪で自然派ワインに特化している業務用酒販。藤田社長のその熱心さには驚くばかりだ。スタッフを惜しみなくフランスまで研修の旅に送りだす。今回はパッション・エ・ナチュール店長の富岡さん、浜里さんなど3人がやって来た。そして、岩チャンが引率。 やはり現場を知っている人は強い。実際に店で販売しているワインの畑を自分の足で歩いて土壌に触れて、造っている人の顔、声、人柄に触れてその場でワインを試飲して初めて解ることが多い。理屈を超えたこの感覚的理解が最高の宝となる。五感を通じて自然派を掴む。皆、スリエのオーナーのレミーさんの話に耳を傾ける。熱心にメモをとる。

サンソーの畑に近づくと香草の香りが一面に広がっている。 地元ではガリグと呼んでいる香草が密集している野生低木草畑である。この香り成分が葡萄の皮に付着してワインの中に入っていく。地元のソムリエはその香りもガリグと呼ぶ。
今日は大阪小松屋と東京オザミワールド社の共同オリジナルワイン“Cuvee Bou キュヴェ・ブー”を造るスリエ醸造所を訪問。キュヴェ・ブーは30歳のサンソーで醸す。そのサンソー畑を五感で触れた。畑の廻りには野生タイム・野生ローズマリなど香草がいっぱい生息している。

    
小松屋スタッフの皆さんも実際に野生香草を採って触って、嗅いでみる。あの“キュヴェ・ブー”のワインの中にある香りと同じである事を確認。貴重な体験だ。土壌とはこれら畑の環境にある草花や生き物も含まれている。そんな事を五感を通して理解できる。 やや暖かくなる五月頃になると、野生ローズマリやタイムなどの香りが畑一面に漂っている。実に爽やかな香りだ。何時間でも畑に滞在したくなってしまうほど心地よい。こんな感覚も実際に来てみないと解らない。これもまさしくテロワールの一部。

    
やっぱりワイン造りに最も重要なのは“人”である。ドメーヌ・スリエのレミーさんは南仏らしく実に明るくて、心地よい人柄だ。いつも笑顔を絶やさない地中海人、ラテン系の人柄。そんな人柄がそのままワインの中に表現されている。明るくてダイレクトなワインだ。 明るいだけでは美味しいワインはできない。実に実直な面を備えている。畑仕事を着々とこなしていく。28ヘクタールをビオで栽培することは並大抵なことではできない。

  南仏と言えば葡萄畑とオリーブ畑の風景が典型的だ。最近、このオリーヴ畑が減っている。スペインから安いオリーブオイルが入ってくるので太刀打ちできない。レミーは先祖代々のこの景色を変えまいとオリーブ畑も一生懸命栽培している。品質高いオリーブオイルだ
   このオリーブ畑はサンソー品種の畑の横にある。ここサンシニアンは夏になると南仏の太陽でかなり暑い。畑仕事の合間の一休みはこのオリーブ畑にやってくる。オリーブの葉で日陰となっている草の上に寝転んでの昼寝は最高だ。風通しが良くこぼれ日も入って気持よい。 このスリエ家は1610年よりここサンシニアンの地で葡萄を栽培している。1960年代より多くの栽培家が除草剤や殺虫剤、化学肥料を使いだした。お父さんはそんなものに一切目をくれず自然な栽培を続けてきた。400年に渡って一度も化学物質が畑に入ったことはない。 陽気なお父さん。自然が大好きで、ビオ協会が存在する前からずっとビオを実践している本物。ビオの原点の人達だ。彼らのような農家がフランスには多く存在する。フランスの奥深い農業文化を感じる。

ワイン造りの為に完璧な条件を備えた醸造所・熟成庫

スリエの醸造スペースは実に清潔で整備されている。一部のキューヴェを除いて、アルコール発酵はステンレスタンク内で行われる。この巨大な醸造所はお父さんとレミーで何と10年の歳月をかけて自分達のみで造り上げた建物だ。 設計も自分でやり、葡萄の搬入も重力で発酵槽の中に落とし込むように設計されている。 樽熟成庫もアルコール発酵スペースと同階でありながら地下になっている設計。温度も湿気も理想的になっている。ワインを移動する時も簡単にできてワインにストレスがかからないように設計されている。南仏でこのような地下ワイン熟成庫を持っているところは数少ない。几帳面なスリエ親子が時間をかけながらコツコツと造りあげてきた醸造所だ。ストック場もたっぷりあり近所の醸造元仲間のワインもストックさせている人の良いレミーだ。

家族のみで10年かけて建設した醸造所・熟成庫

400年前よりずっとビオのスリエを利く

15品種を栽培するスリエ家では当然キューヴェの種類が多。その中の一部を紹介しよう。

1-MARSANNE 08 白 マルサンヌ品種

標高が高いので酸がキリっと光っている。黄金色の色合い、 野生香草のガリグな香り、蜂蜜のような良く熟した果実味。 石灰岩盤の旨味も爽やかで心地よい。

2-CUVEE MATHILDE 12キューヴェ・マチルド ST-CHINIAN BLANC

数少ないサンシニアンの白、グルナッシュ・グリ80% マルサンヌ20%の構成。 12年は収穫前の雨が功を奏して、実に爽やかに出来上がっ  た。ヴィーフの表現されるほどキリッとした酸が素晴らしい。 とても南仏の白とな思えないフレッシュな白ワイン。

    

