1月8日 ジャンピエール・ロビノがパリに出てきた。
昼食を一緒に食べた。
彼を見る度に“世界で一番幸せな醸造元”と呟いてしまう。
躍動感を体の芯からかもし出している。頭から湯気が出てるのでは、と感じるほどである。
フランスで自然派ワインを語る時、彼を抜きでは語れないほど重要な役割を演じてきた人物でもある。
数年前までは、パリで自然派ワイン専門ビストロを経営していた。
フランス第一号の自然派ワインビストロを始めた男である。
自然派ワインの歴史を最初から見てきた男である。と言うよりも自然派ワインを初期の段階から支えてきた人物と云った方がよいかも知れない。
つまり、マルセル・ラピエールなど自然派第一世代の人達がまだ全くの無名だった頃から、
せっせとパリで自然派ワインの啓蒙活動と販売をして彼らを支えてきたのである。
自然派ワインの生き字引みたいな男である。
だから、彼と食事を共にするのは、色んな話が飛び出してくるから大変な楽しみなのである。
そんな彼は、数年前にビストロを閉めてワイン造屋に転職してしまった。
場所はロワールのジャスニエールである。
自然派を知り尽くしたロビノが選んだ土地である、偶然に選択する訳がない。
ロワール地方でもさらに北に位置するにも関わらず、物凄いパワーを感じさせてくれるワインを造りだしている。
最初はフィリップ・パカレにアドバイスをしてもらいながら始めた。
流石がジャンピエ−ル・ロビノ!!と云いたくなるようなワイン素晴らしくミネラルなパワーと果実味を備えたワインである。
クリスマスが終わった翌日26日に、ロビノから電話が入った。
『ヨシオ、28日にパリに出るけど一緒に昼食でも食べないか?』と元気な声が飛び出してきた。
『樽で寝かしていたワインが出来上がって瓶詰めしたからもって行くよ』
そんな訳で本日28日、一緒に昼食をとった。
流石に自然派の生き字引、面白い話がポンポン出てくる。
記憶に残っている語録を、脈絡なくランダムに列挙しよう。
会話集
ロビノ『今の自然派を造り上げた人物は、第一にはやっぱりジルショ−ヴェ氏だな、でもショ−ヴェ氏には二人の弟子いるんだ。一人はフィリップ・パカレだ。これは皆知っているな。二人目はジャック・ネオポ−ルなんだ。80年代の後半は、彼がボージョレの醸造元に行ってジルショ−ヴェの教えを実践指導していったのだ。だからジャックの功績は絶大だ。 オ−、勿論、フィリップは素晴らしい。』
伊藤『ジャック・ネオポ−ルってどんな人物だったの?』
ロビノ『行動的な人間だ!でもジャ−ナリストが大嫌いだ!ジャ−ナリストが来ると裏口から逃げてしまう!だから表にでることがなかったんだ。ジャックがボ−ジョレを去った96年からボ−ジョレが変わってしまった、と感じるほどの人間だよ。』
伊藤『今度紹介してよ!一緒に飯でも食べよう!』
オビノ『それはいいね!』
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ロビノ『今のAOCはタダの紙切れだ!あんまり価値がない。コミニケ−ションが全く無い。ビオロジック認定協会もだんだん似てきた。あまり価値が無くなってきた。』
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ロビノ『自然派のワインは、変化が激しくよい時、と閉まってしまう時の差が大きいと言う欠点がある。ただそこを揚げ足をとって批判する奴がいる!アホだよ!人生のたった15%の部分だけを見て、その人生を判断してしまうようなものだ!』
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ロビノ『ワイン造りってのは、自分で造ってはじめて分かったけど、誰一人同じワインは造れない!ってこと。サインみたいものだな!年代も変わるとこれも同じワインがつくれない!年代が変わっても一緒だったら、その方が問題だな!どこかに誤魔化しがある。』
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ロビノ『ヨシオ!“RECREATION”という動きはグットアイデアだな!3月には自然派の仲間が20人ほど日本に結集して自然派試飲会をやるそうじゃないか!俺もいくよ!』
伊藤『それは素晴らしいことだ!』

by ITO