2年に一度、南仏で行われるVINI SUDという地中海沿いの国のワインが集まるワイン見本市がある。

その時期に、モンペリエ近辺の村や都市で自然派のグループが小見本市を開催している。

2月11日、隣町のニームで約30の小規模な自然派が集まった。ラングロールのエリック氏やポッシーブルのロイック氏が幹事になっているグループだ。
南のワインが中心となっている。
今年が確か3回目となる。年々規模が大きくなっている。そして、訪問者も年を追うごとに増えている。
自然派が着々と発展しているのを感じる。
初回の時は、自然派醸造元の人達同士の情報交換的な集まりだった。夜は、パリの自然派ビストロのバラタン夫妻が料理を担当していた。それは大変に美味しくてアットホーム的な会だった。バラタン夫妻が担当したのは前回までだ。
今年は立派なワイン見本市に発展している。訪問客も圧倒的に増えている。自然派ワインが着実に増えているのを実感する。


ここ南フランスは現在のフランスワイン業界で最も厳しい状況に置かれている地域である。
ワイン農協が経営難で苦しい戦いを演じている。倒産する農協が増えている地方だ。
世代交代の時期に若い後継者は、農協を出て自然派ワインに転向するケースが益々増えている。
今回のこの見本市にも多くの新人醸造家が出店していた。初リリースでいきなり素晴らしいワインを造りあげてくる。
彼らには経営的資金に後がない。これでダメなら廃業という真剣勝負だ!
生活は信じられないほどの質素な生活をして、ワイン造りに賭けている。でもお金はないけど心は豊かで幸せそうな生活をしている。まるで『大草原の小さな家』のような生活だ。

農協を抜けると、独自の醸造所が必要になる。しかし、お金がない。プロに依頼せず自分で建物を造ってしまう。
中には、自宅の一部や車庫を改造して仮の醸造所を造っている。まさにガレージワインだ。
奥さんは殆どの場合、外で働いて家計を助けているケースが多い。でも自然派ワインを志向する若い人達はセンスもよく家族楽しそうに生活をしている。
この会の主催者の一人であるラングロールも農協から独立した一人である。
そんな真剣勝負を演じている若手を、心理的、技術的にも助け合っている古参の自然派の姿がある。
野武士のよなう頑強なタイプ、芸術家肌のクリーティブなタイプ、学者のようなインテリタイプ、そして
真剣勝負の若手、などが一体となって素晴らしい雰囲気が漂っていた。

伊藤  ニームにて