4)マルセル・ラピエール*Marcel Lapierre


故マルセルさんの息子である、Mathieu*マチューさんが私たちを迎えてくれました。
実は前日にも少し寄ったのですが、お昼をご馳走してもらい、この日もまずはお昼から・・。


私たち働いていないのに、申し訳ない~と思いつつも、美味しすぎる昼食に舌鼓をうちながらニコニコして しまいました。
なんでも、マチューさんはもともと料理人のため、収穫中にお願いしているシェフもなんとパリの三つ星☆☆☆レストランでもともと働いていた方にお願いしているそう。テット・ド・ヴォーという、
牛の頭のお肉でかなりビクビクしながら一口・・・・・・・・おっ美味しい!!

ラピエール家をマチューさんと共に支える家族


マルセル亡き後のラピエール家は残った家族全員で醸造所を支えています。とくに頼もしいのは、故マルセルの奥さんでもあり、マチュのお母さんでもあるマリーさん。
マルセルと二人で自然派ワイン界を育ててきました。
今も現役でラピエール家の原点を支えています。


2015年は長女のカミュさんが醸造全般を管理。
マチューの良き右腕的存在です。


末っ子のアンヌはラピエール家の太陽。
明るく、周りの雰囲気を盛り上げ、 必要な個所に現れて援助しています。


9月11日に収穫がすべて終わり、今はマセラシオン・カーボニックと圧搾作業。
伝統的な直下型圧搾機を2台持っているため、50個のワイン大桶にたっぷりはいているブドウを交互に圧搾できるそう。

「収穫は終わったけど、まだまだ気は抜けないよ。むしろこれからだ。」とマチューさん。


ブドウ収穫は終わったものの、酵母菌が天候や気圧に影響されることがあるため、酵母と発酵の状態の管理を綿密にし続けなければいけないとのことでした。 なんとマチューさん、醸造所近くに自前の研究室を作っており、自生酵母やブドウジュース内の成分を常時管理されているそう。顕微鏡まで持っているのはすごい!

普通のヴィニュロンと同じく、ワイン成分分析自体は近所の研究所に頼んでいるそうですが、「この機材があればより細かく、すぐに自分の目でワインの状態を確かめられるからいいんだ」とマチューさん。
こだわりがうかがえますね!

2015年産は?





少し時間をいただいて、マチューさんから日本の皆さんへのメッセージビデオをとらせていただきました。
「今年のブドウはとても早熟で、収穫も早く終わったけれど、ブドウの質が目を見張るほど良くて、ここまでレベルの高い年は久しぶりだよ。

ここにある全てのタンクはブドウで一杯になっていて、醸しがはじまっているけれど、例えばこのブドウの房も、食べてみると味わい・アロマもしっかりとしていて、素晴らしい年であることがはっきりとわかる。セミ・マセラシォン・カーボニックも例年に比べて長く、このままいけばとても美味しいワインが出来上がるはずだよ。

モルゴン2015年のパラディ(圧搾直後のブドウジュース)も味わい深くて、とても「(マチューさんの誇らしげな日本語で)おいしい!^^」。
骨格がしっかりしていて力強く、果実味があふれているね。
皆さんには、もし1月に来てもらうことができれば、2015年の美味しいワインをぜひ味わって頂きたいです!」

5)ジャン・クロード・ラパリュ*Jean Claude Lapalu


今回キショウが特に楽しみにしていたのがラパリュ!伊藤さんと一緒に飲んで、その美味しさに感動したそう、当主のジャン・クロードさんに会うのもとっても楽しみにしていました。
通常より5週間早めの8月25日頃に収穫が始まったというラパリュですが、場所がとっても美しい景観のなかで、こんな場所に生まれたというのが羨ましくなってしまいます。

広い醸造所に入ると、コンクリートタンクやステンレスタンク以外に、アンフォラを発見! なんでも友達のヴィニュロン同士でアンフォラのグループを造っているらしく、自分で注文したアンフォラ以外にも他のヴィニュロン から譲り受けたものも多いそう。(アルマ・マターのキュヴェはアンフォラにて醸造。その年のブドウの質によってアッサンブラージュの比率等を調整しているようです。)




ちょうど行ったときは、直下型圧搾機で1回目のプレスが終わり、ちょうど2回目のプレスに備えてブドウをかき混ぜるところでした。

マールの切り崩し作業

圧搾した後のブドウをマールと呼ぶのですが、ケーキのようにぺちゃんこに固まったマールを切り取り、崩して、スコップでかき混ぜ、台形状にして2回目の圧搾を行います。
とっても重労働ですが、私も少しやらせてもらいました!
お邪魔かと思いつつ、「ちょっとだけやってみたい」と恐る恐る聞いてみたところ、ラパリュの従業員の方々はとても優しく、快くやらせてくれました!コツを教えてもらいながら、少しずつマールを切り進めていきます・・・。




