年末恒例の試飲会。アンジュ・コネクションが12月12,13日の週末に開催された。ANGERSアンジェの街を中心に点在する若手自然派醸造家、約20社で形成されている自然派グループである。年に数回試飲会を開く。
また、若手は金銭的に余裕がなく農機具も思うように購入できないのが現状。そこで、このグループでは農機具を共同で購入して数社で共同使用したり、農繁期にはお互いに農作業を協力し合いながら行うという若手アソシエーションである。
ロワール地方のアンジェ地区は自然派醸造家同志の横の関係が素晴らしく結束してる。こんなに理想的にまとまっている地方は少ない。

若手の次世代型の自然派醸造元が多く育つアンジェ


EN JOUE CONNETION、このグループはオリビエ・クザンの息子バティスト・クザンが中心となって形成された。バティストは20歳の時に一年間日本に滞在したことがある。銀座のヴァンピックルに半年、大阪のパッション・エ・ナチュールで半年修業した。自然派の初期段階の時、日本が自然派を支えたこともよく知っている。日本通である。


アンジェ地区の自然派と云えばオリヴィエ・クザン、マーク・アンジェリ、ルネ・モスという古参の醸造家達が今の自然派を築いてきた。
彼らと云えども、当初は自然ワインを造る為の、自然栽培や自生酵母だけで、SO2無添加での醸造を手探り状態でやっていた時期があった。
揮発酸の異常な上昇やお酢になってしまったり、多くの失敗を重ねてきた。
昔はビオ香と云われたり、やたらと臭いワインが多くあった時代だった。
そんな痛い失敗を繰り返してきた。そのお蔭でやっと現在は、クリアでスーット体にしみわたっていく自然派ワインを確信をもってできるようになった。

自然派の造りが安全にできるのが当たり前の世代の出現

最近の新人は、古参のところで研修をしたり、失敗をしないで造る方法を継承して、最初から当たり前の如くに自然派ワインを造ることを知っている世代である。 最初から、自然派ワイン造りで、やってはいけない事、気をつけなければいけない事を熟知している。これは凄いことなのである。

コート・ド・レイヨン近辺、朝の恒例風景の霧


前日の12月11日にアンジェの街に着いていた。この種の自然派試飲会は午前中が勝負だ。特にアンジュは自然派ファンが多い。午後になると会場が人で溢れて、ブースの前までたどり着くだけでも時間がかかる。だから10時の開場前には入ることにしている。ホテルを駅前にとった。昨夜は自然派ワインビストロでチョット飲み過ぎた。まだアルコールが若干体内に残っている。自然派ワインばかり飲んだから二日酔いはない。心身ともに快調である。残留アルコールで勢いがついている。
アンジュの街から南に車で移動した。コート・ド・レイヨン地区に近づくと霧が濃厚になってきた。秋冬、この辺では毎朝の如くに霧が発生する。この霧のお蔭で貴腐菌が発生する。コード・ド・レイヨンと云えばキリっとした酸を備えた貴腐ワインが存在する。レイヨン川の湿気のお蔭だ。SO2添加の少ない甘口の自然派貴腐ワインは最高に美味しい。すべてはこの霧のお蔭である。

今回はパッション・ド・ヴァンの若手キショとやって来た。アンジェ駅でレンタカーを借りてキショの運転でやって来た。アンジェの中心から約20分程で小さな村RABLAY SUR LAYONラブレイ・シュール・レイヨン村に着いた。コート・ド・レイヨン地区のど真ん中の村である。会場は村の公民館だ。


さあ、戦闘開始だ。入場料10ユーロを払って会場に入った。 10時キッチリに着いた。まだ、すべての醸造家が来ていない。時間に真面目な醸造家だけが準備をしていた。これを見ただけで醸造家の性格がよく分かる。 几帳面な醸造家は時間にキッチリと来て、もう試飲準備が完了している。 これだけでも、ある程度のワインのスタイルは理解できる。 気の早い入場者が何人か来ていた。

