2
Juil

Marc Pesnot で世界一美味しいミュスカデを!

30年のムロン・ド・ブルゴーニュの畑・シスト土壌 今日はいつでもニコニコと笑顔が耐えないマークの蔵へ行ってきました! 彼は畑作業が大好き! 何をしていてもブドウが頭から離れない・・・ とにかくブドウ木に触れていないと落ちつかないと言う位畑命なのです! まずは畑を見学! 今年は気候もよく、今のところ完璧な出来だそうです! 『2007年は雹が大量に降り、ブドウ木も大きなダメージを 受けてしまったんだ。そのため2007年は少量しか収穫が出来なかった・・・2008年はそのダメージの影響で、あまりブドウが生らなかったんだ。そして2010年、今ちょうど開花の時期に入ったんだ。病気も見当たらないし、気候もいいから、綺麗なブドウと美味しいワインが出来るはず!』 と大きな笑顔で嬉しそうに語るマーク。 じゃあ2009年は ? 『2007年からビオ栽培に転換したんだ。その結果は2009年のブドウに現れているんだ。本当に繊細でミネラルでフルーティーなワインが出来上がったんだ。皆も期待していてね!』 畑での対処方法は? マークは全て自然なもので畑の対処を行っています。 例えば、煎じ茶(プレールなど)を散布したり、ラベンダーやレモンのエッセンスオイルでブドウの実が大好きなコシリス(はまき蛾)を遠ざけたり・・・ 今雅にマークがハマッているのはそう、アロマテラピーなのです! 昔はボロボロだった蔵も、 今はリニューアルして可愛く大変身! 試飲室もでき、 綺麗な雰囲気で美味しいワインを飲めるので快適! * * * * * * ワイン紹介** * * * * 日本全国のエスポア加盟店へ エスポア本部:03-3538-7854 Chapeau Melon, VDT*シャポー・ムーロン La Folle Blanche, VDT*ラ・フォール・ブランシュ Miss Terre, VDT*ミス・テール La Bohème, VDT *ラ・ボエム Chapeau Melon, AOC Muscadet 品種:Melon de Bourgogne […]

23
Juin

開花時期*2010年のブドウがもうすぐ誕生!

ロワール地方では開花期に突入! Marc Pesnot*マーク・ペノのムロン・ド・ブルゴーニュ 今のところとても健全な状態! ブドウ木が病気に掛からないように撒く薬剤(もちろんナチュラル!)も今年はまだ殆ど散布していません!2-3年前に完全にビオ栽培へと転換したマーク。その結果がやっと2010年のブドウに!! ビオ栽培というより、ビオディナミ栽培を完璧に分かろうと頑張っているAlexandre Bain*アレクサンドル・バン。彼の土壌には何万人との植物や昆虫が生きています! そんな彼のMarc ソビニョンは元気一杯!お花も徐々に開き、2010年も期待大のはず! クロという、高い壁に囲まれている、チョッピリ豪華なカベルネ・フランのブドウ畑。 この畑の持ち主は、Chateau Bel Air*シャトー・ベレールのゴチエさんのもの!彼はこの町に生まれ、この「クロ」の前を通りながら学校へ行き、いつかこの壁の向こう側に何が隠れているのか暴いてやる!と誓ったそうです!とても大きい実が沢山! 2010年はとても期待出来るビンテージ!このまま収穫時期まで良い気候が続くことを祈っています!