ジャン・クロードさんいわく、当初はプニュマティック圧搾機でやっていたものの、なんと伊藤さんのアドバイスを受けて、直下型の圧搾機に変えたそう。味の繊細さがぐっと増して味わいがとっても良くなったとご本人も大満足。従業員の人も、大変だけど最高の結果がだせればねとニコニコしていました。なんでも、ブドウの茎や皮がフィルターとなり、自然に濾過した状態になるとのこと。出てきたブドウジュースもとってもクリアできれいです。




畑の管理も、1960年代の小さなトラクターを引っ張り出して使っているそう。ボジョレーのガメイはゴブレ型剪定のため、通常は大きな機械を通すことができないのですが、ラパリュでは馬と同じ重さのこのトラクターを使って、ブドウ樹への負担を最小限に抑えながら耕しているそうです。
確かに、除草剤を使っている他の畑と比べると、ブドウ樹のいきいきとしたオーラが違います!

ちなみに、ブドウが太陽の光を最大限吸収できるよう、ブドウ樹はゴブレなものの、成長した後はブドウ樹の蔓を上でまとめるそう。
トラクターにも蔓がひっかからないよう、最大限の注意を払っています。
ちなみに土壌はグラニット・ローズ(ピンク色の花崗岩)。

ジャン・クロードさんとお仕事がひと段落した従業員の方々と、わいわい歓談した後は、ジャン・クロードさんのおうちのお庭でテイスティング。
美しいブドウ畑が目の前に広がるテラスは素敵の一言。
こんなお庭のある家にいつか住んでみたい!と夢がふくらむ景色です。

試飲

オー・フォート Eau Forte 2014
お水のようにすいすいと飲めてしまう、バランスがピカ一の一本。ガメイ100%のはずなのに、ピノっている上品な味わいです。
ジャン・クロードさんの繊細な人柄が表れているようです。

ブリュイ Brouilly
ボルドー型のボトルに入ったこちらはタンニンがしっかりと主張してくる一本。10ヶ月の樽内熟成を経て、2014年7月に瓶詰したそうです。


自宅でトマトを造っているとのこと、その甘さと美味しさに感動。
なんでも、ジャン・クロードさんの料理人のお友達から、もしもこのトマトをランジス市場(フランス最大の市場)に出せば、一番高い値段で買ってやるぞ!とお墨付きをもらったそうです。
ワインだけでなく、自分の育てている農作物に対する愛情と情熱が、料理のプロからも認められるなんてすごいですね!
キショウも「キャンディーみたいに甘い!」とびっくり。
思わず顔がほころんでしまいます。

他にも、収穫が終わるとカタツムリ取りに出るらしく、木曜に、収穫を一緒にした仲間とニンニクをきかして食べるんだといい笑顔。

雑談の間も、「日本には以前一回だけ行って、人の優しさに感動したんだ。あと食べ物も大好き。日本にまたいつか行ってみたい!」と熱っぽく語ってくださいました。 とっても優しいジャン・クロードさん、ファンになってしまいました!

6)ローランス・エ・レミ・デュフェートル*Laurence et Rémi Dufaitre

こちらでもすでに収穫終了。ドメーヌに到着して最初に見たものは、圧搾機のなかに人が入ってピジャージュしてる・・・。
もちろん圧搾機は止めているのですが、なんだかナチュラルにすごいことをしていて、はじめてみた光景に衝撃を受けました。 レミさんご本人も、タトゥーがいっぱいで筋肉ムキムキな、ワイルドな方。


一方ワインは軽く微発砲の残る軽快な白、赤もピノ・ノワールのようなタンニンが感じられるブルイィBrouillyなど、果実味・旨みが感じられついつい飲みすぎていそうでした。
彼のワインが大好きというイギリスのワインバーの方々もわざわざロンドンから休日を利用してきており、テラスでワインを囲みながら、カジュアルな話に花が咲いたのでした。

今回ボジョレーは私も初めてだったのですが、まず一番に印象に残ったのが、生産者の方々が本当に手間暇をかけて、畑と醸造所で素晴らしい仕事をされているということでした。私がいうのは差し出がましいのですが、醸造所では、あえて膨大な時間と労働力が必要な直下型圧搾機を使い、畑では薬剤に頼らず人の手による仕事を重視して造っているところ、さらにその仕事の結果がワインの美味しさにあらわれ、果実味のあるピュアで上品な味わいのものが多いと感じました。

ボジョレーのイメージががらりと変わったこの旅を通して、今回行った生産者の方々はもちろん、これからもヴィニュロンの良い仕事っぷりをこれからもレポートしていきたいと思います!

文 Yuri / 写真 Kisho