2012年こそ自然派ワインの『違いが明確』になる年


100年に一度の収穫量が少ない年 2012年は100年に一度と云ってもよい難しい年になった。
89歳のお爺さんが云っていた。 『こんなに葡萄が少ない葡萄園を見るのは初めてだ!』 ビオ栽培、ノンビオ栽培関係なく厳しい栽培の年だった。
どこも収穫量が極端に少ない。例年の30%~50%の収穫量となった。 1-2月の寒波マイナス18度を記録した。 2-発芽後の春先にも-5度の寒波でやられた。(量が少ない最大の原因) 3-開花時の悪天候による結実不良、 4-その上に5月から8月までの雨曇りによる湿気からくる病気の大発生、 5-その間に、数度にわたる雷をともなった雹の被害。 6-8月後半の3日間の極度な猛暑による葡萄が焦げる被害。 12年は天がボジョレに与えたハードルは実に高いものだった。そんな受難な年だからこそ自然派醸造家達はエネルギーとパッションを集中して畑仕事に費やした労力は普段の年の10倍。
2012年こそ自然派ワインの『違いが明確』になる年はないだろう。彼らは決して諦めない。



MARCEL LAPIERREマルセル・ラピエール家のVENDANGE収穫
困難な年だからこそ、このエネルギー!


ワインは、天、地、人のサンフォニーだ! 地は動かない46億年の地球の変遷を経て現在の畑の土壌がある。 モルゴンには元火山地帯だったころ生成された花崗岩が主体になっている。 花崗岩はワインにミネラルとエネルギーを与えてくれる。 天は毎年動く。今年は厳しい天候だった。葡萄栽培には、それぞれの葡萄成長の重要な時期がある。今年はすべての重要な時期に天は厳しい状況を与えてきた。 それでも、宇宙のエネルギーを受けて葡萄が今年も育った。でも少量の葡萄だった。


人は天が与える条件をすべて享けいれて栽培作業をするしかない。 時として不条理な、あまりにも厳しい状況もすべて、100%を享けいれる。 文句や愚痴を言っても何も解決しない。時として天は09年のように最高の条件を 与えてくれる。でも今年は、ボジョレ、特に北ボジョレの農民に何かを伝えようとしているかのように過酷な条件を与え続けた年だった。


人の笑顔にはエネルギーがある! 普通ならとても、笑っていられるような状況ではない。でもここラピエール家では 笑顔ですべてを吹き飛ばすエネルギーで溢れている。 ラピエール家の収穫には、毎年やって来る若者が60%ほどいる。 お互いが良く知っている。2~3週間は昼夜を共にする合宿生活を経験している。 まるで遠い家族のような存在の関係だ。 この中には、セミプロのような音楽家が何人かいる。体力的にはかなりハードな仕事を終えた夜は、夕食のあとの食堂が時にはフェスティバル会場に変身する。 収穫の畑でも常に笑顔が絶えない明るい雰囲気が漂っている。 冗談を言って笑わせる人、歌を唄って盛り上げてくれる人、芸人が多く実に明るい笑顔が溢れている。この笑顔にはエネルギーがある。このエネルギーがワインの中に入っていくは疑いのないことだ。実に大切なことだ。 12年は選別が超重要な年 ラピエール家の収穫は究極の厳しい選別収穫を実現



マチュは“選定粒摘み”を決意 12年は葡萄木に存在する葡萄の数が少ない上に、状態の悪いものも多く混じっている。美味しいワインを造るには健全な葡萄のみを発酵槽に入れることが条件。 当然、良い葡萄のみを選別すること。しかし、今年の場合は葡萄の数が僅かな事が問題である。マチュは“選定粒摘み”を決意した。 葡萄房の悪い部分の粒を切り落とす作業を収穫人に徹底させた。 普通の収穫の4倍のスピードが遅くなる作業を決意したのである。
採算より品質を重視! 品質の為に採算を顧みない決意だ。さすがマルセル・ラピエールの長男だ。 何と収穫人全員が一つ一つの葡萄を丁寧に傷んだ粒を切り落とす作業を実施。 気の遠くなる作業だ。その上、収穫人に白と黒の籠を準備して白に完ぺきな葡萄を入れて 黒にやや傷んだ葡萄でも悪い部分を切り落とした葡萄を入れることを指示。


マチュは醸造家として人智を尽くして対応 2012年、天からの厳しい条件を与えられたマチュは、 迷わず、自分の出来うる最高の手段を選んだ。 当然なことながら、2012年産のマルセル・ラピエール ワインは極小のビンテージとなる。世界中のファンから 取り合いになるだろう。 マチュ曰く、 『マルセルやお爺さんが書き残した毎年の醸造記録が残っている。難しい年に先祖がやったことや、心の持ち方などが記録されている。今年はこれらの記録が本当に参考になった。』 ワイン造りは一生に40回ぐらいしかできない。先祖のこうした記録は宝物だ。マルセルと共に造っている。

LAPIERRE FAMILLE ラピエール家のファミリーは一致団結で12年収穫


前右が長男のマチュ、前左が二女のアンヌ、後ろ右がお母さんのマリー、後ろ左が長女のカミーユ。 マルセルが亡くなって3年目の収穫。醸造責任を一手に引き受ける長男マチュ、マチュを側面から支える長女カミュ。 マルセルがいなくなった10年、11年産はマチュの工夫による醸造が冴えた。ワインの品質は先代を上回るとの世界からの好評だ。 世界的自然派ブームもあり、10年も11年も瓶詰して販売すると同時に売り切れとなってしまった。 12年産は壮絶な取り合い合戦となるだろう。


マチュ 自然派の父、マルセル・ラピエールの後を継ぐプレッシャーをおいながら、見事にに自分のスタイルを造り上げつつある。12年産、醸造を指揮するマチュ。脳はフル回転だ。
カミーユ 繊細な感性の持ち主。ソムリエの修行をして資格を持っている。醸造に興味を持ち、今年からボーヌのワイン学校に通う。ロマネ・コンチのオーナーの娘とボーヌのアパート暮らしをしながら一緒に醸造の勉強。


末っ子のアンヌ 1年間のオーストラリア滞在から最近、帰ってきた オーストラリアで醸造所でも働いたとのこと。まだ、修行の旅を続けたい様子。 マルセルの葬式の時、弔辞を読んだオベルノワ氏から 『ラピエール家の星』と呼ばれたアンヌ。 お母さんのマリーと収穫現場での収穫人の管理などを勉強中。 ラピエール家の大黒柱、マリーさん 自然派の父・マルセル・ラピエールと共に自然派を支えてきたマリー。 パワフルでいつも元気なマリー。ここの収穫がこんなに笑顔が絶えない 素晴らしい雰囲気は、このマリーのお陰。 収穫人に対する人間的な暖かい接し方が、皆から慕われている。