バティストのお父さんは、あの自然派のレジェンド冒険家Olivier Cousinオリヴィエ・クザン。
バティストは193cmの大きな体からだけど、私はもう少し小さい頃から知っている。

それに20歳の頃に、日本に半年ほど滞在したことがある。
東京ではAuxami銀座で3か月サーヴィスの仕事を、大阪で3か月Passion Natureで働いていた。
日本でのワイン・サーヴィスを経験した醸造家はいないでしょう。日本語が全く喋れない状況で行ったので、店の皆さんに迷惑をかけたり、怒られながらもなんとかこなしてきました。20歳と若さもあって元気だったので、皆さんに可愛がっていただいたようです。

大変貴重な体験をしました。
それは、日本では、自然派であろうが、しっかり造った本当に美味しいワインなら、問題なく評価する文化があることを知ったことだと思う。当時はまだ、逆にフランスの方が、自然派ワインに対しては厳しい評価の時代だったから。
(お父さんのOlivierは、当時ワインAOP協会と裁判で戦っていた時代だった。もちろん、お咎めなしでした)

オリヴィエのDNAを引き継いだバティストは、日本から帰ってもジッとしていることはなかった。
好奇心旺盛で、いろんなことを知りたくで、いろんな場所に移動して、色んな醸造家と会って交流を深めて学んでいた。
収穫、醸造の時期はお父さんの蔵に戻ってワイン造りをオリヴィエと一緒に働きながら直に学んでいた。

私はバティストの人間としての生き方が大好きだ。
今までのバティストを観ていると、厳しい状況の中でも、プレッシャーがあっったり、厳しい状況の中でも、ジッと遠くを観ながらやるべきことをコツコツやっていく姿が素晴らしい。

常に、ワインでも、生き方でも、諦めることなく、最善を尽くして、より善くしようと実行していく姿勢がある。

2012年に自分の蔵“Le Batossay”ル・バトセ醸造を設立した。
色んなところに行って、色んな人達に逢って学び、オリヴィエからも学んだことを基本に自分なりの表現をしたかった。

放置されて壊れかけていた小シャトーを買い取って、自分でコツコツ改修理して、立派な醸造所を造りつつある。
親譲りの起用さで、畑仕事のあとは大工仕事をして、改修も進み、やっと“蔵”らしい型になってきた。

ロワールの小シャトーなので、ワイン管理に理想的な湿度、温度を備えている地下倉庫を備えている。

時々は、このシャトーで仲間達を呼んで大試飲会を開催することもある。
バティストは、アンジェ地区の若手醸造家を集めた組織“EN JOUE CONNETION”アン・ジュ・コネクションという名前の組織のリーダー役を務めている。

オリヴィエやマーク・アンジェリーやなど先人達が築いた“自然派の宝庫”そしてのアンジェを、さらに活発にさせるべく若手醸造家の仲間達と色んなイヴェント活動している。
バティストはアンジェ地区の重要な醸造家の一人になりつつある。
やっぱりオリヴィエのDNAを引き継いでいるなだろう。最近、顔つきも精悍になってきた。

★ワインの品質の進化に驚く!
今、バティストは4ヘクタールの畑を、3人も費やして精魂を込めて世話している。もちろん、すべて馬で耕し、他の動物達、昆虫、微生物達とも共存するような農業スタイルをとっている。

お父さんの代からの長いBIO栽培のお陰で、根っ子は地中深くに伸びていて、乾燥した時期でも水分を確保しやすい。
お陰で葡萄木自体のライフサイクルが、糖度がまだ低い状態でも、ポリフェノールが完璧に熟すようになってきたのである。これはホントに凄い現象なのだ。どんなにお金をかけて栽培してもなかなか実現しない現象なのである。

つまり、アルコール度数が低くても飲みやすく、果実味やミネラルがたっぷりで酸のバランスも素晴らしいワインができやすくなってきた。いあわゆるFinesse繊細で上品なバランスのワインが畑仕事で得られるようになってきたのである。

土壌中の微生物も活性化している。もちろん、この畑で育った自生酵母のみで発酵。
今年2023年は11月末ですべて順調に発酵が終わっている。

今日は2023年の醸造中のワインと2022年の熟成中ワインを試飲した。
まず、23年ミレジム、ここロワールは非常に特殊なミレジムだった。
雨の時は強烈に降り、暑くて乾燥する時は強烈に乾燥するという両極端の年だった。

そんな難しい年でも、葡萄木がしっかり対応能力を発揮して、アルコール度数が低くても、ポリフェノール系が理想的に熟してくれたのである。高品質で素晴らしく飲みやすいワインになるだろう。

色んな試作を繰り返して、結局、赤ワインはセミ・マセラッション・カルボニック醸造を採用している。
白は直プレスである。

今、バティストが最も気を付けている点は、完璧な欠点のないジュースを得ること。

*Pet Nat微発泡はグロロ・グリ品種35%、カベルネ65%になるだろう。

*OECH’ COUSIN ウェッシュ・クザンは グロロ・ノワール品種をセミ・マセラッション・カルボニックで22日間のマセラッション(カモシ)をやった。低アルコールでも、色んな要素がたっぷりのワインになるだろう。
ブドウジュースのようにスイスイ体に入っていく。それでいてワインとしても要素は充実している。

*Marie roseマリー・ローズ、今年はグロロ・グリ品種が100%で、7日間のマセラッションだった。
もう、今の段階で繊細で透明感があり素晴らしい品櫃。

*シュナン(曽爺さんが植えた古木)は7日間のマセラッションだった。

*Alcab アルカブ2021 樽で熟成中のもので、販売は2024年に予定。
カベルネ・フラン(軽い粘土石灰質土壌)グロロ・グリ、グロロ・ノワール、ガメは砂質、シュナンはシスト土壌
このワインのレベルは、すごいワインです。
熟成中のミレジムをランダムで試飲したけど、どれもワインとして品質が桁違いにアップしている。
最近のバティストのワインは、もうVin Precisionかなり精度の高いワインと云ってもいい。つまりワイン造りの重要な各段階の作業を、“今だ”という時にドンピシャリと正確に実行しない限りできないレベルまでになっている。

バティストは、今後の方針としては、できうるかぎり、熟成して、飲み頃に近くなってから販売するように心がけたい方針だそうだ。色んな条件が揃わないとできないことだと思う。頑張ってほしい。

まだ、経済的にもそんなに余裕がある訳ではないので、醸造機材にしても、少しづつ整ていくことでしょう。
将来が楽しみな醸造家の一人である。