ALSACE・自然派ワインの最先端を走り続けるDomaine Gérard Schueller*ドメーヌ・ジェラール・シュレール の Bruno Schueller*ブルノ・シュレール
強靭な精神力と追及心でアルザス・テロワールの神髄を明確にしてきた
いつもアルザスの最先端を走っているブルノ・シュレールを訪問。先月は原因不明の下痢、高熱で入院していたブルノ。生まれて初めて2週間ほどアルコールを飲まなかったとのこと。強靭な精神力とパッションを持ち合わせたブルノも人の子だった。
でも今日は元気に迎えてくれた。
ブルノが出現するまで、アルザスでこんな風味のワインができるなんて誰も知らなかった。アルザスの土壌をピュアーに表現する醸造家がいなかったのでる。
アルザスにはビオ栽培の大家は多くいるのに、残念なことに醸造では色んなものを足したり、人工酵母を使用してしまうところが多かった。自生酵母のみで、SO2の使用を抑えた造りをする醸造家が居なかったのである。つまりリスクを負う勇気と理論武装がなく、まだ前例が少なすぎた時代だった。今は、自生酵母で発酵する事は自然派では当たり前のことになっている。しかし、その裏には、途轍もない努力と注意力と対応力を必要としている。ブルノのようなリスクを背負って新たな境地を切り開く醸造家が必要だったのである。ブルノは先駆者として大きな役割を演じてきた。
既成醸造学の概念を覆すブルノ醸造学
ブルノは机上の醸造学は信じていない。すべて自分で実践して確認した事を実行している。普通の醸造学の先生達が見るとエッ!と驚くようなワイン造りをしている。例えば、ブルノは樽熟成中にウイヤージ(注ぎ足し作業)を一切しない。ワインを樽の中に入れたら最後、液面が蒸発で目減りして樽内に空間ができてもそのままにしておく。醸造学の先生達が見ればとんでもない危険なこと。でもブルノのワインは酸化したり、オスになったりはしない。更に樽熟成中はスーティラージもやらない。昔、ブルゴーニュでやられていた樽を転がしてオリをワインに溶け込ます作業をちょっと前までやっていた。最近は600L大樽を使っているので、大きすぎて転がせない。
ブルノ『土壌が生きていて健全に熟した葡萄ばかりを発酵槽に入れればワイン自体にエネルギーがあるので大丈夫なんだ。健全に熟してないかったり、傷んだ葡萄を使ったり、色んな化学剤を使用するからダメになる。』
言葉では単純なことだが実行するのは難しいこと。果汁の持っている還元力と酸化のメカニズムをブルノは経験上で熟知している。
未知の世界を切り拓くブルノ・シュレールのお蔭で、アルザス自然派が急増中
ブルノが主催するアルザス自然派ワイン見本市が先月行われた。今、ここアルザスも新しい動きがでてきた。
アルザスにはブルノのように多くのリスクをおって自然ワイン醸造を実践して、良い実績を残している先駆者達が何人かいる。後に続く、後続の人達が安心して自然派の造りに挑戦できる土壌が出来上がっているアルザスも新自然派ワインが着実に増えている。
アルザスには栽培をビオでやって、醸造を普通にやってきた醸造家達が多く存在している。彼らが世代交代の時期にある。先代のビオ栽培で健全な畑を土台に、自然派のワイン造りに挑戦する若手後継者達が増えてきた。
これはフランス全土の傾向と云ってよい。
これはブルノのような先駆者がい たからである。危険な造りと思われていた自然派の造りを安心して挑戦できるようになった。つまり、自生酵母のみでの発酵でも問題なくワイン醸造ができること。SO2の添加なしでも健全で美味しいワインができること。しかも途轍もなく美味しいワインができ ることをブルノ達が身をもって証明してきたらからだ。アルザスにはビオ栽培者が多く土壌自体は健全な畑が多い。自然派が増える要素はすでに整っている。
世界中の一流レストランが自然派をメインにリストアップ
ブルノのところには、デンマークのレストラン・ノマのソムリエがよくやって来る。ノマは世界のトップ・オブ・トップのレストランだ。ノマにとってもブルノのワインは大切な存在なのである。
ブルノのワインは来ないと買えないワインが多い。
極小量しか造ってないワインが蔵の中で眠っているのである。そんなワインを試飲する為に、世界中からソムリエ達がやって来る。やはり一流中の一流は違う。一流は一流を理解する。世界でトップと云われるには、何の世界も同じだ。トコトン追及した者同士には通じ合うものがある。
シュレール家はフランス革命の頃より200年ほど続く伝統がある
ブルノの恐れを知らない燃えたぎる挑戦心のDNAはこの父さんのジェレールから引き継いだ。
