22回目の収穫のクリストフ・パカレにとって、今までに経験したことがない厳しい自然環境での葡萄栽培だった。
4月の寒波はマイナス6度という異例な気温だった。温かかった暖冬で芽がいつもより早く出ていた。
それが3日間も続いた。 多くの芽が凍ってしまった。
その後、5,6月と曇り空が続き、さらに7,8月と気温が上がる中、雨が降り、さらに曇り天候で湿気が多かった。
ウドンコ病を筆頭に、色々な病気が発生した。
まるで、葡萄栽培上の“トラブル”のオンパレードと云ってもいいほどだった。
.
天が与えてくれた試練をすべて受け容れて、できうるすべてを尽くして対応したクリストフ。
その仕事の総決算が、今日の収穫となった。
.
傷んだ葡萄も存在するけど、自分がすべてを尽くした結果の葡萄を手に、笑顔のクリストフがそこに居た。
.
厳しい葡萄栽培で、無理をしたクリストフ、膝を痛めてビッコをひいていた。
(医者からは安静にしているように、との指示も出ているけどそれもならず)
この忙しい時期に、思うように動けないジレンマも受け容れているクリストフだった。
.
自分で動きたい動作も人に頼まないとできない状況の中、モクモクと仕事をこなしていた。
.
クリストフ
『今年もこの天が与えてくれたこの葡萄で、日本の皆さんに喜んでもらえるワインを造ってみせるよ!
 今年こそ、ガメーのヌーヴォーらしい、軽快でスイスイ体に入っていく典型的なスタイルになりそうだよ!』
.
一段と“人間”が大きくなったクリストフがそこにいた。
.
そんなクリストフが造る2021年のワイン、エモーショナルな美味しいワインになりそうだ!

朝日を体全体に享けてエネルギーを吸収しているクリストフ・パカレ

マジックな今年の収穫、この太陽の真正面にお月さんが、この収穫を見守っている。

収穫チームは、まだ暗い太陽が上がる前に葡萄園に到着。
太陽が昇ると同時に明るくなって収穫を開始する。
私も朝起きて、ホテルを出る時は真っ暗。葡萄園に着く頃に薄明るくなる。
太陽とお月さんがにらめっこするように大局に出ている。
シーンと静かで薄暗い葡萄園に幻想的な世界が広がっている。
葡萄を切るハサミの音がチャキチャキと響いている。

屈強の収穫人とソフトな収穫人を集めたクリストフ・パカレ

今年は、天候不良による傷んだ葡萄が多くある。
よって、今年の収穫は“選別作業”が超重要な仕事になる。
ただ、葡萄を切り取れば良いわけではない。
葡萄房の中でも、傷んだ部分を切り落とす細かな注意を必要とする作業が大切。

マルセル・ラピエールから教わった自然ワインの造りの最も大切な事に一つは、健全な葡萄のみを発酵槽に入れること。
酸化防止剤を使用しないで、自然酵母だけで発酵する為は、雑菌が入ることを避けるのが超重要!
だから、クルストフは、この作業を徹底してやるように指導している。
収穫のスピードは極端に遅くなる。
なぜなら、腰を下した状態でカットした葡萄を立って綿密に悪い部分を切り落とさなけれならない。
つまり、スクワット運動を繰り返しながらの作業になる。非常につらい仕事である。

今年の最高にいい天からの贈り物は、収穫時の温度が低いこと!
今日の朝は何と7度Cだった。雑菌が繁殖しにくい状態を確保できる。これは自然な造りには超大切なこと。
作業を始める朝は、寒いので防寒服を着ている。
そして、こんな時はムードを盛り上げてくれる元気者も大切。
いいメンバーに囲まれて、美味しいワインを造る為の収穫が着々と進んでいる。