姓はクザン、名はオリヴィエ。年は、50代半ば。
ロワールは、アンジュ地方のMARTIGNE BRIAND村にて、ぶどう栽培、ワイン造り行っている。
この男、自然派というより野生派と言っても過言ではない凄い男なのである。しかし、野生派でありながら、温厚で寛大、全てを包みこむ優しさと思いやりを持つ。
この男について、いくつかエピソードを紹介しよう。

<おばあちゃんの魂>
オリヴィエは、若い頃、自分の造った船で、気の向くままに放浪の旅を続けていた。そして、ぶどうの収穫の時だけ、小遣い稼ぎのために、おじいさんの畑の収穫、ワイン造りを手伝っていた。おじいさんは、昔ながらの農法で除草剤や、化学肥料など使わず、畑をしっかりと人の手で耕し、醸造も何も加えず自然な発酵でワインを造り、周辺の村にワインを販売していた。
ある年、その畑のぶどうで、初めてオリヴィエがおじいさんからワイン造りを任せられた年、おばあちゃんが倒れ、容態は、思わしくなかった。ぶどうの収穫中は、結婚や、人の死などは、昔から良くないことであった。
結婚すれば、お祝いで酒を飲み、気分が浮かれ、ちゃんとした収穫ができないし、人が死ねば、気分が沈み、ぶどうの収穫作業どころでは、なくなるからだ。
それを知っているおばあちゃんは、収穫の間、なんとか生きながらえ、最後の区画の収穫が終わった時に、息を引き取ったそうだ。 孫オリヴィエの初ワイン造りを成功させるために、執念で命の火を最後まで
ともし続けたのだ。この、おばあちゃんの魂を背負ったオリヴィエは、この時、このおじいちゃんのぶどう畑を守り続けて行くことを誓った。

<おじいちゃんのワイン造り>
おじいちゃんから譲り受けた畑は、村の教会の真横にある、歴史的にも、遠い昔からぶどうが植えられていた場所である。おじいちゃんの時代は、除草剤も、化学肥料もなく、人間が全て手作業で畑を耕し、ぶどうを育てていた。醸造も、自然酵母で発酵、酸化防止剤などはないので、健全なぶどうを収穫することが、ワイン造りにおいて、何より大切だった。その、ワイン造りをオリヴィエは、そのまま続けている。また、手作業での収穫には、大勢の人間が必要である。そこにひとつの社会ができるとオリヴィエは言う。
みんなで分担して作業することによって、社会の輪ができ、そしてみんなが少しずつ収入を得て生きていける。これを機械で行うと、これらの人間は、効率化の言葉のもとに不要な存在となってしまう。
みんなで仕事を分かち合うこと、生活を分かち合うことが重要なのだ。

<この母親にして.。。>
オリヴィエ・クザンの生活は、エコである。
電気は、太陽電気。車は、菜種油で走るように改造、最後には、菜種油を使うのも資源の無駄と、車は廃車。今や、馬かヒッチハイクくらいしか、移動手段はない。(もちろん、必要あれば、電車、飛行機は乗る)
以前、彼に聞いた話だが、彼の母親が、コート・ダジュール地方の山奥に移り住んだ時のこと、電機会社の人間が電気の開通の営業に来たそうだが、母親はこれを断った。そして、数年が経ち、近くにもポツ、ポツと家が建ちはじめ、またも、電機会社の人間が、電機の開通を安くでやります。と持ちかけたが、またも断った。それから、また数年、周りには、いくつもの家が建ち、電気会社の人間は、無料で、電機開通をすると迫ったが、それでも、この母親は断った。
そして、2002年の大雨洪水の年、この地区の民家の電気はすべて停電。しかし、その中で、1軒だけ、こうこうと電気が付いている家が。。。そう、それが太陽電気のオリヴィエの母親の家だった。

<なぜ馬で耕すのか ?>
オリヴィエは、馬を2頭飼っている。その馬を使って、ぶどう畑を耕す方法を、若い生産者に指導している。
なぜ、馬で耕すのか? 健全なぶどうを収穫するには、健全な生きた土壌が大切なのは周知の事実である。馬で耕すことによって、トラクターなどより軽い馬は、畑の表土を潰さないので、いつでも土壌がふかふかした状態でいられる。次にスピード。馬は、ゆっくりと畑の畝を進む、そのおかげで、人間の目でゆっくりと、ぶどうの状態を確認することができるのだ。今、彼を始めとするロワールの仲間の活動のおかげで、馬で畑を耕す生産者が増えている。


<ワインの価格って?>
オリヴィエにワインの価格の設定の仕方を聞いた。内訳はいたって簡単。従業員の生活費、自分の生活費。以上。。。。何の広告費、次の年のための貯えも無い。この1年みんなで生活するお金が、ワインの価格となっているのだ。何のそれ以上のプラスもなく。
オリヴィエは言う。「ノン・フィルタとうたって、通常ワインより高く売る生産者がいるが、ノン・フィルタということは、フィルタをかける作業をしていない分だけ、逆に安いはずだ」と。
この男に欲というものは、無いのかもしれない。「無心」という状態に近いかもしれない。
そんなわけで、生活は、けして裕福ではない。心配して聞いてみると、彼のワインは、ある時は野菜に代わり、ある時は肉に代わる、また、ある時は。。。彼にとっては、ワインは通貨でもあるわけだ。
ある意味、ワインがあれば、生きていける。失う恐怖や不安というものは、彼にはないのでは無いだろうか?失うような余分な物を持っていないのだから。

<今を生きろ !!!>
私たちのスタッフ、サンドリンヌがオリヴィエの所に訪問した時のこと、馬の上に乗せてくれ散歩に出かけた。落ちることの怖い彼女は、前屈みになり、少々おびえていた。それを見たオリヴィエは、言った。「落ちる事を想像するから怖いんだ!今、馬に乗っている、この瞬間を楽しめ !!!」と。
この一言が、人間オリヴィエ・クザンを象徴する言葉かもしれない。
                       CPV 竹下 正樹

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