18
Oct

2013年ヌーヴォー情報第一弾! -CHRISTOPH PACALET-

シャペル・ド・ゲインシャ村にある特別な畑。自然派ワイン醸造を科学の世界から立証した研究者ジュル・ショーヴェ博士が持っていた畑。ショヴェ家から自然派の若手7名に分配した特別な畑だ。13年は幾多の困難を乗り越えた。 CHRISTOPH PACALETクリストフ・パカレ 『2013年は本当に最後まで困難が続きました。でもこんなに素晴らしい葡萄を収穫することができました。すべてに感謝です。日本の皆さんの為に自然な美味しいヌーヴォーを、これで造ります。』   シャペル・ド・ゲインシャ村のクリストフが持っている畑区画は雹が降った区画のはずれに位置していたので被害が軽めで済んだ。葉っぱ達は傷ついていても必死に葡萄を育ててくれた。葡萄達も最後の力を振り絞って熟成に堪えていました。 収穫直前の8月にシャペル・ド・ゲインシャ村にある元ジュル・ショーヴェ博士の畑を雹が襲った。畑の場所によっては全滅状態だ。近所の家の屋根が崩壊する程凄まじいものだった。私が訪問した8月上旬には完ぺきな状態だった葉っぱに穴があいている。 クリストフは8月のバカンスを返上して畑の世話をした。普通、8月はもう畑を耕すことはしないのに、今年は草に栄養を取られないようにできうる限りを尽くした。クリストフが現場にいることで葡萄達も元気になるようだった。お陰でこんな葡萄が収穫できた。   CHRISTOPH PACALETクリストフ・パカレにとって13年は忍耐の年だった。本当にドキドキの連続だった。最後の収穫も特別に慎重に行った。傷んだ葡萄の個所を綺麗に取り除く作業をきっちりやらなければならなかったからだ。 傷んだ個所一粒一粒を取り除く作業をやっているクリストフ。手間暇かかるけど、自然派の造りは、酸化防止剤(SO2)などを添加しないので絶対にやらなければならない作業だ。でも、クリストフにとっては大満足で歓喜の収穫だった。   収穫人にも悪い部分を取り除く作業を徹底する為に、一人一人に張り付いて指導をしていた。ここまでやらないと自然で透明感のあるグイグイ飲める 美味しい自然派ワインはできないのだ。こんな小さい事の積み重ねが自然派ワインの真髄だ。 雹でやられて粒が幸いにも乾燥して腐りが発生していない。でもこの粒を一つずつ取り除く作業をやらなければならない。大変に時間と手間のかかる作業だ。こ れを見ただけで頭の下がる思いがする。一般の醸造家なら醗酵槽に酸化防止剤を入れて済ませるのに。    8月の雹が降った後、こんなに収穫できるなんて、想像だにしていなかったクリストフ。しかも、尊敬する元ジュル・ショーヴェ博士の畑を任されて初めての収穫の年だった。伯父にあたる故マルセル・ラピエールが天より応援してくれていたのかもしれない。   今年は強力な助っ人が収穫に参加してくれた。あのマルク・ペノさんのお兄さんがクリストフ・パカレの収穫に 駆けつけてくれたのだ。今はリヨンの街で画家として活躍している芸術家。ペノさんを自然派ワインの世界に引っ張りこんだ人だ。 クリストフにとって13年ほど嬉しい収穫はない。この笑顔は偶然にはできない。今年のクリストフ・ヌーヴォーは期待できる。11.50度ぐらいのスイスイ入ってしまう軽快なヌーヴォーになるだろう。一本はアッと云う間に飲みほしてしまうスタイルになるでしょう。     シャペル・ド・ゲインシャ村にある元ジュル・ショーヴェ博士の畑の収穫を無事終えた面々。時間はかかったけど、8月のあの悪魔の雹を乗り越えた収穫に満足の面々。ブラヴォー! 慎重に速やかに醸造所まで運ぶクリストフ。色んなことが頭に浮かぶ。4.5.6月の寒くて曇り空の悪天候からくる3週間の葡萄成長の遅れ、開花時の悪天候による結実不良、そして8月の雹、ここまで収穫できるなんて感動の瞬間だ。     醸造所まで無事到着したクリストフ。『ヤッタ!って感じかな。待ってくれている日本の皆さんの為に、とびっきり美味しいヌーヴォーを造ります。そして、このヌーヴォーの飛行機と一緒に私も日本へ行きます!皆さんと一緒にやりましょう!』 今年のクリストフ・ヌーヴォーは見逃せない!!  

22
Mai

シャトー・ジャンフォー訪問リポート!

