GREGORY・GUILLAUME * 地質学・鍾乳洞研究家からの転身、静かに燃えるグレゴリー・ギオム

新しい自然派醸造家が生まれやすい南アルデッシュ地方


南ローヌ河右岸のアルデッシュ地方が今面白い。ここには自然派の原点的存在のドメーヌ・マゼルジェラールド・ウストリックがいる。若手への援助・アドバイスを含めて親身になって面倒を見てくれる。そしてもう一人、中堅的存在のレクラパスジェローム・ジュレもいる。ジェロームは皆の兄貴的存在でより細かなアドバイスをしてくれる。この二人のお蔭でここアルデッシュ地方には新人醸造家か多く誕生している。

 年に一度 “自然派ワインの真夏の祭典”アルデッシュ自然派ワインの大見本市と夕べを開催する。日中は試飲会、夕べは豚の丸焼きを分かち合い、朝まで、食べて飲んで歌って踊ってのお祭りを開催している。この祭典のお蔭でパリのワイン屋、ビストロ、世界中の自然派ワインバイヤーもやって来る。若手ワインの買い手も直ぐに見つかるシステムができている。

マルセル・ラピエール系の自然派ワイン造りを継承

そんな若手の中でも群を抜いて高品質なワインを造るのがこのグレゴリー・ギヨムである。研究者としての追及心や物事の分析能力がワイン造りに生かされている。グレゴリが初めて自然派ワインを飲んで感激したのは、自然ワインの軽快な果実味だった。まるでブドウジュースのようにグイグイ飲めてしまうワインに感動したのだった。グレゴリーは、マルセル・ラピエール系の自然派の造り、除梗をしない葡萄房(グラップアンチエール)をそのまま発酵槽に入れる、セミ・マセラッション・カルボ醸造の典型的な自然派のスタイルをそのまま継承したのである。グレゴリーは自分なりの工夫をして灼熱の南の太陽を上手に調整してより果実味があって、より軽快で葡萄ジュースのようにグイグイ入ってしまうビュバビリテー最高のワインを醸すことに情熱を燃やしている。
 

ジェローム・ジュレとの人生を変えた出会い

シャンパーニュ地方出身のグレゴリーがここアルデッシュ地方にやって来たのは、この地方の古い石灰岩盤の下に鍾乳洞系の洞窟が多く存在しているからで、洞窟研究者として調査・研究にやって来たのである。ある時、鍾乳洞の中で醸造家ジェローム・ジュレに出会う。人間的にも素晴らしいグレゴリーとは即家族同様の付き合いを始めた。この地方の人達の飾らない純粋な人間的な付き合い方にシャンパーニュ地方のギヨムは感動した。そして、ジェローム・ジュレの造ったワインの美味しさに驚愕した。自分が今まで飲んでいたワインとは全く違う美味しさに驚いた。それと同時に興味がわいてきた。ジェロームにお願いして醸造元で働くことにした。もともと研究者だったグレゴリーは自然派のワイン造りにのめり込んでいった。

山奥に標高の高い畑を手に入れた。


11年にアルデッシュ地方の山奥にビオ栽培の畑をやらないかと提案があった。標高が300mと高い。軽快な酸を狙うグレゴリーには絶好の条件だった、即断した。ジェローム・ジュレのところで学んだことを自分なりに改良したいところが既に沢山あった。 グレゴリは、より果実味を強調させながら、同時に酸を落とすことなく、そこにピュアーなミネラル感、さらに軽めのアルコール度数でバランスをとることを追及したかった。標高が高いことは最高の条件だった。

入手した畑の更に標高の高いところには、120年前フィロキセラの害以前は葡萄園だった段々畑が放置されて野生化している。グレゴリーはその段々畑も将来的には復活させたい。数百年前はローヌでも銘醸地として知られていたアルデッシュ地方の幻の畑である。