3-ST CHINIAN ROSE 12サンシニアン・ロゼ

スリエの12年のロゼは特別に爽やかで、透明感のあるクリアな果実味が心地よい。 シラー、グルナッシュ、ムールヴェードルの3品種はセニエ方式、 サンソーは直プレス方式でジュースを絞って発酵させたもの。

   

4-GRENACHE 12 グルナッシュ

グルナッシュ100%、40歳のグルナッシュ。 12年はグルナッシュを完熟させるのに難しかった。 果実味に爽やかさを含んでいる。ミネラルの旨味も心地よい。

5-MERLOT 12 メルロー

樹齢20歳のメルローは良く熟した。色合いも濃縮している。 早熟のメルローはほぼ完璧に熟した。チョコレートっぽさ を感じる。でも、メルロ特有の爽やかさが残っている。

    

6-PINOT NOIR 12 ピノ・ノワール

樹齢20歳のピノ・ノワール。レミー曰く『過去20年でやっと思うようなピノ・ノワールがで  きた。』とレミー自身が云うだけあって、なかなかのバランスを備えたピノだ。 標高が高く北向きの畑にピノが植わっている。それでも太陽が強く乾燥した南仏ではピノは どうしてもアルコールが高くなってしまう。20年のビオ栽培の効果、根っ子が石灰岩盤に深く   入り込んだミネラル感がよい。ここでちょっといたずらをしてみた。サンソー品種をちょっとブ  レンドしたら全体的に薄まってまるでブルゴーニュのピノ風味になった。

CUVE BOU キューヴェ・ブー12年があまりにも美味しくて一本持参

笑顔が必要な方!スリエのワインをどうぞ!

CUVE BOU キューヴェ・ブー12年

過去最高の出来に仕上がった。やはり日本に一本持って帰りたい。ということになって、タンクの中で寝ているワインをその場で一本詰めてもらった。 大阪のパッシオン・エ・ナチュール、ビストロ・ブーのファンの皆さん、東京オザミのファンの皆さん! これからの12年、キューヴェ・ブーは飛びっきり美味しいですよ! 御期待ください!これから瓶詰して近日中には出荷いたします。

   

10年前にオリジナルワインの誕生

約10年前、小松屋社長の藤田氏とオザミ・デ・ヴァンの丸山氏がスリエを訪問。それ以来深い関係が続いている。その時以来両社向けにオリジナルワインを造っている。ほぼ毎年、両社の社員がやって来て試飲をしている。造り手と売り手が手を結んだ素晴らしいコラボだ。 東京のオザミグループと大阪のパッション・エ・ナチュールグループ のみでしか飲めないワインだ。

   

ASSINIANアシニアン村に辿り着くにはサンシニアンの街より山を登ってまるで温泉場でも行くような景色を登りきったところに小高い丘陸地帯の中に村がある。そこに人口280人の小さな村がある。 標高250から350mと高い。この標高がワインに爽やかな酸をもたらしている。 この標高が高い丘陸地帯に何と15種類の葡萄品種を栽培している。この高い標高がワインに多くのものをもたらしてくれる。太陽が強くても常に涼しさをワインに感じる。風通しが良く乾燥して病原菌が少なく 自然な栽培がやり易い。

12年のテースティングで驚きの発見

オリジナルワインCUVE BOUキューヴェ・ブー。 樹齢40歳のサンソー品種で造っている。ここのサンソーは時としてピノってする。12年産が正にピノッてしている。軽快な12度でピノ・ノワールを思わせる果実味で、ミネラルからくる旨味と標高の高さからくる酸がフレッシュで心地よい。過去最高の出来となった。小松屋スタッフも驚きの高品質に大満足。

レミーは日本での経験を生かしてワインを改良!

レミーの笑顔には偉大なハッピーをもたらすエネルギーがある!

笑顔が絶えないレミーは日本でも大人気だった。笑顔は偉大なる力がある。レミーと会うと皆が笑顔になる。色々本音で語ってくれる。レミーは多くの愛好家と話ができた。フランスに帰国して栽培の段階から軽快で果実味豊かなワインを目指した。レミーにとって日本出張は貴重な発見となった。そして、農作業、醸造の工夫に取り組んだ。

  

レミーにとってはこの大阪での愛好家の人達と話せたこと、小松屋のスタッフの意見も聞けたことが転機となった。また彼らが今日本で話題のワインを飲ませてくれたこと、そんな経験を生かしてレミーはこの12年のキューヴェ・ブーを醸した。 標高300mのサンソーの畑区画はペピュール・ルグランと呼ばれている。粘土石灰質土壌、30cm地下は太古の昔に元海底だった石灰岩盤。400年前よりビオの土壌はエネルギーに溢れている。葡萄木の根っ子は岩盤を打ち砕いて地中深く伸びている。地中深い処には水分がある。この南仏の乾燥した気候でも必要な水分を確保できる。だからどんなに乾燥していてもフレッシュな酸をワインに残すことができる。

昨年、レミーは日本に行った。大阪のブラッスリー・ブーでスリエフェアーを開催して一般愛好家と触れあったレミーは、このキューヴェに日本の皆さんが求めている好みを理解した。それは果実味豊かで、濃縮し過ぎることなくグイグイ飲めるタイプだった。フランスに帰国後、レミーの挑戦が始まった。

 

 

低アルコール度数の為には早めに収穫することを考えて早めに剪定の段階から対処した。すべてが理想的にいった。収穫前の雨がさらに幸いしてさらに軽快になりグイグイ・タイプで抜群に心地よく美味しいワインが仕上がった。 このワインを飲めば思わずレミーのような笑顔が出ること間違いなし!