6
Mai

MARC PESNOT復活から5月革新へ-EVOLUTION EN MAI-2010

  3年前の復活から革新へ大躍進を続けるマーク・ペノ  2007年の倒産から3年目の歳月が流れた。08年復活、09年建直し、そして10年革新の年へ真っすぐ上に向かって伸び始めた。 まるでこの季節の葡萄の蔓(つる)のように上へ上へと向かっている。 08年に野村ユニソン社の援助によりドメーヌ・セネシャリエールが正式に復活して、以後野村ユニソン社と二人三脚の建直し作業が始まった。 畑の整備、醸造所の整備など諸々の土台造りに専念した。そんな努力の中、09年は春の冷害に遭い、厳しい畑の状況と経済状況に直面した。それでも更に健全なる葡萄栽培に必要な機材を購入・投資して、万全の態勢で迎えた10年の春だ。研修していたマチュも正式に入社した。マークの右腕だ。二人で必死の耕作作業や土台造りのお陰で、この5月に入って葡萄の樹も土壌も今まで見たこともないほどに生き生きとしている。フカフカの土壌、土中の微生物も活発に躍動していそうだ。宇宙の光を吸収する葉っぱにもエネルギーを感じる。5月に入って、芽にてんとう虫を見るほど健全で力のある畑に革新の真最中だ。 5月はエネルギーが躍動する! 羊飼いならぬ葡萄飼いのイヌ・ジョジョ 葡萄を守るガードワンだ! ジョジョは醸造所のガードマン。 ここに勝手に住み込んでいる。 お母さん犬が勝手に来て醸造所の一角に4匹ほど生んで、ある程度子犬が大きくなったらどこかに去っていった。 子犬たちのうち、最後に残った一匹がこのジョジョだ。 醸造所に寝泊まりして守っている。クセ者が来れば猛スピードで行って確認する。 そして、醸造所内を守るのは猫だ。 ネズミ捕りの名猫だ。 吾輩はガード・ニャン! この最強ベストメンバーでドメーヌ・セネシャリエールは運営されている! 耕した後の状況を確認するマチュ。 09年は春の冷害で15hl/haしか収穫出来なかった。今年は順調に芽が育っている。35hl/haは収穫できたら嬉しい限りだ。 あのフォル・ブランシュことグロ・プランの畑もマニフィックだ! フォル・ブランシュは栽培が難しい品種だ! 葡萄の皮が極端に薄い品種だ。理想的に熟す日にピッタリ 収穫しないと美味しいワインが出来ない。2日遅れると 皮が破けて腐ってしまう。かと云って早目に収穫してしまうと酸が強すぎて、飲めないワインになってしまう。 だから普通に出回っているグロ・プラン種(別名フォル・ブランシュ種)ワインは強烈に酸っぱいだけのワインが多い。このミュスカデ地区の農家はこの難しいグロ・プラン種を抜いて止めてしまう人が増えている。だから益々マーク・ペノのフォル・ブランシュが貴重な存在になってきている。 超人気ワインなのに量が極端に少ない! 南仏で見られるゴブレ方式の剪定 横から見るとサインはVとでも云いたいように、Vの字になっている。樹齢70歳になろうとしているフォル・ブランシュ。昨年は冷害で一本の葡萄木から2房ぐらいしか収穫できなかった。年は7房ぐらい収穫したいものだ。 マークはこの土壌で世界一美味しい白ワインが出来ると信じている 土壌は青シスト、赤シストがゴロゴロしている痩せた年だ。アルドワーズと呼ばれる固い岩盤が地層にある。その岩盤層の隙間に葡萄の根っ子が入り込んで地中深く伸びている。そのミネラルのエネルギーを我々に伝える為に地中から吸い上げてくれる。 ミュスカデ地区を世界一の白ワインに!マークと葡萄の樹達の夢 まるで葡萄と会話をしているようだ。 こんなにも樹齢の古いミュスカデをもっているのはマークのチャンスだ。 やはり繊細なワインを造ろうとすれば、樹齢の古さは貴重な存在だ。根っ子の深さが違う。最終的には根っ子が吸い上げるミネラルの質が重要ポイントになる。 あとは葡萄の樹と人間がどこまで対話ができるか?だ。 葡萄の樹は繊細な植物だ。自然の変化を人間が事前に察知して知らせてあげれば葡萄の樹自身が自分自身を守ることができる。だからマークは毎日葡萄の樹をよく観察する。まるで会話をしているようだ。葡萄の世話をする人達も大切な存在だ。マークは季節労働を依頼する人達を選別している。毎回同じ近所の奥さん達にお願いしている。全く知らない人達では色んな意味で葡萄の樹達にも負担がかかる。 5月はプリエという大切な仕事がある。 5月に暖かくなると枝葉が急激に伸びてくる。ミュスカデ品種の習性は真上に伸びる。 そのままにしておくと、枝の上と下の部分に均等に栄養分がいき渡たらなくなって、葡萄の熟す時期にバラつきが出てしまう。 枝を横に曲げて水平にして針金に撒きつける作業をする。 こうする事によって樹液が均等に枝の先端までいきやすくなる。 こんな作業も依頼すればいつでも来てくれるアンヌさん達だ。 2009年産を利く・極少量・高品質のミレジム 近所のレストラン向けだけに、まだ完璧には醸造が終わってないペティアンのワインをSO2ゼロで一部だけ瓶詰めした。これは日本までは持っていけない。再醗酵してしまう。 ペノさんは試飲の時はいつも少年のような顔になってしまう。 本当にこの人はワイン造りが好きなんだな!と思う瞬間だ。自分が思い描いたように造ったワインを、人と分かち合える歓びを隠せない人だ。 その喜びがこちらまで伝わってくる。 LA FOLLE BLANCHE ラ・フォル・ブランシュ09 Equinoxeと手書きで書かれている。 収穫量10hl/haという極端に少なかった為に本質は抜群に素晴らしい。07年がペノさんが最高と言い切ったが この09も負けていない。この品種をこんなに優しく造れるペノさんはいったい何なんだろうか?天才でもなく、秀才でもない、何の濁りもない少年のような心で造らないと、できないスタイルのワインだ。酸も柔らかく、昆布ダシ系の旨味が乗っていて、爽やで、心地よい。 Labouriouアブリュウ09 […]