自然派の宝庫・アンジュに新しい風!
STEPHANIE ET VINCENT DEBOUTBERTIN*ステファニー・エ・ヴァンサン・デブベルタン


ノルマンディー出身の二人、ヴァンサンとステファニーはパリの大学時代に出会って以来ずっと一緒。ヴァンサンはエネルギー関連の研究をして風力エネルギーの仕事をやっていた。二人とも自然が大好きで自然の中で働く仕事をしたかった。自然派ワインが好きだった。特にスーット入ってしまうスタイルのアンジュのワインが好きだった。マーク・アンジェリーやオリビエ・クザンの元で研修した。そして2012年にワイン造りを決意して醸造元を設立。 3ヘクタールの小さな畑を庭園の如くに丁寧に世話をしている。
最初からビオ栽培。多くの若者のように、自然環境を壊したり、飲む人達の健康を害するようなワイン造りをしたくなかった。自然栽培・醸造が最初から当たり前の世代である。マーク・アンジェリーやオリヴィエ・クザンなどの諸先輩が切り開いた自然派の造りを継承して、普通のワイン造りとして当たり前の如くに自然派ワインを造る世代の自然派が多く誕生している。その優等生がこのデブベルタンである。初リリースか素晴らしい品質のワインを造っている。

1-L’AUNIS ETOILE オーニ・エトワール ★★★


スーット体に入ってしまう果実味と軽やかなワイン。今、ピノ・ドニス品種が自然派ワインファンの中で静かなブームとなっている。マサル方式の55歳の大きめの葡萄房からは果実味タップリの軽やかなジュースが絞れる。盆栽のように世話をして12ヘクリットル/Hに収穫量を抑えるとシスト土壌のミネラル感がスカッとした透明感を演出してくれる。自然酵母でセミ・マセラッション発酵。3~5年の古樽で12か月のシュール・リ状態で熟成。オリの旨味がワインに溶け込んでいる。

2-ACHILLEE アシレ


25歳のシュナン品種。リオリットと呼ばれる堅い石の土壌。シストのような真っ直ぐなミネラル感を演出してくれる。キリっとした酸の中にソフトな果実味。古式の垂直プレスでゆっくり搾ると優しいタッチに仕上がる。自生酵母発酵。そして、古樽で1年のシュール・リ熟成。オリの旨味がワインに溶け込んでいる。フィルターなし、SO2添加なしの超自然なソフトな優しいタッチの白。

3-LE SALTIMBANQUE 14  ル・サル・タンバンク 14


樹齢60歳のソーヴィニョン品種100%。14年は7,8月と天候が曇りがちで湿気が多かった。しかし、9から10月にかけて晴天が続き一挙に葡萄が熟した。5~8年の古樽の中で自生酵母発酵、そのままシュール・リで樽熟一年間。熟したモモ風味の甘味もあり、シストのスッキリ感が抜群。

自然派ワイン造りに無我夢中の女性CHARLOTTE BATTAIS *シャルロット・バテ


ブルターニュ地方出身のシャルロットは、偶然にアンジェの葡萄園にたどり着き自然派ワインに巡り合って、この世界にのめり込んでいった。アンジェの自然派醸造家達の人間的な繋がり、助け合う姿に感動。自分もワイン造りに人生を賭けたかった。
2008年にマーク・アンジェリーの援助で100歳の古木シュナンの畑を借りてスタートした。今はその畑も返し、セレクション・マサルの100歳のグロロ品種0.5ヘクタールにすべてを賭けているシャルロット。0.5ヘクタールだけでは生活が成り立たない。勉強も兼ねてオリビエ・クザンのところで働いている。自分の造るワインに対しては一切妥協はしない。自分の納得しない内は絶対に出荷しない。

