毎年、春に行われるボージョロワーズ自然派試飲会は今年で3回目だ。毎年規模が大きくなっていく。 フランス醸造業界も曲がり角に来ている。 今、仏国醸造界では経済的に最も苦しい地域の一つに挙げられるのがここボージョレ地区だ。一時は飛ぶ鳥を落とすほどの勢いがあったボジョレ・ヌーヴォーが、皮肉にもボジョレ・ワイン全体の失墜の原因になっている。あまりにも酷く不味いヌーヴォーが世界に流れ過ぎた。ヌーヴォーは一時世界中のお祭り騒ぎにまでなった。ブームになれば商魂たくましいビジネスマンは出来るだけ安いヌーヴォーを仕入れようとワイン商を叩く。叩かれたワイン商は栽培・醸造家の利益を削る。栽培・醸造家は質より量の栽培・醸造に走る。極悪品質のヌーヴォーが近年の10年間は世界に氾濫した。 お祭りといえば、普段ワインを飲まない人達までも、かなりの量のワインを飲む。品質の悪いしかも酸化防止剤がたっぷり入ったワインを大量に飲めば、翌朝の二日酔いは悲劇だ。頭がガンガン、安いガメイ品種ワインの嫌な香りが体中に染み込んでいる。三日酔いと云った方がいい。世界中の人がこんな経験をほぼ10年間は続けた。今、ボジョレと聞いただけで逃げ出す人達がいるのも無理がない。この現象は何もボジョレに限った事ではない。価格を叩かれる安い地方の産地は同じような状況にある。例えば、南ローヌ地方、ラングドック・ルーシオン地方がそうだ。これらの農協がバタバタと潰れている。 自然派ワインの新規若手醸造家 そんな状況の中でも、確実なファンをコツコツ増やしてきたのが、自然派ワインを造る醸造家達だ。まず、栽培方法は除草剤や殺虫剤の使用をやめて土壌を活性化させた。これだけでも、普通の栽培家の3倍の畑仕事が必要だ。だから価格を叩かれた一般の栽培家には転換したくても不可能なやり方だった。だからその当時は、甘んじて不味くても安いワインを造り続けなければならなかった。失墜の姿はもう分かっていたのである。でも、ここまでひどくなるとは誰も思わなかったに違いない。しかし彼らの一部の人達は失墜の原因を自然派ワインの醸造家に押し付けたのである。ボジョレワイン委委員会の役員(大手ワイン商)のメンバーが日本に行き、自然派ワインはSO2(酸化防止剤)を使用しない為、ワインの状態が酷く、そんな自然派ワインがボジョレワインのイメージを大きく落としていると発表した。そして、彼らは自然派ワインへの出来うる限りの嫌がらせを実行した。最もひどいのは、ボジョレ・ヌーヴォーの出荷日に、お前のヌーヴォーはAC BEAUJOLAIS NOUVEAU のアペラッションを認めない、と通達する。飛行機もすべてキャンセルせざるをえないような酷いことをやっていたのである。ヤクザの如く。これはつい2、3年程前まで続いていたことなのである。今だにまだその傾向は若干残っている。しかし、彼らを支えていた栽培家がもう耐えられなくなって、ドンドン廃業したり葡萄木を抜いてEUより助成金をもらって職業を変えてしまっているのが現在の状況だ。若手醸造家や、心ある醸造家、後継者などは例え仕事が増えても、リスクが多くなっても本物の自然派のワインを造ろうと決意する人達が増えている。3年目のこの試飲会に今まで見たこともない若手醸造家が多く参加していた。喜ばしいことだ。そんな彼らに手をさしのばし、惜しみなくノウハウを提供するマルセル・ラピールなどベテラン自然派の醸造家達の人間的素晴らしさに、感動すら覚える。我々、買う立場の人間がモットモット彼らのワインの販売発展に力を入れなければならないと心に誓うこの頃である。この傾向はフランス全土に広がっている傾向である。 会場内でワイン以外の色んな作品の紹介 毎年、芸術家の作品の展示も行っている。 また、オランダ人のレーモン・ルコック氏も毎年の参加だ。ビオの本物チーズやイベリコの生ハムなどすべて、現場まで足を運んで、それぞれの造り手と特別契約をしている。彼の生ハムは、もうドンでもなく美味しい。 ★OSTERTAG オステルタッグ このボジョロワーズの試飲会は基本的にボジョレ・マコン地区の醸造家が主体となっている。毎年、他の一つの産地の自然派を招待している。今年はアルザスの自然派が招待された。 アルザスのオステルタッグが来ていた。 ブースは大人気でなかなか近付けない。しばらく待機していて隙をみてすかさずに入り込んだ。 