2
Avr

エスポアの仲間達と神田 萬屋天狗にて

全国に約200店弱の仲間を持つエスポア・グループ・特に東京のメンバーは時々情報交換会をやっている。 鴬谷のよろずやのよっちゃん、菊田さん、長さん 過去、色んな酒販店グループが存在していた。生まれては消えを繰り返し、結局現在まで残ったのはエスポアグループだけだ。 残った最大の原因は本部組織が独立して存在しているからだ。 今までの消滅したグループは、メンバーの有力酒販店がまとめ役を演じていた。これでは人が多くなると意見がまとまらなくなってグループとしての行動が硬直化して消滅してしまった。 エスポアの素晴らしい処は、本部組織がシッカリ独立していること。お互いに切磋琢磨でスケールメリット。 自由が丘のやまやさん、いせいの有馬夫人 一個店ではできない事や、一酒屋でやっては利点にならないことを本部が代わって企画・実行してスケールメリットを出すことができることだ。例えば、ワインの直輸入システムにしても、一酒屋ではとても輸入などは考えられない。有力な酒販店が直輸入をやることもあるが、長期に渡って、取引蔵元と良好な関係を続けることが出来なくなってポシャってしまうことが多かった。200店舗が一致協力すれば皆が少しづつ努力すれば大きな力となって長期に渡って醸造元とも良好な関係を続けられる。造り手から販売者、消費者までの共生の世界だ。 世田谷のナカモト、いせいの有馬、横浜の竹之内 まさに、スケール・メリットを皆で享受できる訳だ。勉強会にしても、フランスツアーにしても本部がニュートラルな立場で企画してくれるから皆が自由に参加できるのである。これも一軒の酒屋ではできないことで、ましては継続的にやることは不可能だ。 本当に世界に類を見ないグループとシステムになっている。私はエスポアが直輸入を開始したころからの付き合いだ。だからもう20年弱の付き合いだ。私にとっては家族のような存在だ。まさに共に生きるの実践だ。 この20年の間には酒販免許の緩和、酒の安売スーパー全盛期、衰退期など色んなことが起きた業界だった。 周りの酒屋の倒産閉店が続く中、何とか生き残って来たのがこのエスポアグループだ。今、残っているエスポアのメンバーは、メンバー同士が親戚のような付き合いをしている素晴らしい関係だ。私との関係は彼らの先代からの付き合いだ。云うならば親戚のおじさんのような存在かもしれない。今夜のような、宴会というか、集まりが時々行われている。有馬氏や竹之内氏が声をかけると10名前後はすぐに集まってくれる。 楽しいひと時の一つにブラインドテースティングがある。   皆、一本づつワインを持ち寄ってブラインド・テースティングをやりながら色んな話をして情報交換を楽しむ。本当に皆、佳い人の集まりだ。私も時々参加させて頂くが心地よい空気が流れている暖かい人達の集まりだ。 それに皆、それぞれが、それぞれの方向とやり方で努力しており、大事なところだけは共有してスケールメリットを出している。多少の競合関係は存在しているが切磋琢磨でお互いを盛り上げる素晴らしいグループだと思う。 ESPOAには素晴らしい本物ワインが沢山ある。    今日飲んだ美味しいワイン、まずは口慣らしにCHAMPAGNE DE SOUSA*シャンパーニュ・ド・スーザのキューヴェ・コダリだ。竹之内さん持参。何て素晴らしいシャンパーニュなんだろう!コート・ド・ブランのAVIZE村のシャルドネだ。クレと呼ばれる真っ白な石灰質岩盤の土壌だ。スカットした辛口の中にも果実の深みのニュアンスがこのコダリにはある。何と云ってもクリアなミネラル感が最大の特徴だ。 シャンパンでスーと入ってしまうのは少ない。まだ、飲んだことがない人は是非試してほしい。後悔はしませんよ! BRUNO SCHUELLER*ブルノ・シュレールのRIESLING 2000 ほぼ黄金色に近い色合いは、ウイラージをしない樽熟成からのものだ。何て力強い、蜂蜜感さえ感じさせてくれる熟度だ。それに反してキチッと締め て、スッキリ感を与えてくれているのがシュラー独特のミネラルだ。これはブルノのお父さんのジェラールの畑仕事のお陰だ。実に素晴らしいアルザスのテロワールワインだ。イカが美味しかった。 DOMAINE ALQUIER*ドメーヌ・アルキエのBASTIDES 96 AOC FAUGERES バスティード 何て細かく上品なタンニン何だろう。こんな繊細なフィネスを感じさせてくれるワインを造る人はそう多くない。しかもこのボリューム感は南仏そのものだ。かと云ってアルコールを全面に感じることはない。これはフォジェール独特のシスト土壌が酸をもたらしてくれるからだ。フレッシュ感さえ感じさせてくれる。熟成からくるトリフが出始めている。   DOMAINE DE LA SENECHALIERE*ドメーヌ・ド・ラ・セネシャリエール、V V 2004 ムスカデ 偉人マーク・ペノは04年当時、まだムスカデとして出荷していた時代だ。 マークのワインはムスカデとして登録する6月までにはまだ醸造が終わっていないことが多く、今ではテーブル・ワイン、ヴァン・ド・ターブルの カテゴリで出荷している。イオデと云われる浜辺の香りがあり、蜂蜜さえも感じさせてくれる。勿論、6年の熟成を重ねてもフレッシュ感を備えている偉大なるムスカデだ。 DOMAINE D’AUPILHAC*ドメーヌ・ドーピアック LES PLOS DE BAUMES 03*レポドボーム ラングドック地方の偉大なる醸造家の一人だ。南仏ワインの名声を上げた一人に数えられるシルヴァン・ファダだ。シルヴァンのワインはルカ・カルトン、トロワグロ、エルブリなど一流シェフのレストランにオンリストされている。このキューヴェはシルヴァンのワインでは異質のワインだ。 彼はアニアン村にわずかな畑を所有している。ここはメドックに似ているといわれる土壌を備えている。メルロー60%、カベルネ・フラン20%、カベルネ・ソーヴィニョン20%、というボルドー品種構成だ。実に細かい粒子のタンニンだ。03年と云う過酷な暑さの中で育った葡萄を仕込んだ。このフィネスはボルドーグラン・ヴァンだ。これは収穫量が20HL/Hと云う少なさから来ている。素晴らしいワインだ。 DOMAINE […]