3月のとある日、私にとっては第二の故郷であるボルドーにやって来た。24から30歳までの6年間を過ごした街だ。最近、来る機会がめっきり減ってしまった。でもボルドーにも美味しい自然なワインがある! 私が滞在した頃と比べものにならないほど綺麗に整備された街並みが大変美しい。数年前に世界遺産に認定された街だ。ガロンヌ川沿いの夜景が素晴らしい。 安生さんは2度目の訪問だ。確かBMOの弾丸ツアーの時に参加して訪問している。ワインについては大変なパッションを持っている人だ。自分が経験したことをスタッフにも経験してもらいたいのでしょう。今回はスタッフと共だ。 東京のポン・デュ・ガールの安生さんがスタッフのメンバーを引き連れてボルドーにやって来ました。ボルドーで数少ない自然な栽培を実践し自生酵母でワイン造りをしているCH-JEAN FAUXジャンフォーにやって来ました! シャトージャンフォーのオーナーのパスカルは動きながら常に頭が回転している男だ。同じ場所にジッとしていることがない。かつて樽製造会社の経営者の一人だった。今は、自分の故郷であるボルドーワインの復権に全精力を傾けている。 何をやっても凝り性な性格。畑の整備、醸造設備、醸造所の改良など徹底的にやらないと気が済まない性格。 ワインだけに限らない。生ハムも豚を丸ごと買って育てて自分でハムを造ってしまう。これが実に美味しく、ジャンフォーワインにピッタリだ。 ジャンフォーではすべての葡萄を除梗機で除梗する。除梗機に入れる時も葡萄をチェックしながら選別する。破砕はしない。葡萄の粒のみを発酵槽に入れる。 除梗機から出てきた粒をさらに選別して完璧な健全な粒のみを発酵槽の中に入れる。 除梗機から発酵槽まで6人で選別作業に使っている。しかもポンプは一切使用しない。すべてベルトコンベアーで発酵槽の上まで移動させながら優しく重力で上から落とし込む。 発酵槽に入る葡萄粒はまるでキャビアのように美しい。 茎が無いマセラッション・カルボニック醸造のように発酵がおこなわれる。まるでブルゴーニュの醸造元のような細かな作業を行っている。 CH-JEAN FAUXジャンフォーは1312年には既に葡萄栽培されていた。17世紀にはボルドーワインの中で重要なポジションにいた。古文献に確りと記されている。パスカルは買い取る時、シャトーが所有していた斜面など優良畑のみを買取ることに成功した。 ジャンフォーの土壌はサンテミリオンのコトーに限りなく近い。僅かな石灰粘土質の下は古い石灰岩盤になっている。メルローには最適の土壌である。根っ子はこの岩盤に入り込んでミネラルを吸収している。ボルドー右岸の元祖土壌のザ・メルローだ。 ボルドーを愛し、ボルドーテロワールを研究して、ブルゴ-ニュの地質学者クロード・ブルギニョンに土壌調査を依頼、実施。ブルゴーニュ方式の厳密な区画別醸造にこだわり、ボルドー右岸の本物テロワールとメルローを追求するジャンフォー。 収穫も勿論手摘み、収穫された葡萄は傷まないようにカジェットといわれる小箱で醸造所まで運ばれる。 >醸造所まで運ばれた葡萄をパスカル自ら厳しくチェックする。      さあ、パスカルの完璧主義による醸造で造られたジャンフォーのワインを試飲だ。まず、パスカルがグラスを一つ一つワインで洗う作業、アヴィナージュをしてくれた。グラスに付いている香りなどをワインで消す作業を丹念にやるパスカル。   ポン・デュ・ガールの面々も普段店で飲んでいるボルドーワインを造り手の話を聞きながら飲むのは格別なひと時だ。造り手にとっても自分のワインを日本の消費者に語ってくれる人達と過ごす超貴重なひと時である。           JEAN FAUX ROSE ジャンフォー・ロゼ11 品種:メルロー80%、カベルネ・フラン20% 、ジャンフォー・ルージュ用の発酵槽に葡萄をいれてから約一日後に発酵槽の下部に溜まったジュースを抜 き取りソーリー社の2年、3年使用した樽に詰めて発酵させた セニエ方式のロゼワイン。 勿論、自生酵母による発酵。  熟成:そして、そのままシュール・リにて樽熟成。 必要に応じてバトナージュをして、オリの旨みをワイ ンに溶け込ませる。石灰岩盤からくるミネラル感と昆布ダシ系の旨みがたっぷりのロゼ。和食にピッタリのワイン。 LA DAME DE CH-JEAN FAUXラ・ダム・ド・シャトー・ジャンフォー ジャンフォーのセカンド的存在。   品種:メルロー80%、カベルネ・フラン20%、除梗して、コンクリート槽とステンレス槽に分けて区画別に醸造。自然酵母のみ。25日の醸し期間。  熟成:100%樽熟、20%新樽、40%1年樽、40%2年樽にて14か月のシュール・リで樽熟 、タンクで6か月 メルローの果実味と旨みが乗って爽やかさのあるボルドーワイン。     CH-JEAN FAUX BORDEAUX SUP […]

2
Mai

ガメイの最高峰を目指す新人ラファエル・シャンピエ RAPHAEL・CHAMPIER!

リスクを負って独自の蔵を立ち上げた 3世代も続くワイン醸造元に生まれた。それにもかかわらず独自に独立して自分の醸造所を立ち上げた。自分の思うように自由にワイン造りをやりたかったからだ。小さい頃からボジョレーの誰もが尊敬しているブルイイ山の麓に広がるブドウ畑の中で育った。十代後半の頃から近所の醸造家、ジャンクロード・ラパリュのところに顔を出すようになった。自然な栽培・醸造、ガメイ品種の可能性をとことん追及しているジャンクロードのワインに感銘をうけていたからだ。 ガメイなのに骨格もあって、それでいてスーっと体に浸透してしまうワインの美味しさに驚いた。自分もこんな高品質のワインを目指したかった。 ボジョレー最古の葡萄園で造る大チャンス! 11年にLACARELLEラカレルの最高の畑区画が貸しに出された。 このラカレル区画の畑はボジョレー地区でも最も古いとされている貴重な畑だった。ローマ時代から葡萄が栽培されていた畑だ。土壌もシスト、花崗岩、砂状、とボジョレーを代表する地質をこの狭い区画の中に備えている稀有な畑だった。 ボジョレーで最高品質のガメイを造ることに人生を賭けようとしていたラファエルにとってこれ以上の条件を備えた畑はなかった。即、フェルマージ契約(借り契約)を結んだ。本物の最高のワインを狙っているラファエルにとって、こんなに幸運な事はなかった。 静かに燃えるタイプのラファエル、狙ったものは絶対にはずさない!強い意志! 最高のミクロ・クリマ(微気候) 自分の造りたいワインはもう決まっている。 14人兄弟の11番っ子のラファエルは目立たない性格だが芯には強固な意志力がある。 子供の頃から遊び親しんだガメイの葡萄畑、ラファエルはガメイの偉大な可能性を信じている。ガメイはピノ・ノワールにも劣らない繊細さとエレガントさを備えた品種であることを確信している。この信念はジャンクロード・ラパリュより受け継いだ。30歳を超えた今、最良の畑を確保できた。あとは思いっきり挑戦するのみだ。ラカレル区画の畑は特別だ。多分ボジョレー地区で最高のミクロ・クリマを備えているだろう。ブルイイ山の南東に位置して、北からの寒い風をブルイイ山が遮断してくれる。 ボジョレー地区で最も早く葡萄が熟す立地だ。 ラファエルは人生を賭けた。 自然栽培・自生酵母によるワイン醸造 最高のワインを目指すラファエルにとって、ドーピング的な化学物質を用いることなど最初から考えられなかった。 手間暇が3倍はかかる自然な栽培を実施。2年の歳月が過ぎて色んな草花が 畑に生息するようになった。土壌が生きている証だ。フカフカな畑には多くの微生物が元気に生きている。当然、その一部が自生酵母であり多くの種類の自生酵母が元気に生息している。約30種類の自生酵母が醸すワイン独特のホワーとした優しさと複雑味を備えた果実味が表現されている。 手造りならではの繊細な旨み 収穫は勿論、手摘み、醸造用の発酵槽はコンクリート製、除梗なしの葡萄まるごと、スミ・マセラッション・カルボニック発酵。自生酵母のみで発酵させる為に、発酵時の酸化防止剤(SO2)の添加はしない。 熟成は古樽(4年樽)とタンクで9から14カ月熟成するものとがある。 瓶詰時に僅かにSO2を入れる。全く必要のないものは無添加で瓶詰するものもある。 オーダーメイドの手作りでなければできない暖かさ、優しさ、感情が伝わってくるようなワインだ。目指すスタイルはワインとしても骨格を備えながらもスーっと体に自然に入ってしまうエレガントワイン。 L’AMUSE BULL PETILLANT ラミューズ・ビュル’11 品種:ガメイ 葡萄木はすべてセレクション・マサル方式。60歳の古木 (マサル方式の葡萄木は超貴重、ほとんどはクローン方式)収量が40hl 土壌:花崗岩が風化した砂質層が深い区画、 アルコールが軽快で酸を含んでフレッシュなワインができる。 醸造:収穫後、すぐにプレス、自生酵母で低温アルコール発酵、(温度調整する) 残糖が15g位になった時に瓶詰、瓶詰の2日前にオリ引きをする。 そのまま瓶内発酵を続け、ほのかな泡が残る。瓶内熟成で残糖ゼロのセック。 イチゴのような果実味が心地よく、ほのかな微発泡が爽やかさを演出している。 ROSA NATURA ロザ・ナチュラ ’11 品種:ガメイ100% 葡萄木はすべてセレクション・マサル方式。60歳の古木 ラミューズ・ビュルと同じ畑区画。同じ葡萄をロゼに仕込んだワイン。 収量が40hl 土壌:花崗岩が風化した砂質層が深い区画、砂質層が深いと糖度が軽めで酸を含んでいるのでロゼワインを造るには最高の条件を備えた土壌。 醸造::手摘みで収穫後、すぐにプレス、自生酵母のみ、タンクにて低温アルコール発酵、残糖が終わった段階で、一度オリ引きを実行。その後、シュール・リ・フィンヌで、そのままタンクにて熟成。瓶詰は数回に分けて実施、最初は4か月目に瓶詰。 日本に入っているロットは最も長い14ヶ月熟成。瓶詰時にまでSO2の添加なし。 こんなにも優しくエレガントさを備えて、オリの旨みが溶け込んだロゼはない。 口に入れた途端に体内に溶けて吸い込まれていく。グイグイ飲めてしまう危険なロゼ。   DES LURONS デ・リュロン ’11 品種:ガメイ100% セレクション・マサル方式。ここで最も古い80歳の古木がある。 樹齢が古いこともあり収量は35hlと少ない。 土壌:この区画はローマ時代から存在していた畑の一部。 花崗岩が風化した砂質層が最も浅く、すぐロッシュ・メール岩盤(元海底だった)    その下にはシスト土壌も存在している。 […]