1- LE PONTAIL 12 ル・ポンタイ 12 赤


12年は太陽が穏やかだった。11度前後の軽やかなワイン。除梗なしの葡萄房丸ごと発酵のセミ・マセラッションカルボ醸造。勿論、自生酵母のみ、ピジャージを2回ほど実施。SO2は一切いれないナチュール。醸造は自然に任せる、強制的なテクニックは一切しない。12年は残糖が残り、アルコール発酵に3年を要した。15年の10月に瓶詰。500本のみ生産。

2 – LE PONTAIL 14 ル・ポンタイ 14 赤


14年も太陽が少なかった年だ。アルコール度数も11度と軽快で、キレイな酸が心地よい。 自生酵母、セミ・マセラッションカルボ醸造、SO2はゼロ、ゼロ。超ナチュレルな造り。 ロワールで太陽が少なかった年の赤は、果実味を残すか、マセラッション・カルボ醸造のメリットを出してほのかな果実味があればキリっとした酸も生きてくる。500本のみの生産。

アンジュの若手の中心 BAPTISTE COUSIN *バティスト・クザン


お父さんのオリヴィエ・クザンも若い時に自家製のヨット船で世界中を周っていた。長男のバティストもそれに負けじと日本にも1年ほど滞在、南米と世界中を周って地元アンジェに帰ってきた。
日本にいた時は単に若いフランスの若者という感じだったけど、最近のバティストはキリっとしまって責任感ある自然派をリードする醸造元当主という威厳のようなものが備わってきた。お父さんのオリヴィエ・クザンは醸造が終わっると半年間はヨット船で世界中を廻る旅に出てしまう。一部のカベルネ・フランの畑だけを残して、すべてバティストが引き継いで独立。LE BATOSSAYル・バトセを設立した。
造りはオリヴィエ・クザンから引継いだ。 その上に、バティストの感性を載せて 独特のスタイルを築いた。会場でも超人気ブースだった。なかなか近づけない。

1- PIED ピエ2014 ・白ワイン


シスト土壌の60歳のシュナン品種100%。収穫後グラップ・アンチエールと云われる葡萄房丸ごと発酵で4日間タンクで醸し。その間ピジャージなど一切手を加えない。この醸し期間に皮を柔らかくし、ゆっくり時間をかけてスムーズにプレスができる。上品なジュースが絞れる。
(プレス機は彼の曾祖父から代々受け継げられた垂直型)プレス後、再びタンクに入 れ一カ月間アルコール発酵。・アルコール発酵が終る少し前に樽入り。アルコール発酵の最後とマロラクチック発酵を樽で行う。1年間の樽熟成。主に6-7年の古樽。この年は500Lの2年樽も二つ使用。2015年11月に瓶詰め。・2014年は湿気の多い年で色んな面で苦労した。特に時の選果作業が大切な年。約2000本生産

2- MARIE ROSE マリー・ローズ 2014 ・ロゼワイン


23歳のグロロー・グリ100%。土壌は主に「リモン」質土壌に粘土が混じっている。石灰は少ない。 リモンはシルトのこと。粘土と比べて粒が大きくミネラル感をワインに与える。
・この畑からは二つのキュヴェが生まれる。第一回目の収穫がパペット・ナットになる。酸を含んでいて微発泡ワインには完璧。もう少し葡萄を熟させて、遅い第二回目の収穫がこのマリー・ローズ。
・収穫後タンクで7日間、葡萄房丸ごと発酵と醸し、その後、・プレスしてタンク入れ、タンクで6カ月間発酵に熟成。4月に瓶詰め。なんとアルコール度10.5と軽やかで超飲みやすいワイン。
・2014年は湿気が多く、葡萄がかなり傷んでたり腐っていた。選別作業がすごかった。
・おばあちゃんのように優しいワイン。感情たっぷりでバラの香りがする軽いワイン。
・このキュヴェは生産量が少なくまだ日本に行ってない15年からは量が増えたため日本行きも可能?