15
Jan

Gパンのシンデレラ

蔵元名:Domaine de la Sénéchalière 産地:ロワール地方(ナント地区) 品種:ムロン・ド・ブルゴーニュ(ムスカデ) ムスカデというワインは昔、ブルゴーニュ地方で造られていました。ぶどう品種の名前から見てもそのことは容易に想像が出来ますよね。それが後にロワール地方の方が適した土壌だと考えられるようになり、今のムスカデになったのです。しかし一つ残念なことは、多くのムスカデ生産者たちに逸品を目指す志しが見られず、安物量産ワインを造るのだという割り切った空気が漂っていることです。しかしドメーヌ・ド・ラ・セネシャリエールのマーク・ペノ氏は違いました。「繊細さではモンラッシェにも負けない!」真顔でこんなことを言う生産者はムスカデ地区にはペノ一人しかいません。そしてそんな拘りの芸術家は商才に恵まれないものだから、経営は常に不安定で、一時は会社更生法が適用される始末。でもそんなペノの才能を信じ続ける最愛の奥さん(ヨレーヌさん)と愛娘(カレルさん)に支えられてマークは自分の信じる路を突き進むことになりました。 ペノの拘りは想像を遥かに超えていました。ムスカデで拘りといえば、通常SUR LIE(シュール・リー)と呼ばれるもので、これは醸造中に出来たぶどうや酵母の死骸の澱(LIE)をそのまま底に残した状態で、アルコール発酵後から最低でも収穫の翌年3月末まで熟成させるものです。これをすることで瓶詰め直前までその状態を維持し、最も旨みである澱から最後の最後までエキスが溶け出すのです。でもペノはこれ以外に、NUITAGE(ニュイタージュ)という誰もやっていない製法を導入しました。これは夜中に極低温で一部発酵させるのですが、厳選された手摘みぶどうを炭酸ガスの充填されたタンク内に房ごと入れるのです。すると、ぶどう粒の細胞内でゆっくりと還元的発酵が始まるのです。温度12℃で約6時間、凡そ1晩かけて行った後(午前3時頃)に房の茎を取り除き、圧搾してアルコール発酵させるのです。茎ごとタンクに入れるというのは、とても勇気が要ることです。何故なら、普通は植物臭く、土臭くなるので除梗するからです。でもペノのぶどうは茎までも完熟させている自信があるので、風味を複雑にするという一環としてこのニュイタージュを丸々茎ごと6時間行うのです。この6時間という数字と深夜という時間帯に至るまでには膨大な時間と労力、費用を引き換えにしなければなりませんでした。こんな凄い手間暇かけたムスカデですが、ペノは一切コンクールには出品しません。ぶどうの完熟に拘る余り、ミュスカデコンクールのサンプル提出期限に間に合わないからです。でもそんな拘りを分かってくれるのは、家族とほんの僅かな人たちだけでした。ペノは口下手で商売も下手、ワインは中々売れませんでした。唯一の頼りは伊藤さんの日本への販売でした。 或る時、ペノはパリへ行商に行きました。ライトバンに何ケースか積んで、ワイン屋さんやレストランを訪問するのです。でも真剣にペノの話を聞いてくれる処は中々ありませんでした。口下手のペノは、初対面の相手へ言葉巧みに自分の気持ちを伝えることさえ儘ならなかったのでした。石畳の小路をライトバンで揺られながら、サンプルのワインを持って一軒一軒扉を叩きましたが、どうしてもサンプルを飲んでもらうまで行き着けません。