***** 4月20日BEAUJOLOISE試飲会 *****

今年も自然派発祥の地ボジョレにて大自然派ワイン試飲会が開催された。

***** 主催したのは次世代を担う3人組 *****

右から、クリストフ・パカレ、シリル・アロンゾ、マチュ・ラピエールの3人だ。

新しい発想で新時代を切り開く3人だ。今年の企画は何か志向があるのか?
『ウィー。今年はボジョレワイン協会の会長を招待したんだ。我々自然派の実態を見てもらいたいんだ !』

ボジョレ・ヌーヴォのA0C取得問題の解決の糸口になるか?

毎年、ボジョレ・ヌーヴォ出荷時期に、起こる問題がある。AOC BEAUJOLAIS NOUVEAU の認定拒否問題である。
ボジョレAOC協会は毎年、自然派ヌーヴォのワインをAOC BEAUJOLAIS NOUVEAUを公認しない嫌がらせ的な行為を繰り返してている。しかし、この2008年のヌーヴォの不景気にも関わらず自然派ヌーヴォは例年とかわらない出荷量を実現した。それに比較して普通のヌーヴォの出荷量は壊滅的な状況だった。

***** 3人組みの画期的な趣向 *****

この時期にこの若手の3人は、いきなりボジョレ協会の会長をこの自然派試飲会にブースを出す招待状をだした。
会長もそれに応えて参加した。
今までに痛い目を遭わされた古い自然派醸造家では、絶対に考えられない発想だ。
実に自然に、自分たちのワインと顧客の関係などを、隠すことなく見てもらいたかったのだ。
自然派はセクト的存在などではないことを見てもらいたかったのだ。

一生懸命に農作業を人一番努力して大きなリスクをおいながら美味しいワインを造っているだけであること、そんなワインを遠くからもこの試飲会の為に参加してくれるお客さん達が大勢いて、しかも熱烈なファンが多いことを見てもらいたかったのにちがいない。


これでどう変わるかは別問題だ。兎に角、自然と顧客を尊重しながら美味しいワインを造り、楽しく分かち合いたいだけだ。
今年は、会場にフランス版演歌のような酒と共にあるシャンソンを専門に歌うシャンソン歌手を呼んで楽しい雰囲気を演出した。
そして、地元の有名なソーセージ屋さんや仕出し屋さんを呼んで美味しいものを食べながらの試飲会となった。自然派の中ではフランスナバーワンと評判のジュラ地方のチョコレート専門職人も招待していた。食べて飲んでの楽しい家族的な雰囲気の中でのユニークな試飲会だった。

**自然派の2大巨匠マルセル・ラピーエルとピール・オヴェルノワの存在**

PM3時の時点で450名を超える入場者を数えた。
昨夜は心配で3時に目が覚めたといっていたマチュ・ラピエールとアロンゾも大満足だった。入場者はフランス、ベルギーなどからワイン屋やレストラン業者などが集まった。皆、熱烈な自然派ワイン愛好家ばかりだった。
確実に自然派が進化していることを実感した。

そして、自然派を支えてきたマルセル・ラピールやジュラのピーエール・オヴェルノワなども参加して新旧が入り混じって新しいものを造り上げている現場を見れたのは嬉しいかぎりだ。

特に、ピエール・オヴェルノワは、ニコニコ笑顔でアチラコチラで試飲して若手にアドバイスや勇気づけ指導している姿には感動ものだった。
尊敬すべき人物だ。
居るだけで会場全体がほのぼのとしてくる徳を備えた貴重な人物だ。
自然派ワインの歴史に残る殿堂入り人物だ。
そして、ミスター自然派と云ってもいいマルセル・ラピエールの存在だ。
今だに、常にブースに立って自ら試飲者のグラスにワインを接ぎ、恐らく何万回と質問された内容の試飲者の問いに丁寧に答えている姿にも感動すると同時に尊敬の念を持たざるを得ない。

********** 壁に芸術あり *********


壁には、リヨンに住む自然派大ファンの画家ドゥニ・ペノが描いた絵が展示されていた。
(画家はムスカデの自然派マーク・ペノ氏の弟)
彼はマルセル・ラピールの醸造所の天井にも巨大な絵を寄贈している。

故グラムノンの友人でもあり元ソムリエとしてもコンクールでは名の通ったサーヴィス人だった。
マーク・ペノに自然派ワインに入る切っ掛けを造った人物でもある。

マルセル・ラピエールの醸造所の天井にあるペノ氏の天井画

宇宙とも太陽ともとれるパワフルな天井を演出している。

**** ボジョレ自然派名手が勢揃い ****

参加醸造家は約40社、半分の30社がボジョレでの残りはシャンパーニュ地方とジュラ地方の自然派を呼んだ。去年はブルゴーニュ地方を招待した。

ニコラ・テスタNicolas TESTARD

PRIEURE ROCHでフィリップ・パカレの後、醸造を担当していたニコラの腕はピカッと光るものがある。今はガメ品種を造るが、ピノへの情熱はさめやらないニコラ、ガメ品種でピノッテと表現されるピノ風味のガメを仕込んだ。
ガメ・プリュス・ガメ・GAMAY PLUS GAMAYだ