3 – PUPPET NAT パペット・ナット 2014  白微発泡ワイン


・23歳のグロロー・グリ100% マリー・ローズと同じ畑。つまり土壌も同上。 同じ畑の葡萄を酸がまだ残っていて糖度があまり上がっていない第1回目の収穫を使用。 アルコール度を上げないためと、発泡ワイインに大切なフレッシュさを表現させるには酸味が必要、 適度な酸を残す為に早めに収穫する。10月の頭に収穫。・2014年は湿気が多く、葡萄がかなり傷んでたり腐っていた。選別作業がすごかった。 収穫後ダイレクト・プレスしタンク入れ。
・発酵が始まって3週間後の糖度リッター20グラム辺りに 瓶詰め。・6カ月間瓶で二次発酵。・3月にデゴルジュマン。

4 – DYNAMITAGE ディナミタージュ 2014


・ガメイ100%
・同じ畑に二種類のガメイが栽培されている。 畑には25列あり、その内7列はガメイ・ドゥ・ブーズというガメイ・タンチュリエ。タンチュリエとは「染める」という意味であり、果肉まで色がついている葡萄のこと。セパージュ・タンチュリエはワインの色を必然的に濃くする。 残りの18列は通常のガメイ。樹齢19年。1996年に植えられた。畑は馬を使用して耕している。土壌は砂質土壌。・収穫は10月の頭。この畑が一番最初に収穫。
醸造は、除梗なしの葡萄房丸ごと発酵槽へ。12日間の醸し、ピジャージュ無し、アルコール発酵が終る少し前に発酵槽から出し、葡萄をゆっくりプレスする。
曾祖父から代々受け継げられた垂直型プレス機でゆっくりプレスする。2年から8年の樫の木の樽に入れる。・樽でアルコール発酵を終え、マロラクチック発酵を行う。6カ月後の四月に瓶詰め。 ★古式の垂直式プレスが最も優しく絞れる重要なカギ。

5 – OUECH’COUSIN ウエッシュ・クザン


・「ウエッシュ・クザン」は若者が友達同士でそのまま使う言葉であり、スラング。英語の「What’s up bro ?」に匹敵する。日本語だと「よ!ブラザー」。「ウエッシュ」は北アフリカ系のアラブ語からきて「どうだい?」みたいな感じ。クザンはフランス語で「いとこ」という意味であり、英語の「ブラザー」に匹敵し、家族みたいに仲がいいことを意味している。またクザンは蚊に似た足の長い虫の名前でもあり、ラベルの元になっている。・グロロ・ノアール品種100%、樹齢43年。土壌は砂質。
・畑は馬を使用して耕している。・醸造 破砕無し、除梗無し、ピジャージュ無し。グラップ・アンチエールで大体二週間の醸し。
醸し中に何回かデレスタージュを行う。葡萄をゆっくりプレスする。古式の垂直型圧搾機で葡萄をゆっくりプレスする。・そのままタンクで6カ月間発酵と熟成を行い5月の頭瓶詰め。・樽は無し。畑は全部で3.5Ha。馬を使用して耕している。

新旧の継承期間にあるクザン家

ワインは人だ。人の経験に基づいた磨きあげた熟練技がスムーズに継承されることは 実に重要なことだ。オリヴィエの栽培に関する実践技は達人と云ってよい。ビオ・ディナミのニコラ・ジョリーやマーク・アンジェリも当初の実践作業はオリヴィエが代わってやっていた時期があった。馬で耕す技に関してもオリヴィエ・クザンの指導が無かったら、ロワールに今のように広まらなかっただろう。彼から指導を受けた人達がフランス中に広めていった。
醸造に関しても、収穫された葡萄をみて、その年の栽培期間の状態から判断することが ポイントになる。カモシの期間の決定、酵母菌の働きスピードなどすべて栽培期のことを逆算してオリヴィエは決定している。オリヴィエの実践に基づいた知識は膨大だ。