27
Mar

小松屋 訪問レポート第2弾! エステザルグ!!

自然派の激旨安ワインを量産するESTEZARGUEエステザルグ農協の原点は? 小松屋メンバーエステザルグ農協訪問 激旨安ワインの原点を知りたくて! エステザルグ農協はTAVEL地区とCH-NEUF DU PAPEに近い南ローヌに位置する。今、この南ローヌの農協は相次ぐ倒産で激変している地方だ。そんな世間の状況と逆行して優良経営を続けている数少ない農協だ。しかも自然な造りの量産に成功した優秀な技術力が持っている。 旨い!安い!自然!三拍子が揃っている 小松屋でもこのエステザルグ農協のワインは大切なヒット商品だ。比較的割高なワインが多い自然派ワインの中で安くて、美味くて、自然という3拍子揃ったワインを造る原点を見にやって来た。 雨あがり晴天に恵まれて気持ち良い朝の訪問だ。 空気も澄んでいる。 土壌・ミクロ・クリマはパップ級 CH-NEUF DU PAPEシャトー・ヌフ・ド・パップに近いエステザルグ村の土壌はガーレ・ルーレと呼ばれる 大きな丸石がごろごろ転がっている。正にパップと同じだ。名門パップ並みの素晴らしい土壌が備わっている。 葡萄木の樹齢も古く、根も深い! 特にグルナッシュ品種は樹齢も古いものが多く。 自然な栽培を昔から続けており根っ子が地中深く入り込んでいる。土壌も微生物などがイキイキしているのを感じる。元気な自生酵母が育っていることだろう。 こんな古木の葡萄木から搾った果汁は、力強く、果実味とミネラルを豊富に備えていることを予想できる。 名門のパップやタヴェルと比較しても決して劣ることはないミクロ・クリマを備えている。 今あるESTEZARGUEエステザルグ・ワインを造り上げた3人の男達 1-炎の探求心・ジャン・フランソワ・ニック エステザルグを現在ある自然派へ方向づけたのは、あのルシオン地方の自然派伝道師ジャン・フランソワ・ニック氏。 この写真は筆者が2001年に撮影したニック氏。エステザルグ農協で働いていた当時の貴重な写真だ。1989年にワイン学校を終えて当農協に就職。ここに来る前はマルセル・ラピエールがいた自然派の本拠地モルゴンにて醸造研修した。 マルセル達の自然派の造りに感動したジャン・フランソワ。 当然、研修した自然派の造りをエステザルグ醸造に取り入れた。 農協の醸造長といえども、雇われの身、栽培にも関わってくる自然醸造を実行するには組合員の同意が必要だった。組合員の農家達も最初は半信半疑だったけどジャン・フランソワの情熱に押し切られ少しずつ始まった。主要農家は10名という少数さが幸いした。普通この段階で農家の反対に合っていたら今のエステザルグは存在しなかった。ここからジャンフランソワの壮絶な試行錯誤が始まった。大量ワインの自然な造りは、まだ誰一人として挑戦してないからだ。研究・工夫・試作と安定するまで10年の歳月がかかった。 その後、ジャン・フランソワ・ニック氏は2002年よりスペイン国境ぞいのルシオン地方に畑を買い独立、今では南仏NO1の自然派と誰もが認めるFOULARDS ROUGEフラール・ルージュを立ち上げた。南仏自然派の発展に無くてはならない尊敬に価する人物だ。 途轍もなく美味しいワインを造れる人は、世の中にそう沢山いない。ジャン・フランソワのワインは繊細で細かくて上品なワインだ。そんなジャンフランソワを育てたのは間違いなくエステザルグの経験だろう。大量ワインを自然に造る至難な業を完成させる中で、多くの事を学んだ。 2-エドワード・ラフィット 現LE BOUT DE MONDEル・ブー・ド・モンド醸造の当主 エドワードはジャンフランソワと共にこのエステザルグ農協で自然な造りを実践してきた人物。ジャンフランソワ独立後は、このエドワードがこのエステザルグ農協の醸造長として4年間を務めた。   SO2の添加量もさらに減らし、栽培も農家と共になって自然栽培を増やし諸々の改良を続け、畑ごとの多くの新キューヴェを造りだした。2005年ジャンフランソワの後を追ってルシオン地方に畑を買ってLE BOUT DE MONDEル・ブー・ド・モンド醸造を 立ち上げた。素晴らしいワインをリリースしている。 3-ドニ・デシャン そして、今はドニ・デシャンがいる。やはり美味しいワインの裏には人物を通した物語が存在する。ドニもジャン・フランソワ・ニックとエドワードと共に長年一緒に探求してきた人物だ。優しい性格は栽培家からも絶対の信頼を勝ち得ている。業も一流だ。 エステザルグの主要な葡萄栽培農家達とさらに密なる関係を築いているドニ・デシャンDENIS DESCHAMPS。 自生酵母で発酵させる自然な造りには、健全な畑仕事が不可欠だ。ドニ・デシャンは二人の先輩のやって来た事をさらに深く栽培方面からも一層の完成度をあげて、激旨安ワインに磨きかけている。ドニの探求心と知識は一流だ。自然度をあげて揺るぎない自然派ワインを完成。 小松屋一行ESTEZARGUEエステザルグ醸造所内見学   小松屋の販売する自然派ワインの中でも 日常的に飲めるワインとして販売量も多く無くてはならない重要なアイテムがこのエステザルグには多い。 畑を見て歩き、エステザルグの歴史を聞き、醸造所をみてエステザルグの偉大さをさらに深く感じた。 価格が高くて美味しい自然派を造るより 価格が安く美味しい自然派を造る方がもっと難しい。 この巨大タンクのワイン醸造をSO2の添加なしで自生酵母で発酵させる“業”を持っているのは世界中でここエステザルグだけだ。 自然!旨い!安い!3拍子揃った貴重な ワインはここで醸造される。 この巨大タンクにバクテリアが発生したら。タンクごと捨てなければならない。 […]