シュレールの蔵はHUSSEREN LES CHATEAUXウスラン・レ・シャトー村にある。実に簡素で美しい村である。アルザスの第2の街コルマールから高速を下りて村に近づくと、この景色が現れる。山の上に3つの塔が村を見守るようにそびえ立っている。
その山の麓に村の教会の塔が見える。なんて美しいんだろう。ブルノの醸造所は教会のすぐ隣に位置している。昔は教会の一部の建物だったのだろう。シュレール家はフランス革命の頃より200年も続いている。
1958年までは農協に葡萄を売っていた。59年よりブルノのお父さんジェラールが自分で醸造をやるようになった。当時は農協組織が強力な時代、一匹オオカミのように農協を出て独立することは大変な時代だった。色んな邪魔が入ったに違いない。それを振り切って独立したジェラールには相当な勇気と自信があったに違いない。人のやらない事を次々と実行するブルノのDNAはこのお父さんから引き継いだのだろう。
今でも元気に畑に出ている。でも数年前のように、畑全体を管理するような動きはできない。
ブルノ『ここで、シュレールのワインを最も多く飲む消費者はジェラールだよ!だからこんなに元気なんだ。』
数年前のケンジローとジェラールの黄金コンビは最高だった。 数年前までは日本人の鏡さん(現ジュラ醸造家)とお父さんのジェラールがコンビを組んで畑仕事をやっていた。あのケンジローさんとジェラールは黄金のカップルだった。この二人が担当している時が、ジェラール家の畑が一番安定していた時期だったのではないだろうか
12、13年と異常気象で生産量が激小
この2年間のアルザスの異常天候で、2年続けて減収量が続いている。2012年は普通の年の30%、13年は50%しか収穫できなかった。 流石のブルノも厳しい状況になって来た。 14年は今のところは順調にきている。やや乾燥状態にあったが先週に雨が降って何とかクリアしている。2年連続の減収穫で売るものが少ない。しかし、ブルノは毎年、試作として色んな造りのワインを少量だが造っている。それらは1樽しかなかったりあまりにも少量なので販売してなかった。ブルノはそんな試作ワインの販売を決意した。
蔵に眠るお宝ワインを利く
多くの少量試作品が12年、13年の減収量を補う
12年産はもう販売するものがない。しかし、ブルノは毎年、色々な試作品を造っている。5年間も熟成中のものや、瓶詰してそのまま何年も販売せずおいてあるものもある その中に超お宝ものがある。それぞれの試作ワインはすべて限定醸造の少量もの。
Pinot noir Delitrium Trimens ピノ・ノワール・デリトリウム・トリメン 2010
お宝中のお宝!先日、レストラン・ノマのソムリエが来て。あるだけすべてを予約したワイン。Cuvee Helenne キューヴェ・エレーヌとPinot noir Bildstoeckle ピノ・ノワール・ビルシュトクレをブレンドしたワイン。
何という液体だろう。これがアルザスのピノ・ノワールか? ブルゴーニュの銘醸グランクリュ畑ものにも勝るとも劣らない 繊細さと力強さを備えたピノである。ピノらしい心地よい木苺風味の果実味、昆布ダシのような旨味、潮っぽいミネラル感、まさにお宝だ。すべてをジェロボワム瓶に詰めて販売する予定。 ノマ予約の70本中10本程、日本向けに頂くこと成功。
Gewurtztraminer Bildstoekle ゲヴェルツトラニネール・ビルシュトクレ2000
2000年より販売せずにずっと蔵で眠っていたワイン。本来ならずっと保管して熟成を観るため時々重要なお客が来た時に飲む為にとっておいた。売るものがないので 販売を決意。黄金を通り越してウイスキー色の液体、色に反してフレッシュな酸がもあり、トロリとした粘着性と甘味はまさに神の酒だ。 日本向け36本確保。
Riesling Grand cru Psersisberg H リースリング・グランクリュ・ペルシュベルグ2001
正に黄金色に輝き、ペルシュベルグ畑独特のテロワール独特のゴマ風味、13年も過ぎているのに酸が素晴らしい、上品で深みある旨味、マニフィック。36本確保
Riesling Selection Grains Nobles リースリング・グランノーブル 1989
ブルノの渾身の貴腐ワイン。自生酵母で、SO2添加なしの熟成された貴腐ワインなどは世界に存在しない超貴重なワイン。神の酒、ネクタールだ。日本向けに24本。
ワイン販売のプロ集団・ESPOAの精鋭メンバーと試飲
さて2013年ミレジムは?