馬による農作業を開始


ピュアーさをより表現するには、徹底した自然栽培をする必要がある。スカッとしたミネラル感と酸をワインにもたらしてくれる。自然派独特の透明感がワインに表現される。その為には根っ子が地中深く伸ばして石灰岩盤のミネラルと水分を葡萄にもたらしてくれる必要がある。グレゴリは土壌を最大限にイキイキさせるには、馬での農作業が不可欠と判断。トラクターの重量で畑の土が潰されることなくより活性化する。


先人達の仕事を受け継ぎ土壌の“力”をワインに グレゴリー『自分の直接の先祖ではないけど、村の先人達が、栽培が困難な山を開拓してテラスと呼ばれる段々畑を造ってくれた。農機具がない時代には大変な作業だった。一生をかけて開拓した畑に違いない。それを引き継げる私達は本当に幸せなことだと思う。』 段々畑の作業は手間暇がかかって引き継ぐ人がいなかった。グレゴリーは先人達の仕事に敬意を持って復活させている。
 

日本の酒販店グループ・ESPOAのメンバーがグレゴリー・ギヨムにやって来た!


エスポア・グループ
は全国に約100店ほどの酒販店がある。ワインを中心に自然で美味しい食品など『人にも優しく、地球にも優しい商品を提供する』 熱心な酒販店の集まりだ。 無名でも本当に佳い商品、美味しい商品を売ることに努力する酒販店グループである。当然、無名の商品を売るには数倍の労力が必要だ。 しかし、無名の商品を売る為に、お客さんとの接点を大切にして、“信頼”を得るためにあらゆる方面から最大限の努力をしているグループである。

⇚ グレゴリの醸造所。村の空き倉庫を改良して醸造している。規模の大小   有名・無名では判断しない。ワインの中身、本物度で取引を決める。

自分の目でチェックしてない醸造元は販売しない。

ワインに関しては、自分達で訪問して畑が生きているか?
造り手の人間としての人柄は? 
醸造方法も妙なものを使っていないか?
どこまで自然で、何故美味しいのか?
ただ美味しくするために地球を汚していなか?などを確認して販売している。毎年、仲間の誰かがフランスにやって来る。もう20年間も買付ツアーが続きている。レポートを全仲間に配布している。

新ミレジムをチェックするエスポア・メンバー



自然派は毎年ワインのスタイルが変わる。
毎年、新ミレジムが完成する5月に訪問して今年のスタイルをチェックして仲間に伝える。

造る人と売る人が共に生きる

醸造元にとっても、自分のワインを実際に販売している人達の意見を聞けるし、
自分のワインがどんな風に評価・販売されているか?を知ることができて、
安心すると同時に“共に歩んでいる”という勇気・やる気が出てくる。
 


まだ、ビン詰前の樽熟成中のワインが試飲できる。まだマロ・ラクティック発酵が終わっていないワインがどんなものか?も経験できる。 数か月後にはこのワインが自店に入荷される。
プロのワインバイヤー達がするような体験を、ESPOAメンバーはやってしまっている。こんな酒販店グループが日本に存在していることに誇りを感じる。

パリのワイン屋でも、星付店のソムリエでも実際に訪問に来る人は少ない。 電話で注文すれば、翌日には店に配達される。わざわざ遠いフランスまで来る必要はない。でも本当に大切な“商売”の神髄を忘れてしまっているのではないだろうか? 自分の売っている商品の中身を熟知して、信頼できる商品を自信を持って販売している小売店が、どれだけいるだろうか? 安いもの、売れやすいもの、有名なものばかりに手を出して価格競争に追われた商売に巻き込まれることなく、自信を持って売れる商品を提供して、お客さんの“信頼”を得ることができ、仲間とも情報を提供しあえるESPOAは凄い。