無形世界遺産と云い。それらを一つ残さず吸収しようとしているバティストがいる。
そんなオリヴィエを支えてきたのが、天然な明るさを備えた奥さんのクレールだ。
偉大な男、偉大なワインの影にはいつも女性がいる。

★冬のこの時期はランド・ドゥ・ブルターニュという古い種類の小型羊を10匹を畑に放している。小型なので葡萄の木の下を自由に走り回り、いい加減に雑草を食べ自然な肥料も土に与えてくれる。

幻のグリオット100歳の古木畑を引き継いだDAMIEN BUREAU*ダミアン・ビュロー

 

ダミアンは地元コート・ド・レイヨンの出身。自然派との出会いは地元にいたあのミティークな存在のグリオットだった。人間的にもワインのスタイルについても他のワインとは全くの別物。規格外の人物、規格外のワインだった。この出会いは若きダミアンにとっては強烈なショックだった。一緒に働きながら学んだ。いきなり規格外のワイン造りを学んだダミアンは外の世界、他の自然派のワイン造りも知りたかった。近所のジョ・ピトン、ルネ・モスでも学んで磨きをかけた。他の地方ではどうなっているのか?知りたかった。
ブルゴーニュ、ジュラ、南仏のルシオン、コルシカ島、まで旅しながら全く違うミクロ・クリマの自然派を学んできた。 そして、地元のアンジュに戻り、グリオット解散の折に、幸運にもグリオットの最良の100歳の古木をグリオットより引き継いだ。学んだことを、生かす時期の到来だ。明日のアンジュを代表する醸造元になりつつある。

1 – LA POIVROTTE ラ・ポワヴロット


グリオットから継承したサン・ランベールのピノ・ドニスPinot d’Aunis100% ロアール地方の古種。 これが樹齢100年級の古木。シスト土壌、9月の頭に収穫。グラップ・アンチエールで15日間のタンク醸し。ピジャージュ無し、古い垂直プレス機で圧搾。再びタンク。・冬の間タンクで発酵を終え、春にスーチーラージュを行う。そのまま瓶詰め。・亜硫酸ゼロ。フィルターなし。白胡椒にイチゴ、さくらんぼの香り。ミネラル感豊で果実味もたっぷり、アルコール度も10度つい沢山飲んでしまう。

2 – EMILEエミール


・エミールはダミアンの祖父の名前。14年が一年目の新キュヴェ。2011年に以前から自分で栽培していた畑を購入しT。グロロー90%、ガメイとガメイ・ドゥ・ブーズの2種類が残りの10%、ガメイ・ドゥ・ブーズは果肉まで真っ赤な品種、ワインの色が濃くなる。樹齢は35歳、・シスト土壌。グラップ・アンチエールで3週間タンク醸し。ピジャージュ無し、古い垂直プレス機で圧搾。再びタンク。・冬の間タンクで発酵を終え、春にスーティラージュ。更に1カ月まって6月に瓶詰。亜硫酸ゼロ。フィルターなし。

3 – SAPERI POPET サペリ・ポペット   微発泡ワイン 弱甘


シュナン100%、・樹齢40年、・シスト土壌、・収穫後ダイレクト・プレスし、タンクへ。・タンクで発酵を始める。糖度リッター20-24グラム辺りで瓶詰めして瓶内二次発酵。手動でデゴルジュマンを11月に行う。

どこまでも透明感 DOMAINE DE L’ECHALIER, NICOLAS BERTIN*ドメーヌ・ド・レシャリエールのニコラ・ベルタン


畑作業が大好きだったニコラ。多くの自然派醸造家と巡り合い。自分も彼らと同じようにワイン7を造ってみようと思った。2008年にアンジュにて設立。最初からビオ栽培、地球を汚すような仕事はしたくなかったし、飲む人の健康の為にも。そして自分自身が飲みたいと思うようなワインを造りたかった。

