自然派の激旨安ワインを量産するESTEZARGUEエステザルグ農協の原点は?

小松屋メンバーエステザルグ農協訪問



激旨安ワインの原点を知りたくて!

エステザルグ農協はTAVEL地区とCH-NEUF DU PAPEに近い南ローヌに位置する。今、この南ローヌの農協は相次ぐ倒産で激変している地方だ。そんな世間の状況と逆行して優良経営を続けている数少ない農協だ。しかも自然な造りの量産に成功した優秀な技術力が持っている。

旨い!安い!自然!三拍子が揃っている

小松屋でもこのエステザルグ農協のワインは大切なヒット商品だ。比較的割高なワインが多い自然派ワインの中で安くて、美味くて、自然という3拍子揃ったワインを造る原点を見にやって来た。 雨あがり晴天に恵まれて気持ち良い朝の訪問だ。 空気も澄んでいる。

土壌・ミクロ・クリマはパップ級

CH-NEUF DU PAPEシャトー・ヌフ・ド・パップに近いエステザルグ村の土壌はガーレ・ルーレと呼ばれる 大きな丸石がごろごろ転がっている。正にパップと同じだ。名門パップ並みの素晴らしい土壌が備わっている。

葡萄木の樹齢も古く、根も深い!

特にグルナッシュ品種は樹齢も古いものが多く。 自然な栽培を昔から続けており根っ子が地中深く入り込んでいる。土壌も微生物などがイキイキしているのを感じる。元気な自生酵母が育っていることだろう。 こんな古木の葡萄木から搾った果汁は、力強く、果実味とミネラルを豊富に備えていることを予想できる。 名門のパップやタヴェルと比較しても決して劣ることはないミクロ・クリマを備えている。

今あるESTEZARGUEエステザルグ・ワインを造り上げた3人の男達

1-炎の探求心・ジャン・フランソワ・ニック


エステザルグを現在ある自然派へ方向づけたのは、あのルシオン地方の自然派伝道師ジャン・フランソワ・ニック氏。 この写真は筆者が2001年に撮影したニック氏。エステザルグ農協で働いていた当時の貴重な写真だ。1989年にワイン学校を終えて当農協に就職。ここに来る前はマルセル・ラピエールがいた自然派の本拠地モルゴンにて醸造研修した。 マルセル達の自然派の造りに感動したジャン・フランソワ。 当然、研修した自然派の造りをエステザルグ醸造に取り入れた。

農協の醸造長といえども、雇われの身、栽培にも関わってくる自然醸造を実行するには組合員の同意が必要だった。組合員の農家達も最初は半信半疑だったけどジャン・フランソワの情熱に押し切られ少しずつ始まった。主要農家は10名という少数さが幸いした。普通この段階で農家の反対に合っていたら今のエステザルグは存在しなかった。ここからジャンフランソワの壮絶な試行錯誤が始まった。大量ワインの自然な造りは、まだ誰一人として挑戦してないからだ。研究・工夫・試作と安定するまで10年の歳月がかかった。

その後、ジャン・フランソワ・ニック氏は2002年よりスペイン国境ぞいのルシオン地方に畑を買い独立、今では南仏NO1の自然派と誰もが認めるFOULARDS ROUGEフラール・ルージュを立ち上げた。南仏自然派の発展に無くてはならない尊敬に価する人物だ。

途轍もなく美味しいワインを造れる人は、世の中にそう沢山いない。ジャン・フランソワのワインは繊細で細かくて上品なワインだ。そんなジャンフランソワを育てたのは間違いなくエステザルグの経験だろう。大量ワインを自然に造る至難な業を完成させる中で、多くの事を学んだ。

2-エドワード・ラフィット 現LE BOUT DE MONDEル・ブー・ド・モンド醸造の当主

エドワードはジャンフランソワと共にこのエステザルグ農協で自然な造りを実践してきた人物。ジャンフランソワ独立後は、このエドワードがこのエステザルグ農協の醸造長として4年間を務めた。   SO2の添加量もさらに減らし、栽培も農家と共になって自然栽培を増やし諸々の改良を続け、畑ごとの多くの新キューヴェを造りだした。2005年ジャンフランソワの後を追ってルシオン地方に畑を買ってLE BOUT DE MONDEル・ブー・ド・モンド醸造を 立ち上げた。素晴らしいワインをリリースしている。

