ご存知の方も多いと思いますが、パリの8区にある老舗ワイン屋のCave Augeでは、不定期的にではありますが自然派の造り手たちを招聘した試飲会を開催しています。

店の前には試飲用のボトルやグラスを置くための樽が犇くようにずらりと並べられ、其処に造り手たちが所狭しに並んで試飲客を待ち受けているのです。いつも地域別に催されるのですが、今回はジュラ、サヴォア、アルザス地方です。11時から19時の試飲会で、僕は11時20分に到着した所、既に多くのお客さんが集まっていました。何と言ってもこの試飲会は、入場無料(入場といっても店先でやっているので通りすがりの人も大歓迎で飲めるのです)で飲みたい放題という点が魅力の一つ。しかもこのAugeのオーナーであるマーク・シバ氏の御眼鏡に適う造り手しか招聘しないという拘りから、とにかく気合の入った造り手ばかりが集うというのも大きな魅力。もう一つ挙げるとすれば、試飲に出ているワインは全て特別価格(定価より大抵10~20%安い)で提供してくれるもの超魅力だと言えます。大袈裟にいえば、この試飲会を毎回経験していれば、自然派ワイン通になれる程のものなのです。ちょっと今回の顔ぶれを紹介しましょう。

 DOMAINE BINNER, ALSACE (Audrey et Christian Binner) 16種類
 DOMAINE OVERNOY, JURA (Pierre Overnoy et Emmanuel Houillon) 4種類
 DOMAINE TISSOT, JURA (Stephane Tissot) 9種類
 DOMAINE BARTUCCI, BUGEY (Raphael Bartucci) 1種類
 DOMAINE SCHUELLER, ALSACE (Gerald Schueller)  5種類。

ちょっと身震いしませんか?
どれもかしこも気合の入った造り手だけに、皆甲乙つけ難い逸品揃いですが、特に感動したものを紹介します。

先ずはBINNERのGEWUZTRAMINER Kaefferkopf vend tardives 2003(41,8€→35,55€)。
ゲブルツ特有のライチの香りがミネラルの風味と共に登り、まったりと落ち着いた濃厚な旨みの後ろで酸が控えめに微笑んでいるような感じ。このBINNERという造り手は凄く長い歴史のある蔵元で、所謂減価償却が済んでいる(お金に余裕のある)蔵元であり、他の造り手と比べると品質に対する価格が非常にお手頃ということでファンが多いことも特徴です。でもこのゲブルツは一番高価なこともあり1本だけ購入(セコイ!)。

次はDOMAINE OVERNOY HOUILLON*ドメーヌ・オベルノワ・ウイヨンのArbois pupillin poulsard 1999(27,7€→23,55€)。
ジュラのプピランといえば、この造り手が最も偉大だと絶賛する人が多いと聞きますが、まさにその噂の通り。通常樽熟成の際には補液して酸化を防ぐことが普通ですが、ジュラでは補液せずに酸化させて独特の酵母菌を育てることで特殊な酸化臭を造りますが、その香りがまさに腐葉土のようで自然の恵みを飲んでいるという感慨を受けます。ちなみに3本買いました。三つ目は妥当な線かもしれませんが、Domaine Raphael Bartucci*ドメーヌ・ラファエル・バルトゥッチ の発砲ロゼ、Cerdon du bugey(13,8€→11,73€)! 

甘口でありながらいくら飲んでも嫌気のしないセルドン!僅か2ヘクタールの畑からこのセルドンしか造らないバルテュッチの発砲ロゼは、営業なんかしなくても毎年完売御礼なので、ラファエルは試飲会でも全く営業する気無し!両隣に居る造り手たちと和気藹々にワインを飲みながら談笑しています。そんなラファエルに無理矢理頼み込んでセルドンと一緒に記念撮影。と、思わず6本購入。

最後はやっぱりアルザスのDomaine Gérard Schueller*ドメーヌ・ジェラール・シュレール。僕個人的に言うとアルザスでは間違いなく東の正横綱だと思っていますが、今回はその中でもBruno Schueller*ブルノ・シュレールのPinot gris(12,9€→11€)が途轍もなく素晴らしかった。これも気がつけば6本購入しちゃいました!

こんな試飲会が普通に道端で開催されているなんて、やっぱりパリに住んでいて良かったと思います。