25
Mar

大阪・小松屋スタッフが南仏ドメーヌ・スリエ訪問

小松屋と言えば大阪で自然派ワインに特化している業務用酒販。藤田社長のその熱心さには驚くばかりだ。スタッフを惜しみなくフランスまで研修の旅に送りだす。今回はパッション・エ・ナチュール店長の富岡さん、浜里さんなど3人がやって来た。そして、岩チャンが引率。 やはり現場を知っている人は強い。実際に店で販売しているワインの畑を自分の足で歩いて土壌に触れて、造っている人の顔、声、人柄に触れてその場でワインを試飲して初めて解ることが多い。理屈を超えたこの感覚的理解が最高の宝となる。五感を通じて自然派を掴む。皆、スリエのオーナーのレミーさんの話に耳を傾ける。熱心にメモをとる。 サンソーの畑に近づくと香草の香りが一面に広がっている。 地元ではガリグと呼んでいる香草が密集している野生低木草畑である。この香り成分が葡萄の皮に付着してワインの中に入っていく。地元のソムリエはその香りもガリグと呼ぶ。 今日は大阪小松屋と東京オザミワールド社の共同オリジナルワイン“Cuvee Bou キュヴェ・ブー”を造るスリエ醸造所を訪問。キュヴェ・ブーは30歳のサンソーで醸す。そのサンソー畑を五感で触れた。畑の廻りには野生タイム・野生ローズマリなど香草がいっぱい生息している。      小松屋スタッフの皆さんも実際に野生香草を採って触って、嗅いでみる。あの“キュヴェ・ブー”のワインの中にある香りと同じである事を確認。貴重な体験だ。土壌とはこれら畑の環境にある草花や生き物も含まれている。そんな事を五感を通して理解できる。 やや暖かくなる五月頃になると、野生ローズマリやタイムなどの香りが畑一面に漂っている。実に爽やかな香りだ。何時間でも畑に滞在したくなってしまうほど心地よい。こんな感覚も実際に来てみないと解らない。これもまさしくテロワールの一部。      やっぱりワイン造りに最も重要なのは“人”である。ドメーヌ・スリエのレミーさんは南仏らしく実に明るくて、心地よい人柄だ。いつも笑顔を絶やさない地中海人、ラテン系の人柄。そんな人柄がそのままワインの中に表現されている。明るくてダイレクトなワインだ。 明るいだけでは美味しいワインはできない。実に実直な面を備えている。畑仕事を着々とこなしていく。28ヘクタールをビオで栽培することは並大抵なことではできない。   南仏と言えば葡萄畑とオリーブ畑の風景が典型的だ。最近、このオリーヴ畑が減っている。スペインから安いオリーブオイルが入ってくるので太刀打ちできない。レミーは先祖代々のこの景色を変えまいとオリーブ畑も一生懸命栽培している。品質高いオリーブオイルだ 。    このオリーブ畑はサンソー品種の畑の横にある。ここサンシニアンは夏になると南仏の太陽でかなり暑い。畑仕事の合間の一休みはこのオリーブ畑にやってくる。オリーブの葉で日陰となっている草の上に寝転んでの昼寝は最高だ。風通しが良くこぼれ日も入って気持よい。 このスリエ家は1610年よりここサンシニアンの地で葡萄を栽培している。1960年代より多くの栽培家が除草剤や殺虫剤、化学肥料を使いだした。お父さんはそんなものに一切目をくれず自然な栽培を続けてきた。400年に渡って一度も化学物質が畑に入ったことはない。 陽気なお父さん。自然が大好きで、ビオ協会が存在する前からずっとビオを実践している本物。ビオの原点の人達だ。彼らのような農家がフランスには多く存在する。フランスの奥深い農業文化を感じる。 ワイン造りの為に完璧な条件を備えた醸造所・熟成庫 スリエの醸造スペースは実に清潔で整備されている。一部のキューヴェを除いて、アルコール発酵はステンレスタンク内で行われる。この巨大な醸造所はお父さんとレミーで何と10年の歳月をかけて自分達のみで造り上げた建物だ。 設計も自分でやり、葡萄の搬入も重力で発酵槽の中に落とし込むように設計されている。 樽熟成庫もアルコール発酵スペースと同階でありながら地下になっている設計。温度も湿気も理想的になっている。ワインを移動する時も簡単にできてワインにストレスがかからないように設計されている。南仏でこのような地下ワイン熟成庫を持っているところは数少ない。几帳面なスリエ親子が時間をかけながらコツコツと造りあげてきた醸造所だ。ストック場もたっぷりあり近所の醸造元仲間のワインもストックさせている人の良いレミーだ。 家族のみで10年かけて建設した醸造所・熟成庫 400年前よりずっとビオのスリエを利く 15品種を栽培するスリエ家では当然キューヴェの種類が多。その中の一部を紹介しよう。 1-MARSANNE 08 白 マルサンヌ品種 標高が高いので酸がキリっと光っている。黄金色の色合い、 野生香草のガリグな香り、蜂蜜のような良く熟した果実味。 石灰岩盤の旨味も爽やかで心地よい。 2-CUVEE MATHILDE 12キューヴェ・マチルド ST-CHINIAN BLANC 数少ないサンシニアンの白、グルナッシュ・グリ80% マルサンヌ20%の構成。 12年は収穫前の雨が功を奏して、実に爽やかに出来上がっ  た。ヴィーフの表現されるほどキリッとした酸が素晴らしい。 とても南仏の白とな思えないフレッシュな白ワイン。      3-ST CHINIAN ROSE 12サンシニアン・ロゼ スリエの12年のロゼは特別に爽やかで、透明感のあるクリアな果実味が心地よい。 シラー、グルナッシュ、ムールヴェードルの3品種はセニエ方式、 サンソーは直プレス方式でジュースを絞って発酵させたもの。     4-GRENACHE 12 グルナッシュ グルナッシュ100%、40歳のグルナッシュ。 12年はグルナッシュを完熟させるのに難しかった。 果実味に爽やかさを含んでいる。ミネラルの旨味も心地よい。 5-MERLOT […]

