18年は1947年以来の記録的な猛暑が続いた。春の開花が遅かったので、葡萄熟成は猛暑だけでは早まらない。
今年は、酸の急激な減少には特別な注意をしなければならなかった。
何故?自然酵母で発酵させる場合、リンゴ酸は大変重要である、とフィリップはいう。

フィリップ、今年は収穫する畑の順序を特に気をつけて調整して、ほぼ狙った理想的な葡萄を収穫
できたとのこと。

この葡萄達には、畑で過ごした、この一年の湿気、熱、風、水、ミクロクリマ、そして畑のミネラルの
すべてが記憶されている。
同じく、葡萄に皮には、同じ環境で育った仲間の酵母菌達がついている。
この自然酵母菌達は約30種類ほどの仲間がいる。
低アルコールを造る特殊な酵母菌達がいたり、高アルコールになって働いて最後の糖分をアルコールに変える専門の酵母菌達もいる。

それぞれの酵母菌達がバトンタッチしながら働いて(発酵)果汁をワインに変えてくれる。
特に、低アルコール時に働いてくれる酵母菌達が豊かな、そのテロワール独特の香り風味をワインに転写してくれる。

目には見えないけど、このフィリップの蔵の中には天文学的数値の酵母菌達が働いてくれている。

葡萄と酵母菌達は同じ環境(畑)で育った同級生である。その環境の記憶がワインに転写されて、
その畑のテロワールの特徴になる。
だからこそ、そこで育った自生酵母で発酵させることが大切なのである。

人工的に他の研究所・工場で作られた人工酵母菌では、その畑の記憶がない。記憶がないものを
ワインに転写することはできない。つまり、ワインにテロワールが表現されていないのである。

だたら本物のワインを造る醸造家は、この自生酵母を大切に畑で育てているのである。
フィリップはジュル・ショーヴェ博士と自然酵母の研究をやって論文を発表している。