親友のシリル・アロンゾの影響もあってガメ品種で造るロゼ・ペティアンのピンク・ラビットだ。爽やかで果実味豊かな自然派の微発泡ワインだ。初夏から夏に飲みたいワインだ。

自然派中の自然派フィリップ・ジャンボン・Philippe・JAMBONだ。

昨年、日本に来日したジャンボン、白ワインを3年間も樽内アルコール発酵をしたり、SO2を瓶詰時にも全く入れないピュアリストだ。
『自然の栽培と自然な造りをすれば、すべてが上手くいく。
醸造中にワインに悪玉雑菌が入ってワインがダメになりそうになっても全く自然に任せている。
ワイン自身が悪玉と戦って善玉が勝利するんだ。
ワイン自身の治癒能力を高める為にも人間が妙な手をかけてはダメなんだ。全くのピュア・ピュアでなければダメだ。』と言い切るジャンボンだ。

三ツ星レストランでソムリエをやっていたフィリップは最初から自然派だった訳ではない。多くのソムリエと同じく普通のワインの勉強をすれば、当然のごとく自然派ファンではなかった。三ツ星のソムリエの立場で多くのグランメゾンの有名銘柄と接する機会も多かった。しかし、心を打たれるワインは無かった。そんな時、ダール・エ・リボとグラムノンのワインを飲んで驚いた。今までになかったワインの風味と体の芯に響くものを感じたワインだった。以来この世界に入りこんだ。

何より夫婦仲が抜群に良い。
2人の息子と一人娘の5人家族だ。
健全な家族が造る健全なワイン。
幸せを分かち合いたい!
フィリップの願いだ。

ジョルジュ・デコンブ George DESCOMBES

モルゴン村の熊だ。というより大きな縫いぐるみと云う感じだ。
その人なつっこい性格から多くの人から愛されている人物だ。
がっしりとした体格と同じようなワインを造る。
ガメ品種とはとても思えないような構成のしっかりしたワインだ。
2007年の難しい年にも関わらず骨格のあるワインができた。
流石デコンブだ!2007年のこのモルゴンには樹齢100年の古木からの葡萄が入っている。

天才肌のシリル・アロンゾのドメーヌ・アンセストラル

多くのアイデアと多くの人脈と行動力で次々と新たな展開を実行している。明らかに次のボジョレーを造り上げる人物だろう。
ボジョレ、マコン、ブルゴーニュの醸造家と組んでアロンゾのアイデアで醸造、熟成をさせて新しいタイプのワインをリリースしている。ラベルの奇抜さとアイデアは多彩な才能がほとばしっている。
サンスーフル(SO2無添加)という名のワイン。
ドンキーホーテと云う名のワイン。訪問客の人気を集めていた。

ボジョレの中では孤高の職人肌のJean-Claude LAPALU

純真でシャイな性格で多くのファンを惹きつけている。
多くを語らず自分のスタイルでコツコツとやるべきことをこなしていくタイプ。
人間的には絶対に人を裏切らない義理人情の深いタイプ。
家族を愛し、友を愛し、みんなでひと時を過ごす時間を大切にしているラパリュだ。

2年前は最愛の妻が病気となったり、醸造所を移動しなければならなかったり何かと苦労した。
今年は奥さんも元気になり家族一丸となり気合いが充実している。
世界最優秀ソムリエのオリビエ・プッシエールにガメを超えるガメだ、と云わしめたラパリュ。

自然派ワイン界のサラブレット、クリストフ・パカレ


マルセル・ラピエールを伯父さんにもち、天才フィリップ・パカレの従兄弟にあたる血筋だ。フィリップとは両親同士が兄弟・姉妹という濃密な血縁だ。
最初は料理のシェフを目指していた。しかし、幼い頃から触れていた葡萄園とワインの世界に戻ってきた。後発でワインを始めるにあたって、当然ではあるがマルセル・ラピエールの全面的な援助のもとで開始した。
勿論、従兄弟のフィリップ・パカレからも全面的、側面的援助をもうけることになった。両者の良いところをそのまま享受することができた幸せ者、ラッキー・ボーイだ。
今は自分の醸造所を打ち立てて完璧に独立した形になった。
クリストフの性格は実に素直であること、そして実にソフトな人あたりである。彼と一緒にいるだけで和んでくるようなところがある。
日本には、自分のこの黒ラベルは初入荷だ。このラベルのモデルはジル・ショヴェ先生の直弟子の一人が使っていたモデルを引き継いだもの。ワインのタイプは彼の性格と同じように実にソフトタッチで柔らかく心身が癒されるスタイルだ。疲れた時にお勧め!