5
Mar

今、南仏は春を告げるアーモンドの花が満開

ルシオン地方の富士山”カニグ山”をバックに満開のアーモンド 今年の冬は南仏と云えども寒かった。雪も降った。 寒さの上に強風 タラモンターヌが吹くともう10倍の寒さになる。その体感で極寒の中、剪定作業はもう体の芯まで冷えてしまう。 誰もが待っていた春の訪れだ。 南仏では葡萄園の小道によくアーモンドの木が植えられている。広大なコルビーエルの葡萄園の中にポツリと咲く アーモンドの花は遠目には桜に似ている。 我々日本人には心に響くものがある。時間に追われている 醸造元訪問中でも一時を忘れ、車を止めてワビサビの世界に浸りたくなる。思わずシャッターをきる。 アーモンドの花と共に春を告げる明るい花 ミモザが咲きだした。

21
Fév

2013年ロワールにおける各種自然派ワイン見本市レーポート PART-1

RENAISSANCE DES APPELLATIONS ルネッサンス・デ・アペラッション ルネッサンス・デ・アペラッションの会場風景、超満員状態の盛況だった。 MYRENE BRUミレーヌ・ブリュさん、が入口の最初のブースで張り切っていました。何て明るくて元気な人なんだろう。 子供の頃からの夢“ワイン造り”を実現して今は楽しくて楽しくてどうしようもない、という感じの女性だ。 2008年が初リリースというのに途轍もなく美味しいピュアーなワインを造る。やはり、好きでパッションがあるから、並々ならぬ努力を惜しまない姿勢がこんなに美味しものを新人なのに造り上げてしまうのだろう。パリの自然派ビストロの老舗バラタンでも人気ものだ。 2月初旬は自然派ワインの見本市が多数開催された。アンジュの街でサロン・デ・ロワールのオフ見本市として、大小合わせると約10か所ほどで開催された。ルネッサンス・デ・アペラッション、そしてソミュールで開催されたディーヴ・ヴテイユ。この二つが巨大自然派見本市。そして、両グループに入れない新人醸造家などが小規模見本市を別々で開催していた。 ルネッサンス・デ・アペラッションでは120社を超える醸造元が出店してすべてのブースが人で満杯状態、なかなか飲みたい醸造元ブースに近づけないほどだった。 2013年の自然派ワインの勢いを感じる熱気に溢れていた。 出店者の中には、ディーヴ・ブテイユと両方に参加している醸造家が多くいた。印象に残った幾つかを紹介しよう。 南仏ラングドックのMYLENE ・BRUミレーヌ・ブリュ   LADY CHASSELAS レディー・シャスラ ミレーヌ・ブリュさんのワインは温かみがある。情熱が伝わってくるようだ。レディー・シャスラは70歳のシャスラ品種から造られている白ワイン。 石灰岩盤の土壌の中に根が深く入り込んでいる。だから石灰岩からくるミネラルが酸の代わりにフレッシュ感を演出している。 南仏の白ワイン醸造は、酸を残す為にSO2を添加してマロラクティック発酵を止めるところが多い。でもミレーヌさんはそんな妙なテクニックは使わない。自然にマロラクティック発酵を行っている。それでもミネラル感があるので爽やかで、かつマロのお陰で旨味がのった潮っぽい白ワインだ。ほのかな甘みがあり日本酒に近い感触で和食にピッタリだ。 葡萄園に比較的近い地中海に面した街BOUZIGUESブジーグ村ではカキの養殖場がある。 地元の新鮮なカキを食べながらレディー・シャスラを合わせると、涙がでるほど美味しい。地中海カキは塩分が高い。潮っぽいレディ・シャスラとはピッタリカンカンだ。 このシャスラ葡萄木はクローンではない。マサル方式の葡萄木だ。シャスラの原木だ。 しかも15HL/Hの収穫量。ボルドーやブルゴーニュのグランクリュより少ない収量だ。 旨味が乗っているのは当たり前だ。 年間たった1200本しか生産していない希少なワインだ。 収穫は勿論,手摘みで、圧搾は小型垂直式の古式プレス機でゆっくり重力圧をかけられるので葡萄の皮を傷つけることなく、皮から汗の如くやさしく流れ出た上品なジュースのみを絞ることができる。自然酵母で発酵。本当に小規模でないとできないとても贅沢な造りをしている。このワインの事を書いているだけで飲みたくなってきた。 RITA リタ ミレーヌさんのネーミングセンスの良さには感心する。リタは二人の女性をイメージしている。一人は聖女リタである。過酷で悲惨な人生、絶望的な状況にある人々を救いだす聖女リタにこのワインをなぞっている。 もう一人はハリウッド女優のリタ・ヘイワースにも由来している。ギルダという映画の中で、長手袋を脱ぎながら妖艶に踊るシーンがある。そのシーンで赤い手袋を脱ぐイメージをラベルで表現している。 私の大好きなカリニャン品種100%だ。造り方次第で南仏のピノノワールと云われる程、繊細なワインができる品種だ。粘土石灰質土壌に育つ50歳の樹齢。北向き斜面の涼しい畑。除梗なしのセミ・マセラッション・カルボ醸造からくる独特の爽やかでピュアーな果実味が心地よい。過酷な人生の局面で、厳しい状況にある時は是非このリタを飲んで癒されてほしい。そして女優のように優雅なひと時を過ごしてほしい。   2012年10月に東京の下町・根岸の酒販店ESPOAよろずやの御一行が訪問 日本ではESPOAグループが輸入している。 エスポア店はお客さんと一緒に廻るワインツアーを企画している。造る人と飲む人が面会してひと時を過ごすと云う感動とハプニングがある楽しいツアーをやっている。 このツアーの時に、ミレーヌさんは日本行きを決意した。 遠い日本から来てくれたお客さん達へのお礼とお返しに。 今年の4月に日本へ行く。ミレーヌさんには二つの夢があった。 ワイン造りと日本へ行くことだった、その二つとも実現してしまうという幸せな人だ。 4月5日から10日間ほど日本全国を廻ります。 自然派好きな皆さん! 是非ミレーヌさんと彼女のワインを飲みながら楽しいひと時を過ごしてください。元気でますよ! 問い合わせはESPOA本部 06-346-3806 中島さんまで。