アンドレとは久しぶりに会う。すごく繊細な精神と思考する、そして断固実行するタイプだ。 今日はすべてリースリングだ。 会VIGNOBLE D’E ヴィニョブルE 08 日本の墨絵的な絵のラベルだ。奥さんが芸術家だ。彼のラベルは殆ど奥さんの作品がデザインされている。スパイシーな香りと味わいだ。スカットとしたミネラル感がある。最後にミネラルの旨味が爽やかに広がる。ワインが主張しない。鮨に合わせたい。 会RIESLING CLOS MATHIS 07 リースリング・クロ・マチス 緑がかった黄色、まさにバラの花ビラの香りだ。胡椒っぽいスパイシーさがあって、辛さまで感じる。ステンレスタンク醸造・熟成をやった。ホントにピュアなミネラル感を狙った辛口白ワイン。でも繊細である。 MUNCHEBERG RIESLING08ミュンチュベルグ 花崗岩と石英石が入り混じった土壌構成。クオーツ(水晶がかった石)が多いとミネラル感が強くなる。黄金色に近く美しく輝いている。ミネラルからくる辛さを感じる。 ワサビを使った日本料理に合わせたい。 勿論、刺身に合わしても面白い。 ★CHRISTOPHE PACALET クリストフ・パカレ クリストフ・パカレも超人気でなかなか近付けない。このような試飲会は朝一番に来て試飲しないとなかなか進まない。お昼近くなると来場者の数が増えてしまう。来年は朝一番で来ることにする。自然派のサラブレッドだ。マルセルを伯父、フィリップ・パカレを従兄弟に持つ。 自然派の元祖と天才の醸造技術を近くで体で覚えたクリストフ。自然体でゆったりした性格だ。 JULIENAS 09 ジュリエナ 色調も濃い、まさに世紀の年09の色合いだ。香りも典型的なガメイと云われるバナナの風味だ。勿論、自然酵母のみの醗酵だから土壌から来る香りだ。口中は力強くて濃縮感があり、旨味のミネラルも濃縮している。 FLEURIE 09 フルーリー 実にやさしい果実味だ。09ということで太陽を感じるけど強すぎることがない。ミネラルもほどほどに感じられて、スーッと入ってしまうTHE自然派ワインだ。 ★JEAN CLAUDE LAPALU ジャン・クロード・ラパリュ 自然派の孤高の存在。 ジャンクロードは控えめな性格で当初はマルセル・ラピエールなどとあまり直接的な接触はなかった。自分なりに自然派造りを工夫して実践して身につけたタイプだ。勿論、今は違う。 お互いのことをよく理解し合って付き合ってるし、マルセルを尊敬している。でも。造りは 独自な方法が多方面に渡ってある。 BROUILLY VIELLES VIGNES 09ブルイ・ヴィエイユ・ヴィーニュ 私は09の収穫に立ち会った。ボジョレ自然派では最も早く収穫を始めた。彼の畑の位置はブルイ山の南東にあって冷たい風がさえぎられていて、葡萄が熟すのが早い畑だ。最高に清潔で完璧に熟した葡萄が収穫されたのを確認した。あの葡萄がどんなワインになったか楽しみだ。濃厚な色合い、黒い果実、カシス、チョコレートなど南のワインの風味がある。アタックから甘味を感じる。ミネラルが酸と一緒になって爽やかさを演出している。セックでクリアでありながら濃縮した果実味を楽しめる。 LE RANG DU MERLE 、BEAUJOLAIS VILLAGES 08 ル・ラン・ドゥ・メルル 08は一般的には太陽が足りない難しい年だ。しかし、ラパリュの畑の位置は特別なミクロ・クリマがある。08にも関わらず濃縮した色合いだ、タンニンも濃くて細かい。ミネラルと酸の共同作業で真っすぐなワインを演出してくれている。自然派ワインの風味の中に濃さと涼しさの両方を楽しめる複雑性をもっている。ラパリュ独特の味わいだ。 ★GEORGES DECOMBES ジョルジュ・デコンブ マルセル・ラピエールがモルゴンの若手醸造家に自然派ワインの造りを薦めた時最初から賛同して自然派を実践しているデコンブ。マルセルにとっても同志のような大切な存在の人物だ。熊のような体格で、無口でやさしい人柄。ひとたび何かを決意した時は何が起きても初心貫徹の男だ。つまり頼れる人物。モルゴンに行くといつも御馳走になってしまうほど気さくな家族。 奥さん、息子の彼女、娘マノン CUVEE Gigi 09キューヴェ・ジジ デコンブが初めて最愛の妻のジスレンの愛称“ジジ”の名前をワインに付けた。