右から、東京のみどり屋さん、福岡の ナカムラさん、山口のやまだ屋さん、小松のもりたかさん、皆、自分の街では、ワイン愛好家から絶対の信頼を得ている一番店の人達だ。 皆、忙しい時間を割いてこのツアーに参加している。それぞれの店の得意分野が違う。商圏も違う。 このグレゴリーの13年産のワインを飲んで意見や感想が全くちがう。

このツアーでは本音で話し合える。この点がこのツアーの最も価値のある部分だろう。 例えば、小松の森高さんは、グラップ・アンティエール(除梗なし)のセミ・マセラッション・カルボニック醸造の自然派がやや苦手だった。でも福岡の中村さんは得意中の得意な分野。
 

L’EPICURIENエピキュリアン
はグルナッシュ品種をセミ・マセラッション・カルボニック醸造で仕込んだ。 フレッシュで、果実味が全面に出ていて、葡萄ジュースのようなワイン。繊細なグレゴリーが工夫を重ねて、南でありながら軽快でグイグイ入ってしまう自然派の典型的なワインを造りあげた。 還元的な風味が苦手だった森高さん、そのイメージがずっと頭に残っていた。 でも、最近の若手醸造家は先輩たちの失敗を土台に新たにクリアーな自然派ワインを造り上げている。森高さんは、中村さんより今の消費者のグイグイ飲める癒し系ワインの人気の話を聞いて、もう一度、実際に造り手の醸造上の苦労を聞いて、自分で飲んでみてイメージを切り替えた。 森高さん『イヤー、ほんまにジュースのように体に入ってしまう。文句なしに美味しいね。』大切な気づきをした森高さん


LOU FOROSE ルー・フォロゼ
なんとアリカント品種とカベルネ・ソーヴィニョンを一緒にプレスしてジュースを混醸したロゼ。果実の爆発のように美味しい。



KOFOROBE コフォロベ
 メルローとシラーのグラップ・アンティエール(除梗なし)のセミ・マセラッション・カルボニック醸造。メルローの爽やかさと、シラーの果実味、、石灰岩盤のミネラル感で体が癒されるような透明感がある。

テースティングの後は造り手と売り手の人間的な繋がりを深める懇親会

 

 

お互いを必要とするファミリー的関係



グレゴリー
のいる南ローヌ・アルデッシュ地方は農協組合が経営不振でバタバタと倒産している。当然、栽培農家も大変な状況な中にある。 当たり前のワインが売れないのである。 除草剤、殺虫剤、化学肥料を最大限に使ってリスクを負わない楽なワイン造りをしてきたしっぺ返しが来ている。

土壌の微生物が死に絶えて、コンクリートのように固い畑から美味しいワインなどできる訳がない。美味しくなければ売れない。当たり前の話である。


農作業が何倍も大変な自然栽培、リスクのある自生酵母での発酵、S02(酸化防止剤)を抑えた自然派ワイン造りは決して楽な仕事ではない。 でも、除草剤や工業酵母のなかった60年前はすべての醸造家がやっていたワイン造りなのである。ロマネ・コンチもシャト・ムートンロッチルドもみな畑に住む自生酵母でワイン造りをしていたのである。 グレゴリ達は農業を当たり前のやり方に戻して、土壌の微生物を活性化させて、その微生物の一部である自生酵母のみで発酵させて、その土壌に由来した美味しさをワインに詰める造りをしただけなのである。

しかし、そんな造りは多大なリスクを伴っている。 一般のワイン造り手の何倍もの労力を必要としている。実に過酷な労働を伴う。キッチリ買ってくれるお客さんが必要だ。

だから、自分のワインをキッチリ評価してくれるESPOAの人達は、本当に大切なお客さんなのである。いや、お客さんを超えて共に生きる“ファミリー”のような存在なのである。 ESPOAの皆さんが、リスクを負いながら、無名の商品や売りにくいけど本物商品を敢えて販売する挑戦者の姿に似ている。 長い観点でみれば両者とも利にかなっている。心から応援したい。