3
Fév

自然度200%・自然派の極を走るフィリップ・ジャンボン PHILIPPE JAMBON

今回は自然な造りのトップを走るジャンボン、昨年の収穫レポート中心にジャンボン像の一隅に光りを。 ブルゴーニュ・ボジョレ中で最も遅い収穫をするジャンボン 10月5日、ブルゴーニュ、ボジョレ中の誰もが収穫を終えてアルコール発酵も終わってプレスをかけている時期、流石、極を走るフィリップ・ジャンボン!やっと腰を上げてブルゴ-ニュ中で最も遅い収穫を開始した。ワイン造りのすべての点において、絶対に妥協をしないフィリップ。 畑仕事、収穫、醸造、熟成、それぞれの段階で極限まで理想を追求するフィリップは自然派の世界遺産と云っていいだろう。醸造元仲間の間でも『そこまでやるか?!』と云わせるほどの“極”を走る。極を走らないと分からないことが沢山ある。フィリップは開拓者だ!貴重な存在である。常人には極限までやる勇気はない。『醸造上そこまでやっても大丈夫なんだ!エッ?』という事を実践で証明している。アルコール発酵を5年間も続けたり、揮発酸が発生してもフィリップは動かない。 数年後にはちゃんと飲めるワインになってしまう。 夢追い人・フィリップ・ジャンボン 畑仕事も完璧にやりたいフィリップにとって4ヘクタールは多すぎる。完璧にやる為には、畑を減らさなければ、と考える。減らす為に、葡萄木を抜いてしまっている。当然減らせば収穫量も減る。勿論、収入も減る。でも、フィリップにとってはそんな事は重要なことではない。普通の人の経済的観念は持ち合わせていない。究極にピュアーなヴァン・ナチュールを造りたい!夢追い人のフィリップがいる。 朝日が昇るジャンボン畑、早朝の収穫・近隣の自然派が応援にやって来た 早朝の朝靄がかかった畑に朝日が昇った。なんて幻想的な空間なのだろう。 フィリップ・ジャンボンの畑はボジョレの最北端、プイィ ・フィッセに限りなく近いマコネとの境界線上にある。今日はジャンボンの畑の中では唯一平坦な畑だ。 他のすべての畑は丘の斜面に位置している。そちらの方の畑は、今年は寒波と雹にやられて50%の収穫減だ。2008,09,10と3年連続で雹にやられて30%ほどしか収穫がなかった。昨年、12年はやっと普通の収穫量30hl/hが収穫できた。また、今年は50%の収穫減だ。夢追い人も正念場に差し掛かっている。厳しい生活となりそうだ。やや心配になる。 近隣の自然派醸造元の仲間も心配になって応援に駆けつけてくる。フィリップのお陰で勇気づけられて自然な造りを始めた醸造家が多い。 また、熱狂的なフィリップ・ジャンボンワイン・ファンも応援に駆けつけていた。 何とか持ち堪えてほしい! Guichard Jérômジェローム・ギィシャール、Guy Blanchardギィ・ブランシャールの二人も応援にやってきた。この二人もフィリップ・ジャンボンから絶大な勇気をもらって自然なワインを造り始めたのだった。 日本からは、オザミ東京の田中さんも応援に駆け付けた。 5年前にフィリップが日本にやって来た時、連日連夜のようにオザミ店で飲み明かした。 高き理想・誇り! 武士は食わねど高楊枝! フィリップを支える人々! 佳き友と佳き妻(カトリーヌ)に囲まれて夢を追い続けるフィリップ・ジャンボン。 二人の間には息子2人と娘の3人の子供がいる。 カトリーヌは云う 『家には4人の子供がいるようなものよ!』 にっこり笑い飛ばす明るい カトリーヌ。彼女がいるから フィリップは夢を追い続けることができる。 カトリーヌ・ファンも多い。 朝、7時に始めた収穫、10時に一休みがはいる。 シャクトリー(ソーセージ、生ハム類)チーズ、パン、勿論ジャンボンのワイン、チョコレートなど甘いもの、等が提供される。 皆、友人ばかりなので暖かい空気が葡萄園にたちこめている。 昨夜、飲んだワインがまだ若干残っている。体を動かすことで 体内のアルコールが物凄いスピードで消えていくのを感じる。 2012年産のフィリップ・ジャンボン収穫完了 醸造家仲間や熱狂的なジャンボン・ファン達と愛情あふれる雰囲気の中で 通年の50%の収穫量とは云え、無事に収穫が完了した。 収穫中の葡萄園に流れるこの暖かい空気は、他の醸造元では絶対に存在しない“愛情”で詰まっている。葡萄果汁にも、自然酵母にもこの暖かさが伝わっているのだろ。ジャンボンのワインには他では絶対に味わえないホワッとした心が落ち着く暖かみがある。 オザミ東京の田中さんもこの暖かい空気の中にすっかり溶け込んでいた。 オザミのお客さんの中にも、このフィリップ・ジャンボン・ワインの熱狂的ファンがいるのを田中さんは知っている。この暖かさがワインの中にあって、 お客さんにも通じているのだろ。 この暖かさの原点を、田中さんはこの葡萄園で収穫しながら発見した。 ←収穫された葡萄はポンプを使わず、人力で発酵槽の中に入れられる。 発酵槽の上から落とし込むこの作業も実に大切なことである。 収穫を終わった後は、延々とアペリティフが続き多くのワインが開けられた。 それぞれの醸造家が自分のワインを持ち込んで皆で楽しんだ。 そして、最後はカトリーヌの手料理を皆で分かち合った。 何の世界でも、手作りしか出せない希少な価値が存在する。一点の濁りのないプュアーな ワインの中に、多くの愛情が詰まったワイン、 それがフィリップ・ジャンボンだ。