矢張り一般的に安物量産ワインという認識を持たれているワインなので、余程のことでもない限り態々試飲するという気持ちにならないのです。「やっぱりコンクールに出して上位入賞するとか、AOC協会やネゴシアンと仲良くなったりしないと売れないんだ。」そんな考えが頭を過ぎりました。疲れ果てたペノは、最後の夜に自然派ワイン通が集うパリ20区にあるワインビストロへ客として行きました。ペノはその店へ行くのは初めてでしたが、そこのオーナーに偶々ワインが売れないことを相談したのでした。そのオーナーは、ペノの実直さに興味を示し、ワインがあるか聞きました。丁度近くにライトバンを駐車していたので、急いで何本か持って来、飲んでもらいました。無ろ過タイプで白濁りというユニークなムスカデでした。「白濁したムスカデか、珍しいな。初めてだよ。」そう言うとオーナーは一口飲んで、息を詰まらせました。(これがムスカデ?なんて繊細なんだ。まるでネクターじゃないか!) 「ラベルが貼ってないが、これは何という名前なんだ?」 「名前はつけていません。ムスカデです。」 「一本いくらだ?」 「○△フラン。」 「何?そんなに安いのか?今在庫は何本あるんだ?」 「○△本あります。」 「よし、全部買った!あっ、それからこのムスカデの名前だけど、俺が命名してやる。Chapeau Melon(シャポー・ムロン)がいい。」 こんな会話が交わされ、ワインは完売したのですが、それ以上に幸運であったのは、このレストランは有名なワイン屋のオーナーや味にうるさいパリジャン、パリジェンヌたちの憩いの場であったことです。この時からシャポー・ムロンは、ワイン通たちの間で名を馳せて行きました。フランス語でシャポーとは、帽子の他に脱帽という意味があり、ムロン・ド・ブルゴーニュ(ムスカデ)の脱帽というこれ以上ない賛辞だったのです。   それから暫くした或る日、漸く経営も安定し、ワイン造りに精を出すペノに途轍もない朗報が寄せられました。7月14日はフランス革命記念日、大統領は毎年この日に有力者を招いてガーデンパーティーを催します。そのパーティーには必ずワインが振舞われますが、その歴史は常にグランヴァンばかりでした。それが2003年7月14日、その歴史は変わりました。シャポー・ムロンに白羽の矢が刺さったのです。ドレスなんて着たことのない田舎の娘がジーンズを穿いたまま貴族のパーティーに紛れ込んで、偶然居合わせた王子の心を射止めたと言っても過言ではないような事件でした。これは偶々ガーデンパーティーの宴会責任者があるレストランでシャポー・ムロンを口にしたことがきっかけでした。ペノがエリゼ宮に配達に出向いた帰り際、厳重な警戒態勢の下で強面の警官に止められ、何やら詰め寄られていました。記念の配達に同伴したニシは中へ入れてもらえなかったので外で1人待っていましたが、ペノの身に何が起こったのか不安でたまりませんでしたが、笑みをこぼしながら戻ってきたペノから話を聞いて肩を撫で下ろしました。「シャポー・ムロンは何処へ行けば買えるんだい?」ニシとペノは子供のようにはしゃいで抱擁しあいました。凸凹したパリの小路をライトバンで駆けずり回っても売れなかったペノのワインが、今や大統領のパーティーで使用されることになるなんて想像もしなかったことです。でもペノは相変わらず飄々としてにこにこ笑っています。「シャポー!」ニシはそう叫ぶと、被っていた帽子を太陽に向けて放り投げました。