1- ECHALIER BLANC エシャリエ 白


2001年に植えられたシュナン100%。当時樹齢12年。最初から有機栽培。 土壌は赤シスト「シスト・ルージュ」、2006年に手に入れた彼らの一番最初の畑。・収穫後にダイレクト・プレス。・プレス後 50%がタンク入れ。50%が樽入れ。全部で13樽。主に7-10年の古樽。新樽2個。1年間発酵・熟成。・2014年収穫時前にタンクでアッサンブラージュ。6カ月間タンク熟成。
・2015年春の初頭瓶詰め。6カ月間瓶内熟成。・亜硫酸をゼロ、自然酵母使用。・完成まで2年間かかる。

2- POP SEC ポップ・セック 微発泡白ワイン  ドザージなし


2014年のエシャリエと同じ収穫に同じプレス。14歳のシュナン100%。樹齢13年。土壌は赤シスト、・タンクで発酵を始める。糖度リッター20-25グラムで瓶詰め。1年間の瓶内二次発酵と熟成。・11月末手動でデゴルジュマン。シュナンのコクがあり、スカットと爽やか発泡。

3 -SOUTILLANT ソティアン 微発泡白ワイン ドザージなし


44歳のソーヴィニオン・ブラン100%、シスト土壌、ダイレクト・プレス、タンク発酵糖度リッター20-25gで瓶詰。・1年間瓶内二次発酵。シストのミネラルとクリアな酸でピリッと締まる。

数学者よりの転向・緻密で大胆なワインと人柄 PHILIPPE DELMEE *フィリップ・デルメ


フィリップはブルターニュの先端の街BRESTブレストで数学の先生をやっていた。でも自分の人生を今の生活の延長で終わりたくなかった。このままの人生は考えられなくなっていた。前よりロワールの自然派ワインが好きだった。単に好きというより飲む度に体にも心にも感情にも響いてくるものを感じていた。

« 人生は一度しかない! » フィリップは決意した。09年にアンジェにやって来た。前からよく知っていたBENOIS COURAULT ブノワ・クロの援助でワインを造りだした。最初はナントとアンジェの間を行ったり来たりでの生活をしていた。アンジェでの3年間はキャンピングカーで生活していた。
そして、2011年に意を決して完全にアンジュに引っ越した。フィリップはオリヴィエ・クザンからも多くの事を学んだ、自然な生き方や馬での耕し方など。クザンを尊敬している。クザンに声かかけられればどこでも行く。ワインは自分の好きなタイプのワインしか造らない。スーット体に染み込んでいくタイプのワインだ。勿論、自然栽培、自生酵母、SO2は殆ど使用しない。

15年はオレリアンが共同経営者として入った。アンジェの街で自然派ワインバーをやっていた人物だ。強力な助っ人が入った。栽培も6年目に入り土壌が生きてきた。葡萄の活力が違ってきているのを感じる。
明らかにミネラルからくる透明感が表現されてきた。

そのミネラルをオブラートで包んでくれる果実味や 優しい舌触りに効果のある古式の木製垂直式プレス機も手に入れた。 今日の試飲会でも多くの人が品質に驚いていた。人気ブースだった。

1-TURBULENCE 14 微発泡ワイン白


3区画の畑のシュナン品種(6から35歳)を数回に分けて、熟成した葡萄のみを収穫して、その都度直接プレスして発酵槽に足していった。理由はビン内発酵時に糖分を足したくないので十分に熟させて糖度が上がってから収穫。タンク発酵の残糖21gになった時点でビン内に詰める。ビン内発酵も自然酵母のみ。ほぼ1年間のビン内発酵・熟成。ルミュアージ(オリをビン口に集める作業)デゴルジュマン(ビン内のオリを取り除く作業)もすべて手作業による贅沢な手造り発泡。色合いは黄金色に近い輝き、シスト土壌からくるミネラル感がスキっとした酸を引き立ている。 爽やかで真っ直ぐな微発泡ワイン。