7
Jan

2013年は自然派ワインが次元の違う世界へ突入する

12年における自然派ワインの広がりは実に大きいものだった。もう自然派ワインという範疇を超えて一つのワインのスタイルとして認知されてきたと云った方がよい。 つい最近までは自然派ワイン専門ビストロやレストランなど狭い世界で限られた人達の中でしか飲まれなかった時代だった。 そして数年前からミッシェラン三ツ星レストランや3年連続世界第一位レストランになったデンマークのNOMAなど、テースティング能力があり視野の広いソムリエがいる一流店が自然派ワインを扱うようになっていた。 12年はその枠がさらに拡大して、“品質重視”をポリシーにおくビストロやレストランが率先して自然派を扱い出した。 それを期に、今まで無視し続けていたワイン雑誌が一斉に自然派ワインを取り上げて称賛しだした。ワイン評論家も自然派ワインを高得点で評価しだした。 自然派ワイン(VIN NATURE)と云う言葉を使わずテロワール・ワインとしての“造り”の違いを評価している。 自然派ワインがフランスから世界へ輸出が拡大 12年は蔵元から世界に向けての輸出も大きな広がりを見せた。北欧諸国・ノルウェー・スエーデン・フィンランド、そしてデンマーク、さらにドイツなどへの広がりが著しかった。そしてワインのうんちく文化の国・イギリスが自然派に動きだした。 12年5月にロンドンで盛大に自然派ワイン見本市が行われた。そして何と言ってもアメリカが自然派ワインに本格的に目覚めたという感じだ。 12年は多くの自然派醸造家がアメリカまで市場開拓に行っていた。 アジアの大国、中国へも自然派ワインの輸出が始まった。上海には自然派ワイン専門のフレンチ・レストランも既にあり結構繁盛している。 まだ僅かではあるが韓国、台湾、シンガポールにも自然派ワインが輸出されだした。 3年前までは、フランス国内のコアな自然派ファンと日本輸出が自然派醸造元を支えてきた、と云っても過言でない時代があった。 この自然派ワインの広がりを見るに、自然派ワインの発展に全精力を費やしてきた我々にとって心から嬉しさが沸いてくる思いである。 13年はさらに大きく伸びることが予想される。 自然派ワインの造り手が急増している 造り手の状況も、大きく様変わりしているのを感じる。 自然派が初期から数年前までは、特別な人達が個別に自然な造りを孤立して造っていた時代。マルセル・ラピエールを中心にグループが形成されてきた。 そしてワインライターのシルビー・オジュロやカトリーヌ・ブルトンがデーヴ・ブテイユという自然派ワイン見本市を開催して以来、孤立していた自然派ワイン醸造家同士の横の繋がりが一挙に増えた。 ディーヴ・ヴテイユに匹敵する大きな見本市、ル・ヴァン・デ・ザミ、ヴィニ・シールキュスなどが近年形成されていった。 その他にもディーヴ・ブテイユ系の横の繋がりからフランス全土の各地方の気の合った醸造元同士がグループを結成して、約30箇所でミニ・自然派見本市開催されるようになった。 例えば、シェ・アン・シェ・ロートル(シャブリにて開催)、ボージョレーヌ(ボジョレ)、ルミーズ(ローヌ)、フェスティヴァル・ドゥ・ヴァン・ナチュール(ラングドック)など他多数あり。 こんな具合に、ほぼ2週間ごとに、どこかで自然派ワイン見本市がフランス中で開かれている。こうした継続的な見本市で自然派ワインに目覚めるファンが着々と増えている。 この様な見本市で知合った醸造家同士の情報交流のお陰で自然派ワイン全体の品質もますます高上しているのも見逃せない。 こうした活発な自然派ワイン見本市に影響されて、自然派醸造家がフランス全土で増えている。 13年は新しい波 ヌーヴェル・バグがやってくる! 新しいスタイルの自然派が発生している。 今までのディーヴ・ブテイユ系から分派していった小さなグループではなく、彼らとは直接的に全く接点のない若手醸造家達が増えている。 あるいは反ディーブ・ブテイユ的な自然派醸造家も増えている。自然派ワインの元ファンだった人達が転職で醸造家になる人も多い。 また、今まで農協に属していた人達が、農協を辞めて独立する人達も急増している。 彼らの共通点は比較的年齢が若いこと、自然が好きで、地球を汚すような作業をしたくないと考えている若者達。彼は気張ることなく普通に栽培も醸造も自然にやることを最初から決めている。 今までの自然派グループとは全く縁がなく、ディーヴ・ブテイユ系は何となく自分達とは違うなと違和感を感じている人達。 デイーヴ・ヴテイュ系のいわゆる自然派グループもメンバーが増えすぎてこれ以上メンバーを増やせない状況になっている。 若手醸造家から見ると、『何かチョット閉鎖的で、有名自然派醸造家もいて、チョット近寄りがたく、堅苦しい。』と思っている若手も多い。 今までの自然派醸造家とは全く違ったアイデアでワイン造りに取り組んでいるグループが誕生している。 その中の一つを紹介すると、南フランスのニーム近辺で、小さな新人醸造家がグループを組んで素晴らしい自然派ワインを造り上げている。 素晴らしく美味しくて、価格も安く、アルコール度数も比較的低くスイスイ入ってしまうワインのスタイルを造り上げている。彼らは云う『昔、フランス人が1日2リッター程、飲んでいた頃のワインのスタイルを復活させたいんだ!』つまり、アルコール度数も低く、その割に果実味も乗っていて、さわやかさもあって、まさに水代わりにグイグイ飲めた時代のワインのスタイルを狙っている。しかも『価格は誰でも買えるように安くなくてはダメなんだ。』と言い切る。 美味くて、グイグイ飲めて、自然で、安い、と4拍子揃った自然派ワインを目指している。 このメンバーを引っ張る3人、トップはMONT DE MARIEモン・ドゥ・マリーのテェリーだ。元コンピュウーター技師だった。 安くする為に徹底した経費管理をしている。栽培を完璧にビオ、アルコール度を低くすること、心地よい果実味を残すこと、自然酵母でSO2を瓶詰時に少々、必要なしと判断した時は無添加。旨い! グイグイ!自然!安い!4拍子揃ったこの夢のようなワイン造りに賛同して一緒に行動するのは、MAS LAU・マス・ローのローラン、VALLAT D’EZORTヴァラ・デゾルのフレデリックだ。 この彼らのワインは間違いなく自然派の動きに一石を投じるヌーヴェル・バグになるだろう。応援したい。 13年も世界の困難な経済状況をモノともせず伸び続けるだろう! 世界的経済不安の中、12年も爆発的に市場を広げた自然派ワイン。 特に欧州の経済は困難を極めている。そんな状況下をモノともせずに、造る方も、売る側も伸びているのは、明らかに理由がある。 人々の価値観の変化が着実に進んでいるのを証明している。最近の若手醸造家の動機として、『地球を汚すような栽培はしたくない!』という言葉に象徴されていると思う。 20代、30代の人達にとって、地球の存続、生態系の存続への不安は意識下のところで深く刻み込まれている。昨年の年頭レポートで述べた、『カルチャー・クリエーティヴ層の人達が急増中』の実態がさらに進んでいると思う。人々がモノを消費したり、食べたりする為に購入する際の価値観が大きく変化している。ただ美味しいだけでは購入しない。 どんな栽培をして、どんな造りをしたのか、トレサビリテが益々重要性を帯びてきたと云う事だと思う。単に有名だったり、評価が高いだけでも購入しない。 地球にやさしい造りの本物度が要求されている。ワインの世界には、宣伝・広告費に莫大な費用を費やす企業化した超有名銘柄もあり、そんなワインは中国、ロシアに代表される国々で問題なく売れていくだろう。美味しいから売れているのでなく、超有名であることに価値がある世界の商財だ。自然派ワインはあくまで農産物である。 有名無名に関係なく畑で造られるものなのである。経費の殆どは畑に費やされる。どんなに贅沢に経費を使って、ブルゴーニュなどの高い土地代を考慮しても一本3万円を超えることはない。 […]

