今回の旅の締めくくりは、ルーションの名門「レクトリー」だ。
このドメーヌは以前訪問したことがあるが、何としても晴らしたい疑問があった。酸化熟成型ワインの代表であるバニュルスで、どうしてこんな生き生きとした果実味に富んだ現代的なバニュルスを生み出すようになったかだ。ご存知の通りバニュルスは過熟させたブドウを発酵させ、発酵がある程度進んだ段階でアルコールを添加し残糖を残し、更に樽で長期間熟成させることにより、ランシオ香つまり熟成香を生じさせた手間と時間の掛かる贅沢な甘口ワインだ。フルコースの最後のデザートで、チョコレートを使ったデザートと一緒に年代物のバニュルスを頂くのはこの上もない贅沢であり、また伝統的フランス料理の締めくくりとしてふさわしいものでもあった。しかし、時が流れ、フランス料理も軽やかに洗練され、甘くどっしりしたデザートも好まれなくなった今、以前は好んで飲まれていた、とても甘く、アルコールも強く、なおかつ酸化香の強い伝統的バニュルスは誰にも飲まれなくなってしまった。
年代物の高級バニュルスも、売れなくなってしまったのだ。
そのような状況のなかで彗星のように現れたのが、この「レクトリー」なのだ!