15
Oct

ドメーヌ・セネシャリエール・マルク・ペノ復活

2008年産 収穫完了  人に歴史あり、そして会社、ドメーヌに歴史あり  2007年12月にドメーヌ閉鎖の状況となり、世界中のファンからの応援もあり、取り分け日本の野村ユニソン社の絶大なる支援をうけ、正式に復活のメドが立ち2008年産の収穫に何とかこぎ着けた。 閉鎖から復活までの9ヶ月間はペノ氏にとっては20年間くらいの年月に思えたにちがいない。2003年より2006年までシラク大統領の祝賀会に使用され、自然派ムスカデでは確固たる名声をあげていた矢先の出来事だった。純粋にワイン造りに賭ける情熱では恐らく右にでる者はいないだろ。 実のピュアーな人柄だ。彼の人柄を知った人は誰でも大ファンになってしまう。だから、多くの人達が救済に名乗り出た。しかし、現実に閉鎖された会社を再生させるには巨大なエネルギーと情熱と、リスクを伴った経済的援助が必要だった。 それを現実に成功させてくれた野村ユニソン社にはペノ氏を始め多くのペノファンが感謝している。 この数カ月、私も含めて多くの人達が動いた。それぞれがそれぞれの役割を完璧に演じてくれた。奇跡的にすべてが順調に進んだ。弁護士、管財人、野村社長、竹沢氏、裁判所、農地管理局そしてペノ氏、どこか一つでも狂えば2008年の収穫はあり得なかった。そして、ペノ氏が生涯で最も完璧な品質だったという2007年産が我々の口に入ることになったのだ。感謝!!感謝!!の一言だ。ペノ氏を影で支えて、応援してくれていたすべての人達に感謝したい。取り分けESPOAの加盟店の応援はペノ氏を心理的に勇気づけてくれたバックボーンとなった。皆の応援パワーがあったからこそすべてが奇跡的に動いたのだろう。 このムスカデの地で世界一の美味しい白ワインを造り上げる!!  ペノ氏は本気で言い切る。 『ここのテロワール・土壌は世界一美味しい白ワインが出来るんだ!』 ここのムスカデつまりムロン・デ・ブルゴーニュ品種は60歳を超す古木がある。 特殊土壌 砂状の地質に赤シスト、ブルーシスト、石英の小石が混ざっている。地表の15㎝下はミカシスト岩盤だ。その岩盤の中を根っこが突き破って入り込んでいる。何といういう生命力だ。ここのミネラルはそこに由来している。 地質学者のイロデー氏がこの地を見て驚いた。ミカシシスト岩盤はこの ムスカデ地区では実に希少だという。 醸造工夫・ニュイタージ ペノ氏自身がニュイタージと命名する醸造法がある。一晩の房ごとマセラションである。1998年から2003年の試行錯誤の末、完成させた方法だ。 いづれにしても、ブルゴーニュより北に位置していて、品種もムスカデ品種、この二つの条件だけしかできないタイプの世界一の白ワインがペノ氏の目指すところ。 コクや濃縮度はシャルドネだ、香りではソヴィニョン。 ここでは、まさに剃刀の刃の上を歩くような繊細さ、フィネスがペノ氏の白ワインだ。 一歩間違えば薄っぺらな白、また一歩間違えて反対に落ちれば単に酸っぱい白ワインになってしまう。まさに剃刀の刃の上を歩くような繊細なタイプのバランスのワインはここにしか存在しない。 オザミ東京の田中支配人がセネシャリエール訪問 素晴らしき人間交流 ソムリエ田中氏、人間としての田中氏が私は大好きだ。人に不快感を絶対にいだかせない、いや心地良くしてくれるのが最高のソムリエだ。田中氏の人間性そのものだ。