1996年より、ワイン変革期の30年間弱のひとつの時代をワイン造りに人生をかけてきた造り手、Jean-Baptiste SENATジャン・バティスト・セナさん。その偉大さに触れた感動的なテイスティングだった。(Le vin de mes amis ル・ヴァン・ド・メザミ試飲会より)

時を重ねて蓄積してきた“技”に裏付けされたワインには、試飲会のような雑多の中でも、“おお!”と感動する美味しさと、一朝一夕には絶対に出せない“味わい”がある。

ワインの“味わい”の中には、醸造時のやりかた次第で出せる“味わい”と、そうでないものがある。
つまり長い年月をかけて、畑仕事で健全な土壌を造り、その結果健全な葡萄木が育つ。それにより、多くの要素を含んだ葡萄、果汁ができあがるのだ。

この色んな要素を含んだ果汁を持った葡萄は、一朝一夕ではできない。
セナのワインには、すべてのワインに深味と奥行きを感じる。

軽いワインから濃縮感のあるワインまで、網羅している超ベテラン、Jean-Baptist SENAジャン・バティスト・セナのワインには、感動的な歴史がある。

1990年台の半ば、96年に南仏ミネルヴォワにてワイン造りを始めた。
私とはその頃からの付き合いだ。

ジャン・バティストがワイン造りを始めた頃の写真と、最近のものを比較してみるのも面白い。
ひとつのことに突き進んできた人間の歴史を感じる。ワインと同様に“人間性”そのものが含蓄された深味がある。

ジャン・バティストは学生時代、超エリートだった。日本でいえば東大に匹敵するポリテクの出身でもある。
でもそんな素振りは一切見せない。

子どもの頃よりバカンスの時行っていた先が、南仏ミネルヴォワの醸造家であるお祖父さんのところだった。

お祖父さんと葡萄園に行くのが好きだったジャン・バティストは、若い頃より、葡萄栽培やワイン造りをやりたかった。
パリの都会で人生を送る事など全く興味なかったのである。

勉強もそうだが、ジャン・バティストは何ごとにもやり始めると、とことん突き詰める性格だった。
中途半端なことはやらない。

もう28年間、栽培も醸造も突き詰めてチャレンジしてきた。
一つひとつ挙げたらキリがないので、またの機会に書こうと思う。
そこまでやるか⁉と驚くようなことまで、たくさんのチャレンジと変革を成し遂げてきた。

それらが蓄積した結果が、今、目の前にあるワインの中に詰まっている。

一つひとつが感動の“味わい”、深味、奥行き、やさしさ、飲みやすさがある。
軽快なスタイルから濃縮感のあるスタイルまで造りあげている。
ジャン・バティストが、経験してきた28年間のワイン業界の変化がそのままそれぞれのワインに表現されている。

私にとって、もう涙が出そうになるほど感動してしまうワイン達だった。

1-AMALGAME アマルガメ
この透明感のある色合いを見てください!昔のセナのワインしか知らない人達には想像できないワインでしょう。
グルナッシュ・ノワール40% + グルナッシュ・グリ30% + ピックプール・ノワール10% + クノワーズ10% + テレット10% 
除梗なし全房での発酵で、10日間のマセラッション。

まるで最近の若手醸造家が造ったワインのような感じがある。透明感があってジューシーなスタイルの中にも、ジャン・バティストが育ててきた60歳のグルナッシュ・ノワールからくる深味がある。
軽快でグイグイいけるワインだけど、単なる“軽いワイン”ではない。

2-ARBALETE アルバレット
グルナッシュ90% + シラー10%
樹齢:グルナッシュは30年 + シラーは25年 土壌:粘土石灰質
除梗なし全房での発酵で、12日間のマセラッション。マセラッション期間中は一切触らないので、やさしいタンニンと果実味がソフトに抽出される。それにより、軽快な色合いとジューシーなスタイルでスーと体に入っていく。

3-HORS CHAMPSオー・シャン
グルナッシュ60% + サンソー40%、樹齢:40年、土壌:粘土石灰質、選定:ゴブレ選定
醸造:除梗なしの全房のブドウを、タンクで12日間のマセラシオン。

これは感動もの!ややピノッテしている。今、南仏で人気の品種サンソーが40%も使われている。
サンソーは、もともとは南仏では多く栽培されていた主力品種のひとつだった。
暑さと乾燥に強く、大粒の葡萄でややピノに近い風味を持っている品種。

これら、3つのセナワインは、昔のセナ醸造のワインしか知らない愛好家には、想像できないスタイルのワイン。
繊細な和食に最も合わせやすい赤ワインのスタイルのワインともいえる。

4-LA NINA ラ・ニーナ
100歳のカリニャン30%、60歳のグルナッシュ50%、35歳のサンソー10%、15歳のシラー10%
醸造:除梗なしの全房のブドウを、タンクで12日間のマセラシオン。
   
これも、まさにジャン・バティストのお祖父さんの時代からの100歳のカリニャンが使われている絶品。
除梗なしの全房のブドウを、タンクで12日間のマセラシオン。つまりセミ・カルボニック醸造である。
深味を感じさせてくれるワインだ。

5-ORNIKA Rオルニカ
50歳のグルナッシュ80% + 70歳のカリニャン20% 、土壌:粘土石灰質 、選定:ゴブレ選定
醸造:除梗なしの全房のブドウを、タンクで12日間のセミ・マセラシオン・カルボ。
8ヶ月間の樽熟成 – 2023年5月末に瓶詰。

軽快さを保ちながらも、南フランスの太陽も感じさせてくる赤ワイン。
樽熟成が8か月、中庸の濃縮度と深味、それでいて飲みやすい赤ワイン。

6-LE BOIS DES MERVEILLES ル・ボワ。・デ・メイヴェイユ
これぞ赤ワイン!! 長い年月の積み重ねがないと出ない“深味”“繊細さ”がある。
軽いワインが氾濫している現在、しっかりと濃縮感とワイン質のあるワインも重要である!
100歳のカリニャンが50%、60歳のグルナッシュが50%
醸造:除梗なしの全房のブドウを、タンクで12日間のセミ・マセラシオン・カルボ。
水晶を含んだ粘土石灰質土壌、蔵で最もテロワールが表現される区画で、30hl/hの収穫量。
  
今、まさにこの濃縮感のあるワインが見直されてきている。けれども、昔のような濃縮感とは全く違う。
濃縮感ありながらも、アレっと思うほどの飲みやすさも備えている絶品である。

セナ醸造には、ジュースのように体に入っていくスタイルから、濃縮感たっぷりのワインまで揃っている。
まるで30年弱のワイン業界のスタイルをすべて経験できるようになっている。
共通点は、“飲みやすさ”と“やさしい深味”。

ジャン・バティストと奥さんのシャルロットさんが、この自然派ワインの最大の組織のひとつVIN DE MES AMISヴァン・ド・メザミを主催しているのです。

この二人のphotoを見ていると、時の流れと“継続は最大の力なり”と感じる。

Le vin de mes amisル・ヴァン・ド・メザミ組織を造り上げて、今日まで継続しているこの二人の功績は、自然栽培、本物ワインを造る醸造家達に多くの勇気と影響力をもたらした。