2- Les ch’nins on boit, et la caravane passe 14 レ・シナン・オン・ボワ・エ・ラ・カラヴァンヌ・パス


14年は7,8月の太陽不足による熟成の遅れで遅熟だった。10月に収穫。3つの畑区画のシュナン品種を2回に分けて収穫。1回目は熟している葡萄のみ収穫、数日後に残した葡萄が熟してから収穫という2倍の手間暇がかかっている。最初タンク発酵、発酵途中で75%は樽へ移動、25%はタンク発酵。そのままシュール・リで1年間の熟成。14年は綺麗な酸の年だ。その上にシスト土壌のキリっとしめた舌触り、まさにシスト土壌ジュースという感じ。どんな脂っこい料理でもサラっと流してくれるキリっとした白ワイン。目が覚める感じ、ソーセージやシャクトリーでアペロによい。

3- Les vieux de la vieille 14 レ・ヴュー・ド・ラ・ヴィエイユ


14年からの新キューヴェ、35歳のグロロ品種50%、35歳のカベルネ・フラン50%。 シスト土壌、除梗なし、葡萄房丸ごと発酵槽に入れるセミ・カルボ醸造、最初の葡萄をピジャージしてジュースだす。自然酵母で発酵開始3日目にピジャージをする。カモシ期間は1週間。古式の垂直式プレスで絞って古樽(3年樽)に入れて、樽でマロラクティック発酵。そのまま1年間の樽熟成。

4-EN VOITURE SIMONE アン・ヴォワチュール・シモンヌ


11年産のグロロ品種のワインと13年のカベルネ・フランをアサンブラージしたワイン。両方とも葡萄房丸ごと発酵槽に入れるセミ・マセラッション・カルボニック醸造。 勿論、自然発酵のみ。アルコール度数が10度のみで軽やかでグイグイ入ってしまう心地よいワイン。

柔と剛に挑戦する GAR’O’VIN *ガロ・ヴァンのCEDRIC GARREAU*セドリック・ガロ


地元アンジュ生まれのセドリック・ガロ。子供の頃から農業に興味を持っていた。いつかワインを造ってみたいと夢を見ていた。 でも若きセドリックはもっと違う世界も見てみたかった。
ニュージーランドやアイルランドなど数年間は世界を旅して滞在して色んな事を学んできた。 そして、地元アンジュに帰ってきたセドリックはPITHONピトン氏のところで修業した。
そして、2010年にGAROA・VIN醸造を設立した。 地元アンジェの豊富な品種構成、シストを中心に豊富な土壌を十分に生かしたかった。
勿論、最初から自然栽培。自然醸造である。 何も足さない、何も引かない。葡萄、土壌の自然な風味を素直に表現したワイン造りを目指している。
自然酵母、亜硫酸も極小。もしくはゼロ。その為には、いかに健全な葡萄を発酵槽に入れるかに全神経を集中している。

LUNATIC 2014 リュナティック 白


シュナン品種100%、樹齢50歳。赤シスト土壌。14年は葡萄の熟度が不足していた為、2回に分けて収穫した。1回目は熟している葡萄のみ収穫、数日後に、残しておいた葡萄が熟してから2回目の収穫をする、という2倍の手間暇がかかっている収穫後直プレスして24時間のデブルバージ。樽に入れて樽発酵・樽熟成。トースト香が付かないように、内側を焼かないで蒸気を使って造った新樽を使用。10か月の樽熟成。SO2添加しない。

SOMNAM BULLES 2015 ソンナム・ビュル 白 微発泡ワイン


樹齢50歳のシュナン品種100%、赤シスト土壌、LUNATICと同じ畑。15年は3回に分けて収穫。 一回目に収穫した爽やかな酸が残ってる葡萄をタンクに入れて、自生酵母のみで発酵。アルコール発酵中に瓶詰して、ビン内で発酵させてガスを閉じ込める。12月にリュムアージもデゴルジュマンもすべて手作業でやる。