偉大なるソムリエの一人だと思う。素晴らしきソムリエ田中氏と素晴らしき醸造家ペノ氏の出会いは、素晴らしい出会いだった。ワインを通じての素晴らしい出会いが新たなエネルギーを造り出した。 田中氏もペノ氏の2007年産に驚愕 さすがペノ氏が生涯で最も素晴らしいと言い切る2007年産ムロン・ド・ブルゴニュは素晴らしい状態で保管されていた。シュール・リの状態で1年間もタンク熟成をしていたものだ。2007年は2回に分けて房選別収穫が行われた。本当に完璧な葡萄しか醸造発酵槽に入っていない。 しかも1年という異例なシュール・リ熟成でコクと繊細さ、ミネラル、酸、すべてが調和されていてフィネスを感じる。グロプランことフォールブランシュも見事だった このセネシャリエールを最初に発見した日本人はオザミの総帥・丸山宏人だ! ムッシュ丸山が自転車でフランス中を訪問している時に出会ったワインの一つだ! お互いに当時は全くの無名時代。ワイン狂と自他認めるムッシュ丸山、鬼才が鬼才を引き付けた出会いだったのだろう。お陰で今我々が世界一のムスカデを堪能できる。この出会いに大きな感謝! 2008年収穫完了 セネシャリエール救済ストーリーがこの収穫に間に合った。そして誰の所有になるか分からなかった畑をせっせと世話を続けてくれたペノ氏、成功を信じてリスク承知で経済的援助オペレ−ションを続けた野村ユニソン社があっての2008年の収穫となった。  量は例年の20%、品質は上級の2008年産 曇りが多かった2008年だったが、収穫時は異例の晴天が続いた。 08年ムスカデ地区は雹にやられ、続いた湿気によるベト病が大発生してどの醸造元も生産量は壊滅状態だった。 20%の収穫ができたのは良好の方だった。量が少ない分品質はかなり高い葡萄が収穫された。7HL/Hにも満たない収穫量だった。自然による青狩りが行われた状況だ。品質はかなり期待できる。 収穫直前に購入した空圧式プレス機。 ペノ氏が長年に渡って欲しかったプレス機だ。 これでさらに繊細度があがりそうだ。 収穫人も含めて、笑顔が絶えない 5日間だった。何よりペノ氏が一番嬉しそうだった。 絶滅しかけているアブリュ品種を再生 ペノ氏の価値ある仕事 フランスから絶滅しかけている黒葡萄アブリュ品種をこのムスカデ地区で栽培醸造している。しかも、グラップ・アンティエール房ごと仕込むセミ・カルボニック醸造だ。 ジル・ショヴェの直弟子ジャック・ネオポールとは24年前からの知り合いだ。自然派の元祖的存在の流れを継承した造りだ。 2008年は極小の量しか収穫できなかった。品質は抜群のできだ。期待したい。恐らくアブリュ品種100%の自然派ワインは世界でここだけだろう。 この品種伝統を守るペノ氏の仕事を応援したい。 グロ・プラン品種ことフォール・ブランシュを異例なゴブレ剪定に グロ・プランと言えば強烈な酸味のワインがイメージされる。 しかし、ペノ氏が造るグロ・プランは違う。 葡萄自体の品質を上げる為に、ボジョレや南仏でおこなわれている剪定のゴブレ方式を採用。樹齢60歳の古木を2000年よりゴブレ方式にかえた。何故ならこの品種は最終段階で腐りやすい繊細な品種だ。より熟成を伸ばす為に風通しが良く、生産量も自然に落とせるゴブレ選定にかえた。これによって、酸を抑え、果実味を出せる。キリっとした酸を残しながらも繊細な果実味とミネラルを感じさせてくれるマニフィックな白ワインに仕上げてくれる。