3-ドニ・デシャン

そして、今はドニ・デシャンがいる。やはり美味しいワインの裏には人物を通した物語が存在する。ドニもジャン・フランソワ・ニックとエドワードと共に長年一緒に探求してきた人物だ。優しい性格は栽培家からも絶対の信頼を勝ち得ている。業も一流だ。

エステザルグの主要な葡萄栽培農家達とさらに密なる関係を築いているドニ・デシャンDENIS DESCHAMPS。 自生酵母で発酵させる自然な造りには、健全な畑仕事が不可欠だ。ドニ・デシャンは二人の先輩のやって来た事をさらに深く栽培方面からも一層の完成度をあげて、激旨安ワインに磨きかけている。ドニの探求心と知識は一流だ。自然度をあげて揺るぎない自然派ワインを完成。

小松屋一行ESTEZARGUEエステザルグ醸造所内見学

 

小松屋の販売する自然派ワインの中でも 日常的に飲めるワインとして販売量も多く無くてはならない重要なアイテムがこのエステザルグには多い。 畑を見て歩き、エステザルグの歴史を聞き、醸造所をみてエステザルグの偉大さをさらに深く感じた。 価格が高くて美味しい自然派を造るより 価格が安く美味しい自然派を造る方がもっと難しい。 この巨大タンクのワイン醸造をSO2の添加なしで自生酵母で発酵させる“業”を持っているのは世界中でここエステザルグだけだ。 自然!旨い!安い!3拍子揃った貴重な ワインはここで醸造される。 この巨大タンクにバクテリアが発生したら。タンクごと捨てなければならない。 現在のように安定するまで、どれだけの犠牲があったのか? 想像を絶する犠牲と試行錯誤を重ねて、今の安定した世界唯一の業を造りあげたのだろう。 3人の男、そして10人の栽培家の勇気と決断、決して弛まない試行錯誤に拍手と感謝の念を送りたい。

   

今日は醸造長のドニ・デシャンに代わってオードさんが案内してくれた。 今週はフランス中の小学校が春バカンス、2人の子供を持つドニは子供たちとスキーに行っている。 いつも忙しい醸造長のドニは、この寒い時期しか家族サービスができない。 オードさんより 少数精鋭のエステザルグはこれだけの規模を醸造関連で4名、事務系2名、出荷1名、たった7人でこなしている。勿論、繁盛期は外部からの応援もあり、また 事務系人員も醸造を応援したり、その逆もありお互いが必要に応じて何でも仕事をこなすシステムになっている。これは経費削減となっているのだろう。

色々試飲した一部を紹介しよう

DOMAINE DES BACCHANTES 10 ドメーヌ・ド・バカント

シラー70%、グルナッシュ・ノワール20%、ムールヴェードル10% シラーの濃縮感ある濃厚な色合い、グルナッシュの豊かな果実味、ムールヴェードルが骨格を造っている。ミネラルからくる潮っぽい旨味、爽やかな酸もあり心地よいバランスととれたローヌらしい赤ワイン。

DOMAINE DE PERILLIERE 11ドメーヌ・デ・ペリエール

古木のシラー75%、古木のグルナッシュ・ノワール25% シラー75%のわりにローヴが中庸の濃度、ややスパイシーな果実味がシラーらしい。 古木からとれた葡萄を仕込んだ特徴である柔らかさや深みを感じさせてくれる自然な風味の赤ワイン。 自然派ワインファンのみならず確りした南仏ワイン好みの方にも愛されているワイン。

PERILLIERE COSTIERES DE NIME 11 ペリエール・コスティエール・ド・ニーム

シラー65%、グルナッシュ・ノワール35% ラベルの漫画チックのように比較的軽やかなタッチの心地よい赤ワイン。気軽に飲んでほしい。 グルナディーン果実のようなフルーティーさがより自然派っぽい。グイグイ飲めるヤツだ!

    

GRANDES VIGNE BLANC 11グラン・ヴィーニュ 白

クラレット・ブラン80%、ブーブランク20% 数少ないエステザルグの貴重な白ワインだ。南ローヌの白ワイン独特の酸が穏やかなスタイル。日本酒のタッチに似ている。酸の代わりに石灰岩盤からくる潮っぽいミネラル感でしめている。サラット切れがよい。