ゆったりとしたお坊さんのような風貌のジャンポール・ブランのドメーヌ・テール・ドレだ。
ソフトな性格の中にキりっと締まった部分も兼ね備えている
ボジョレ南部のAC BOEUAJOLAISに位置していることもあり、ヴィラージ地区とは土壌が全くちがう。粘土石灰質土壌だ。しかも粘土の色が黄色だ。見方によっては黄金色ともいえる。彼の村の家壁はみんな黄金色で
美しい。
北ローヌ、コート・ロッティのジャンミッシェル・ステファンの従兄弟にあたる家系だ。相続でロッティにも畑をもっている。
自然派でもMCをやらない。この石灰質土壌では違うやり方が必要のようだ。持論を持っている。赤は土壌からくる性格が涼しさと構成のしっかりした触感だ。シャルドネはこの地にピッタリの品種だ。ミネラル、と果実味のバランスが抜群だ。赤はグイグイ入る軽快なタイプだ。
ロゼの微発泡ワインがさやかで軽い甘みもあり心地よい。

シャモナール氏
マルセル・ラピエールとは幼馴染の間柄の。マルセルのところに行くと
時々一杯やりに来ている。
人の良い農家のシャモナールさん。数年前に交通事故で息子を亡くて意気消沈しているところを、マルセル・ラピエールに救われた。
ほとんど毎日のごとくマルセルに逢いに来ていた。そんなシャモナールをいやな顔ひとつせず温かく迎えて元気づけていたマルセルが印象的だった。
シャモナールはモルゴンの年代ものを多く持っている。
ガメ品種の年代物を飲みたい方はシャモナールだ。
見かけはちょっと怖そうだが、人の良い農家のおじさん、って云う感じの気さくな人だ。

***** 他の地区の自然派の名手 *****

パワフル・シャルドネの若大将フィリップ・ヴァレットPHILIPPE VALLETE

MACONのシャントレ村の丘の上に醸造所を構える。
急斜面の畑を自然栽培を実践して、俺の畑には微生物がいっぱい生息している。と吠える。
地表から10センチ下はロッシュ・メール(元海底だった岩盤)があり、バレットの葡萄木の根はその岩を打ち破って入り込んでいる。ワインのパワフルなミネラル感は
この土壌から来ている。勿論、フィリップのパワフルな性格も反映されている。
熟成中、ウイラージをしないヴァンジョーヌ風ワインもあり。

マコンの爽やか新風ドメーヌ・コンビエ、DOMAINE COMBIER

昨年、醸造所を理想的な小さな山あいにある小川の畔にあった石造りの家を購入して引っ越した。地下にカーヴもありワインづくり、熟成にも理想的な条件が備わった。以前は自宅の一部を改造したガレージのようなところだった。
アルノーは本当にこの醸造所を見つけて喜んでいた。特に樽熟成を小川の横にある涼しい条件が備わっているからだ。
ヴァレットのパワフルさに優しさを足した感じのシャルドネ。
自然な造りへのこだわりはフィリップ・ジャンボン級だ。

オヴェルノワを任されたエマニュエル・ウイロン

自然派と云えば、伝説的な存在になっているピエール・オヴェルノワから認められ、ドメーヌの後継として選ばれたエマニュエル・ウイロンだ。
もの静かでじっくり考えてコツコツ動く働き者のエマニュエルだ。
弟と妹をドメーヌに迎い入れて3人で栽培、醸造を行っている。
ピエール・オヴェルノワも安心して任される人柄だ。
大物ドメーヌを引き継ぐのは何かと比較されて難しいものだ。
プレッシャーに負けずに頑張ってほしい。
何故なら、我々自然派愛好家が飲み明かした最後に飲むワインは決まってオヴェルノワのワインだ。どんなに酔っぱらっても飲めるのはオヴェルノワだけだ。

新進気鋭のシャンパーニュの星、ジャック・ラセーニュJACQUES LASSAIGNE

最もシャブリに近いモング村の丘の斜面に醸造所を構える。
コート・ド・ブラン・ド・ブランのクレエと呼ばれる白亜の石灰質岩盤が南下したこの丘に再度地表に現れた土壌だ。
しかもシャンパーニュの最南端に位置することもあり太陽の強さが自然な葡萄の糖度、熟度を無理なく上げることを助けてくれる。妙な補糖をやる必要がない。本当に自然に造れるシャンパーニュの条件を備えた希少な立地条件である。まさに自然派中の自然なシャンパーニュだ。