SOMNAM BULLES ROSE 2015 ソンナム・ビュル・ロゼ 微発泡ワイン


33歳のカベルネ・フラン100%、シスト土壌。収穫後、直接プレスにかけてジュースを発酵槽に入れる。 自然酵母で発酵、発酵途中でビンに詰める。リュムアージもデゴルジュマンも手作業で行う。 SO2の添加もないナチュールな果実味が心地よい。シストからくるミネラル感が軽やかな泡でより爽やかさ感じられる。

LULU BERLU 2014 ルル・ベルリュ 赤


サンベール区画の樹齢38歳のカベルネ・ソーヴィニョン100%、シスト土壌、収穫を遅らせてカベルネ・ソーヴィニョンがよく熟すまで待った。除梗なしの葡萄房丸ごと発酵槽に、セミ・マセラッション・カルボニック醸造。ルモンタージもピジャージも一切やらない。できるだけ優しく柔らかなタンニンをアンフュージョン(茶出し)のごとくに抽出した。21日間のマセラッション。カベルネ・ソーヴィニョンをカルボ醸造からくる軽やかさと果実味の調和が心地よい。

ANJOU ROUGE 13 アンジュ・ルージュ


カベルネ・フラン100%、樹齢80歳の古木が70%、33歳が30%。除梗して、破砕なしない。 つまり葡萄の粒はそのまま潰れていない(グレン・アンティエールと呼ばれる)状態で発酵槽へ、入れる。葡萄粒の中で酵素が働いてマセラッション・カルボ醸造のような果実風味が醸される。ジュラ地方の醸造家がよくやる手法。ピジャージは4日に一回。一か月間のカモシ。古樽(2,3年)にて10か月の樽熟成。アンジェでは皆が軽快でグイグイ飲めるタイプを造っている。そこでセドリックは単なる果実味と軽いワインだけじゃなく、確りした酒質を備えた熟成にも耐えられるような赤をも造りたかった。

ANJOU VILLAGE ROUGE 14 アンジュ・ヴィラージ


38歳のカベルネ・ソーヴィニョン100%、LULU BERLUルルベリュの葡萄と同じ葡萄。同じ葡萄で全く違う醸造に挑戦。 こちらは、除梗して破砕しないグレン・アンティエール(ぶどう粒丸ごと発酵)でセミ・マセラッション・カルボニックに最も近い状態で一か月間の発酵・カモシ。ピジャージも実施。勿論、自生酵母のみ。古樽(2,3年)にて10か月の樽熟成。セドリックはアンジュのカベルネ・ソーヴィニョンで確りしたワイン質を備えたものを造りたかった。なおかつ自然派の果実味も残したかった。両方の造りを折衷した手法をとった。熟成にも耐えられるスタイルにしたかったのである。一歩進んだ自然派かも。

EN JOUE CONNECTION アンジュ・コネクション2015 レズメ


お昼はRABLAY SUR LAYONラブレイ・シュール・レイヨン村にある名物ピザ屋へ行った。こんな小さな村に自然派ワインしかない素晴らしいピザやがある。自家製の釜土で焼くピザに地元自然派ワインが飲める最高の店だ。アンジェの醸造元巡りに来た時は必ず寄る店だ。この村で自然派ワイン見本市とは嬉しいかぎり。疲れた舌を美味しいピザで癒した。



アンジェ自然派は凄い
すべてをレポートする事はできませんでしたが、皆、熱いパッションをもって、それぞれの個性を生かした、本当に素晴らしいワインばかりだった。
何より、造る人も、集まってきた人、 アンジェの自然派ワインに魅せられた人達が、一つの会場に集まり、暖かみのある空気が一杯だった。
今日の日があるのも、本日は若手からの招待醸造家として参加していたパトリックの様な古参先輩たちが築いた道があるからだ。皆が先輩を尊敬している。
皆皆がハッピーな雰囲気がありました。

こんなパッションとハッピーが一杯詰まったアンジュ・ワインは日本にピッタリだ。