ローヌ河南部の町、アヴィニョンの南西側に位置しているエステザルグ協同組会。この地区の土壌質は略粘土 ・砂利質、そして多様な品種のブドウが栽培されています。その為、ボリューム感と骨格がしっかりとしたワインが造られる地区として有名です!

エステザルグは1965年、10件の生産者が力を合わせて構成した協同組会です。皆さんの畑の面積を総合すると、何と450ヘクタールもあるのです!しかしここからがこの組会の特別な所!化学肥料や除草剤を一切使わない自然栽培と、収穫されたブドウの特徴を壊さない自然醸造方がモットーです。

『ドメーヌごとに収穫と醸造を行い、各区画の土壌の特徴を最大限に引き出す事を目標としている。醸造の間、亜硫酸は一切添加しないため、ブドウ果汁が空気に短時間触れるだけでも酸化の原因となってしまう。だからなるべく素早く作業を進めていかないといけない。』こう語るのは、エステザルグの組合会長、Denis Deschamps*ドニ・デシャンさん。彼は2004年から一人でこの巨大な組織の会長として全ての作業を厳しい目で監視しています。一人でこの座を務める前には、今はDomaine Le Bout du Monde*ドメーヌ・ル・ブ・デュ・モンドとして独立したEdouard Laffitte*エドゥワード・ラフィットさんと供に働いていました。

協同組会での醸造所はまさに工場です!入った瞬間、あちこちで様々な作業を行っている従業員達で賑わっています。最初に目に入ったのは、やはり真直ぐと続くタンクです。

コンクリートタンクは容量260L、デキュヴァージュは手作業。ステンレスタンクは容量300L、そして重力の法則でタンクから木樽へと流れていきます。

『自然酵母は低い気温でなければ発達しません。ですから赤ワインは、略3週間もの間、タンク内でアルコール発酵を行います。そして、タンニンをまろやかにする為、木樽で6ヶ月間から18ヶ月間の間熟成させます。白ワインの場合は6ヶ月間タンクと樽での熟成、ロゼに関しては、6ヶ月間のタンク熟成です。そして瓶詰め前に、自然と含まれているガスを抜きます。ワインを瓶内に入れ、コルクで蓋を閉めてから、よりまろやかさを引き出す為、再び13度で瓶内熟成を行います。』


10件ものドメーヌを集めて醸造しているのでワインの種類は10種類以上!
今日試飲したのは・・・

キュべ・レ・グランド・ヴィーニュ・ロゼ 08
*Cuvée Les Grandes Vignes Rosé 08
グルナッシュ、シラー、サンソーのアセンブラージュ・ワイン
とてもフルーティーな一品!グルナッシュのまろやかさにシラーのフルーツ感、そしてサンソーの繊細さを最大限に表現した、爽やかでに飲みやすいワインです。
サンソーとグルナッシュはアルコール発酵が発生しにくい品種。そこでシラーと混ぜ合わす事によって、アルコール発酵が起きやすくなるのです!

キュべ・レ・グランド・ヴィーニュ・ブラン 08
*Cuvée Les Grandes Vignes Blanc 08
クレレット50%、ヴィオニエ50%
9月25日に収穫されたブドウは、3週間18℃にてアルコール発酵されたもの。
まだマロラクティック発酵は始まっていないので少し酸味が強い!この第二次発酵が終了したら、スティラージュ(澱引き)を一回行い、自然と澱が樽底にたまるのを待つのです。
白い花やピーチなどの爽やかなアロマに、ハチミツの甘い香りが混ざっている、繊細で飲みやすいワインと仕上がるでしょう!

ドメーヌ・デ・バキャント 08*Domaine des Bacchantes 08
グルナッシュ30%、シラー70%
『バキャント』とは酒神バッカスを祈るパーティー、『バカナール』で、バッカスの為に踊る女性達を示しています。
このキュベもアルコール発酵は終了したが、マロラクティック発酵がまだ行われていない状態です。その後、8ヶ月間樽で熟成し、スティラージュを行う予定です。ですがもうすでにレグリスと香草のアロマや、黒フルーツ(シラーの特徴)の香りが凄い!しかも14℃の熟成度で収穫されたブドウなので、とても骨格がしっかりとしていて豊富なワインと仕上がるでしょう! 

ラ・グルナッチャ 08*La Grenacha 08
グルナッシュ100%
アルコール発酵は終了したが、マロラクティック発酵がまだ行われていない状態で試飲。この品種はマロラクティック発酵が一番起きにくい品種です。何故かと言うと、グルナッシュの高い熟成度とリンゴ酸の少ない量が原因だそうです。しかもアルコール度数は14℃以下、そして樽内の気温は20℃と、全てが整った状況でなければマロは始まりません・・・けれどもドニさん曰く『このキュベはもうすでにフルーツの香りとタバコの葉やコショウのスパイシー感が強い。マロが終了したら、より柔らかくなって、バターのようなとろみが出て来るんだよ!楽しみだ!』ですって!


キャランチエンム・ルジサン 08*40ème Rugissants 08
グルナッシュ50%、カリニャン25%、ムルヴェードル25%
1/3はタンクでのアルコール発酵、2/3は木樽でのアルコール発酵。
このキュベはエステザルグの40週記念日を祝って造られたキュベ。しかも
初のマセラシオン・カルボニック、グラップ・アンティエール(除梗なしの房丸ごと)で造られたのです!フルーツ、スパイス、チョコレートなど、様々な香りを引き出す為、そして新しい事に挑戦しようという考えから醸造方を少し変えて出来上がったキュベ。
食後にデザートなどと一緒に頂くのがべストです!

最後にドニさんに2008年のブドウの出来は?と尋ねてみると、嬉しそうな顔で『今年の収穫は10月5日に終了したよ。この地区は地中海に近いから乾燥している。収穫時期も早めだ。僕が思うには、2008年はフレッシュでフルーティーなヴィンテージュになりそうだ。期待してもいいと思うよ!』との事。