13年産はまだマロラクティック発酵が終わっていないものもあった。それでも試飲させてくれた。リンゴ酸が残った状態でも、ある程度の年代の特徴がつかめる。収量が少なかったので、濃縮感はただものではない。リンゴ酸がまだ残っているので、酸がキリット締まっているけど濃縮した果実味がオブラートのように包みこんでこのままでも美味しい。マロラクティックが終わればもっとふくよかなバランスとなるだろう。13年のブルノ・シュレールは凄い。見たらすぐ買うべし!でも量が極小だ。世界中のレストラン、酒販店から壮絶な取り合いになるだろう。
PINOT NOIR 13,
PINOT NOIR LN012 13
PINOT BLANC 3KL 13
PINOT BLANC 13
これらのワインは見たら即買うべし!
2012年 GEWURTZTRAMINER BILDSTOEKLE ゲヴェルツトラミネール・ビルシュトクレ2012
ブルノはイタリアに友人の醸造家が多い。奥さんのエレナがイタリア人と云うこともあり、よくイタリアに行く。イタリアにはマセラッションをやった白ワインが多い。近年、フランスの醸造家の中でもマセラッション醸造の白が静かなブームになっている。ブルノは以前からマセラッション白を挑戦している。12年はゲヴェルツトラミネールを収穫後、葡萄房そのままを発酵槽に入れて1年間もそのまま浸けておいた。まるでオレンジ・ジュースのような色合いになっている。爽やかなグレープフルーツ・ジュースのような酸があり旨味、果実味、ほのかなタンニンとのバランスが絶妙なユニークな白ワイン。日本向けに何とか60本確保。
東京・台東区根岸のエスポアよろずやの長さん
もうシュレールとは20年弱の付き合いだ。
ワインスクールを店内地下でやっている。
ワインスクールのお客さん達とこのシュレールに訪問したこともある。
造り手のブルノと飲み手まで信頼で繋がっている素晴らしい店だ。
東京・西東京市ひばりが丘のエスポア・はせがわ
エスポアはせがわも15年来の付き合い。店の横に ビストロ風の気楽に飲めるスペースがあり、仕事や買い物帰りの人達がワインを楽しめるようになっている。娘さんの鈴木さんがサーヴィス担当している。
テースティングの後は一緒に食事・造り手と売り手の情報交換・親睦のひと時
山口県周南市有楽町のエスポアやまだやの山田さん
山田さんもワインスクールを開催している。ソフトな 当たりの山田さんは、店自体が癒し系の空気が漂っている。店の近所まで引っ越してきてしまうお客さんもいる。
エスポアもりたか 石川県小松市
森高さんもワインスクールは15年を超えて卒業生は もう1000人に達するほどだ。小松市ではラジオ番組まで持っている森高さん。日本海は美味しい魚介類の宝庫。特にカニとシュレールのワインとの相性は抜群の相乗効果があり、最高のマリアージュだ。
自然派ワインの定義の4つ大切なこと
1-葡萄木(品種)2-土壌、3-気候・風土 4-人
最後の『人』は醸造元の人だけではない。そのワインを販売する人達も関わっている。売り手が訪問して色んな情報を醸造元に伝える。醸造元も多くの影響を受ける。繊細な醸造元ほど販売者の言動に耳を傾ける。売り手が造りに少なからず影響を与えることになる。何より12年、13年のように悪天候により大打撃を受けた時は、自分のワインを本当に愛してくれている人達が存在している事が、計り知れない大きな勇気と再生への活力 になっているのである。売り手も醸造に参加していることに繋がる。 造る人、売る人、飲む人、共に生きる! 自然派ワインの定義の根幹の部分である!!最大のテーマである!