ジスレンは根から明るく、実にさっぱりした竹を割ったような性格の女性だ。そんなワインが09は出来たのだろう。比較的濃い色合い、デコンブのワインらしくタンニンがパワフルだ。でも果実味も濃縮しているのでバランスが良い。陽気で跳ねているようなワインだ。まさにジスレンの性格そのものだ! MORGON 07 モルゴン 軽めの色合い。デコンブの比較的若い木からの葡萄を仕込んだワイン。パワフルなデコンブのイメージではなく、実にやさしいソフトで自然派独特の甘い果実味が溢れているワイン。グイグイ一本飲んでしまいそう。 BROUILLY 07 ブルイ デコンブのブルイの畑は山の急な斜面に位置している。 地下はすぐ花崗岩質の岩盤になっている。ミネラル感たっぷりなワインである。 MORGON 07 モルゴン 同じモルゴンでも、ドメーヌの樹齢が古い木からの葡萄を仕込んだもので明るい色合い、 果実味が豊か、熟成感もややあり柔らかな酸と果実味が心地良い。 ★PHILIPPE VALETTE フィリップ・ヴァレット 今、自然派の白で最も人気があるのがこのヴァレットである。 先日のパリのワイン専門店カーヴ・オジェにても一番人気だった。 フランス中のワインビストロでも最も人気のあるワインだと思う。 人柄も実に地に足のついた考え方の持ち主だ。浮いたところがない。 どのワインを飲んでもスッキリした真っすぐな特徴と繊細な果実味とミネラルは共通している。個人的にもシャルドネで最も好きな白はと聞かれればこのヴァレットを選ぶだろう。心よりお勧めの白ワインだ。 MACON-VILLAGE 08マコン・ヴィラージュ 香りに既にミネラルを感じる、昆布だしのような旨味が口中に広がる。果実味を含んだパワフルさが真っすぐなワインだ。ごまかしがないワイン。 MACON CHAINTRE 06 マコン・シャントレ ヴァレットの醸造所がある村、蔵の目の前の急斜面が畑だ。よく耕された生きた土壌だ。フィリップが最も手間暇かけている畑でもある。 やや緑がかった黄金色、ミネラル感ある香り、昆布だしがきいた旨味、酸の締まりとミネラルとボリューム感がブレンドされたような広がりがある。素晴らしいシャルドネだ。 POUILLY-VINZELLES 06 プイイ・ヴァンゼル 比較的濃めの緑黄色、香ばしいアーモンドグリエ、パワフルな果実味とミネラル感 。土壌の勢いを感じる。フィリップの体格のように力強い。樽風味も心地よい。共通した昆布だしの旨味、唾液がにじむほどである。素晴らしいの一言。 POUILLY-FUISSE 06 プイイ・フイッセ 黄金食、クルミの焦げた香ばしい香り、旨味と甘さが合体したようなボリューム感、ミネラルがビシっとしめてくれる。 全体のイメージはパワフル・シャルドネ、そして、裏に酸のやさしさと繊細さも備えたいるほぼ完ぺきなシャルドネだ。私の超お勧め白ワインだ。元気がもりもり沸いてきそうなワインだ。プイイ・フィッセの冷厳な岩山のパワーのようだ。 BEAUJOLOISE PHOTOS ギャラリー 福岡のレストラン・COQUINES 瀬戸ファミリーが来ていました。 ニコラ・テスタールと フィリップ・ヴァレットと いつもニコニコの二世 マルセル・ラピエールで研修中のアキさん、 今日は大忙し! ノルマンディーのカキ養殖~長送 夜のソワレの料理は、あのLYONの石田シェフが来てくれた! 石田さん 毎回、自然派のイベントの時は、LYONから御家族総出で駆けつけてくれる。 テルミチャンも手伝ってくれました。 本当にいつも有難うございます! 夜は会場がそのまま大レストランに変身、みんなで楽しい食事会 ボージョロワーズは入場も食事も フリーだ。醸造元は皆で出しあって まかなっている。 準備は若手とボランティアのみ。 それでもこんなに盛大に楽しく 自然派試飲会ができてしまう。 みんなの気持ちが繋がっているから できることだ。ボジョレは素晴らしい。 この和を世界に! ミュージックだ!ダンスだ! ダンスィング・クイーン MORGONの夜も更けていった。 マルセル・マチュ幹事 お疲れさまでした。 石田さん、何百人分の料理 有難うございました。 すべての自然派醸造家の皆さん お疲れさまでした。 素晴らしい一日でした。 ARIGATOU !