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Olivier Cousinのpetit 歴史と円熟期に入ったワインを効く
冒険家オリヴィエも62歳。オリヴィエほど世界を自分の船で動き周った醸造家はいないだろう。 ヨットは自分で設計して、造ってしまう技術をもっている。モノ造りのセンスは凄いものがある。 20歳の時は、大西洋を単独横断したほどだった。その後も、アフリカのギアナまで大海原を走り周っていた。 . 今でも季節になるとジッとしていられないオリヴィエはクレールと近海を走り廻っている。 オリヴィエは1980年よりお祖父さんと一緒に蔵で働いていた。でも季節になるとヨットで出て行ってしまうことが多かった。正式に蔵に戻ってきたのは1987年だった。その前も収穫期には戻ってくるように心がけていた。83年からはお祖父さんと一緒に収穫してワインを造りだした。だから今年41回目の収穫をやったことになる超ベテラン。 オリヴィエも人生62歳、究極の自然児だったオリヴィエ。私が最初に知り合った頃は、ガソリンはよくないから、と云って植物性油で車を走らせていた時期もあった。 . 日本に一緒に行った時も、試飲会場まで移動する時、俺は地下鉄には乗らない、と云って、地図も持たずに歩いてちゃんと試飲会場に辿り着て皆を驚かせた。 . 90年代初期から自然派ワインを最初に造り出した人達は、多かれ少なかれチョット違った能力をもっていた人達ばかりだった。普通の人が、わざわざこんなリスクのあるワイン造りをやる理由がなかった時代だった。 そんな時代をくぐりぬけて戦い続けてきたオリヴィエの最近のワインが面白い。 人生の奥深いところを知り、なお気候変動に対応しながら馬や動物、微生物達と共存しながらのワイン造りに磨きがかかっている。 ここANGERSアンジェは自然派ワインの宝庫、多くの若手がやってきて、色んな手法でワインを造っている。 世間的には、超有名なワイン、造り手が乱立している地方でもある。 そんな中、確固たる自分のワイン造りのポリシーを貫いているオリヴィエ・クザン。 2023年は、久々に収穫量も満足いくものだった。品質も納得いくミレジムだった。 自生酵母も元気があり、アルコール発酵も12月前に終わったほど順調だった。 23年ミレジムは好ご期待です。 Au-dela オ・デラ シュナン・ブラン品種の畑は2006年より人に貸してあった。今年から戻ってきて、15年ぶりに造るオリヴィエ。 収穫後、直プレスして、自生酵母で発酵したもの。軽いアルコール、爽やかな酸、心地よいワインである。 あの丹念に世話をした畑、土壌の風味、ミネラルがスーっと伸びながら、ホワッとしたやさしい深味がある。 PARTAGE パルタージュ 樹齢の古いカベルネを除梗して、潰さない(フラージはしない)で葡萄粒を発酵槽にいれてトラディション醸造。 勿論、自分の畑で育った自生酵母のみで発酵。 そしてシュナンブランを直プレスにかけたジュースをブレンドしたもの。 アルコール度数も低くて、酸も爽やかで、心地よい。 オリヴィエ独特の果実の深味がある。 Le Franc 村の教会の横にある古木のカベルネ・フランを仕込んだもの。丹念に世話をされた土壌達が、オリヴィエが望むミネラルを地中深くから果汁に送り込んでくれた深味を備えている。まさにオリヴィエ香と云っていいホワッとした優しい風味がある。41年のワイン造りの歴史を感じさせてくれる。 蔵に入って熟成中のワインを試飲、23年はどれも、すでに飲みやすかった。 嬉しいことに、幻のロゼ・ペティアンらしきものがあった。まだ、どうなるか決まっていない。品種も昔のものとは違うようだ。 ワインは人である。その人の歴史、たどって来た人生の局面、時期によって全く違ったワインになることは当然である。 熟練期、円熟期に入ったオリヴィエがここにいる。 これからのオリヴィエの醸すワインが、どのように進化していくか、ますます楽しみになってきた。