ミカエル・ブージュ


朝一番、ロワール川に沿って車を走らせると、川沿いの草地には深い霧が立ち込めていた。これぞロワール流域のテロワールだと心躍らせながら一番目の訪問先、「ミカエル・ブージュ」へ到着した。晴天ながらまだ肌寒いなか、まだ30歳にも満たない青年、ミカエルが迎えてくれた。自宅の色がこの辺りでは珍しい青い色である理由は、以前の所有者がバカンス用のセカンドハウスとして利用していたからだそうだ。

まず、いつものとおり早速畑に向かった。トゥールから東南東に約50kmほど離れたファヴロール・シュール・シェール村にある彼の畑は、標高が120mと高く、寒暖の差が大きい涼しい気候だ。この辺りのブドウ栽培の歴史は古く、中世の1150年位に遡るという。当時はこの辺りではソーヴィニヨン・ブランやガメは存在してなく、白ブドウとしては、ムニュ・ピノや、この地域でピノ・ド・ラ・ロワールと呼ばれるいわゆるシュナン・ブランが、赤はコ(マルベック)が植えられていた。ソーヴィニヨンやガメが栽培されるようになったのは最近のことで、フィロキセラにより壊滅したブドウ栽培を復興するために量産型の品種が栽培されたためだそうだ。

ミカエルは4代目。父はリュット・レゾネで栽培していたが、彼が本格的に引き継いだ2001年からはビオに転換、ビオディナミの手法も取り入れながら精力的にワイン造りを行っている。丘状に広がる傾斜のある畑を案内してもらうと、フランス中央部の中央山塊から運ばれてきた砂に石が混じった土壌だ。微生物がのびのびと生きている畑ゆえ、ミミズも元気に成育している。大きいものは20cmにも達するなんて驚きだ!

爽やかな朝の空気のなかひとしきりブドウ畑を歩いた後は、カーヴに行って試飲だ。またこのカーヴが寒い。チュッフォーと呼ばれる石灰の地層をくり抜いて造った洞穴がカーヴで、ここでワインを熟成・貯蔵している。まず、ソーヴィニヨン・ブランのキュヴェ “パント・ド・シャヴィニー’07” になる予定のワインだ。驚いた!フレッシュでグレープフルーツやレモンの柑橘系の味わいで、スイスイ幾らでも飲みたい、という願望に駆られるワインだ。これは自宅にいつでも飲めるようにケースで常備したい!インポーターさんよろしくお願いします!!’07はどういう年だった?とミカエルに聞いたら 「9月までひどかった!」 と笑いながら答えた。雨ばっかり降っていたそうだ。しかし、9月半ばからとてもいい天気になりいい収穫が出来たそうだ。笑ってそう答えられるところがキッチリ仕事をやっているという自信の表れだなっ、と感じた。既に瓶詰めされた’06は、とても天気がよくぶどうが十分に熟したので、熟した洋ナシの風味豊かなよりリッチなワインだ。よく、いい年だ、とか、悪い年だ、とか言うが、いい生産者にかかればそんなことは全く問題ないと感じる。栽培さえキッチリ行っていれば、その年の特徴のよく現れた、その年なりに美味しいワインが出来るのだ。それをあの笑顔が語ってくれた。
そして赤、“コ”100%で造るキュヴェ “レ・コ・オ’06” だ。これもまた凄い。いわゆるマルベックといえばカオールとかもっと暑い西南地方で主に栽培されている品種だが、こんな涼しい土地で“コ”がこんなにもよく熟すものかとちょっと信じられない気がする。未熟なタンニンの引っ掛かるところが一切ないどころか、熟した心地よい果実味に満たされた、何と風味豊かなワインであることか・・・。しかもスキッとした清涼感があり、これなら飲み疲れるということは全くない。商売的にもドンドン飲んでくれるからきっと儲かるワインになるだそうな、と感じた。さらに赤の上級キュヴェ “クイユ・ダンヌ’ 06”。たった40アールの畑から年産1500本しか出来な いワインだ。前者のキュヴェをより濃厚にし、よりエレガントにしたキュヴェだ。均整の取れた、完成された味わいだ。“クイユ・ダンヌ”とは”黒い石“という意味のとおり、黒い石の多い特別な区画から取れたぶどうから造られている。パリの有名なワインショップ”ラヴィーニャ“でも人気のワインだ。

ミカエル・ブージュ、期待すべき若きヴィニュロン。これからが大いに楽しみだ!