12
Déc

FESTIVIN 2012

昨年は第2回目の開催にして約1400名の来場者があったFESTIVAN! 今年もこの自然派ワインのお祭りはさらに盛り上がること間違いなし!との前評判を聞きつけて 参加してきました!12月9日。 初のレポートをアップします! 今回の会場は渋谷ヒカリエ。 今年できたばかりで、もうすでに渋谷のランドマーク的存在になりつつある今注目の商業施設です。 渋谷駅から直結していて交通の便もよく、今年はそこのワンフロア ヒカリエホールを貸し切っての開催ということだけあって 来場者の皆さんのテンションと期待もマックスに高まっている様子でした。 会場に入るとそこは「ワインのお祭り」らしく、ステージから流れてくる音楽と 出店されている飲食店やインポーターの皆さんの掛け声などで活気に溢れていました。 予想していた通り会場は外の寒さとは裏腹に熱気でカナリ暖かくなっていたので、やはり薄着で来たことは正解だったと頷きながら中へ進むと大きなホールのその奥にはステージが!そしてその裏にあたる場所にもブースが続いているではありませんか。 とにかく広い広い!そして、とても興味深い料理とワインの種類の多さにビックリでした。 今回のフェスティヴァンも一部と二部に入場がわかれており時間の制限はそれぞれ3時間半。 入場して間もなく、おそらく全ての人が自分の興味ある全てのブースを堪能するには時間が足りないということを悟ったと思います。 感想としては、このイベントを3日間くらいにわたってやってもらって余すことなく楽しんでみたい! 残念なのは、人間が3時間程度で一人当たり消費出来る飲食の量がだいたい決まっていること。 自然派のワインと関わりある興味深い飲食店の味を全て味わうことは出来ませんでした。 すごく残念!全部食べたいのに!!飲みたいのにー!!! 参加店舗リストの中には、東京じゃなかなか味わえない大阪うずら屋さんや、長崎のアンペキャブルの名前もありました。 そして真っ先に走って行った飯田橋の兄貴!自然派ワイン界の兄貴!宗像さんのお店メリメロ出店ブースには子豚ちゃんの丸焼が!! 奥のブースの入り口では商店街の魚やさん顔負けの掛け声で呼び込むオザミの丸山さんがローストビーフを元気にサービス! その隣には、若干丸山さんに圧倒されている様子の順子さん率いるヴィヴィエンヌチームが! これまたとびきり美味しいクスクスを提供していました。ホッと一息できる。さすが癒し系ヴィヴィエンヌ! パリの自然派ワインブームの火付け役となったビストロ、ヴェールヴォレを東京目黒で再現し今東京一熱い場所を提供するヴェールヴォレ・ア・トーキョー。 このブースでは苦手な人にも必ず美味しいと言わせる全く癖のない絶品ブータンノワールが! 造り手が来日するとこぞって立ち寄る下町の名店!山利喜のモツ煮込みも! どおする?どおする?なに食べる?なにから飲む?? なーんてやっているうちに3時間はあっという間に過ぎてゆきます。 インポーターブースも負けてはいません。 野村ユニソンブースでは、竹澤部長みずから立ち寄ったお客さまに本当に熱心に!ワインの説明をしていました。 ワインが大好きで、情熱をもって知ってもらおうと必死で話しているお姿は感動ものでした。 台湾から助っ人で来ていたレベッカさんとのコンビも最高!なぜか二人の会話は楽しいフランス語です。 そんな良い雰囲気のなか皆で記念撮影をしていると男性が一人乱入してきました。 そうです!今回も出品があるシリル・ル・モワン!! なんでこんなところにー!? 野村ユニソンブースはますます熱気を帯びていきます。 BMOブースでは、やっぱりこの方の笑顔に癒されます。聖子(まさこ)さん。 いつも美味しいワインを皆さんに惜しみなく提供してくれます。 この時、彼女がサービスしていたのはムーレシップ。 前回、アンドレティソ来日試飲セミナーの試飲会場で試飲をした時にも大好評を博していました。 わたしが住んでいた南フランスでも!ローヌでヴィニュロンを目指す友達の家でも!パリの自然派ワインカーヴでも! 誰かがこのワインを今いちおしのワインなんだといって出してくるそんなワインです。 あの!ラングロールが大人気になっていった行程と同じような勢いを今感じます。 BMOに置いてあるワインには共通してそんな魅力があります。 フランスでも自然派ワインが大好きな友達が知り合いのホームパーティーに持っていくような… 是非みなさんにも、そんな一本をトロワザムールでみつけてもらいたいものです。     今回、このフェスティヴァンで自然派ワインを普段あまり飲んだことがないという20代の女性と知り合いになりました。 彼女に聞きました。この会場で一番飲みやすくて美味しいと感じたワインは何でしたか? 彼女に連れていかれたのはイーストラインブースでした。 そこで、彼女が指をさしたワインはなんと!モーペルチュイのロゼ発泡ワインでした。 自然な甘みがスルッと喉を通過して心地よい後味。 酸味と果実味のバランスが抜群でとにかく美味しい!本当に美味しいネ!改めて声をあげ合いました。 フランスへ行って、食事の最初に飲む発泡だけが美味しいわけじゃない、最後に飲まれる発泡こそがとてつもなく美味しいってことに気づく。 […]

20
Nov

CPV8社 合同自然派ワイン試飲会開催 今、名古屋が熱い!!!

遅ればせながら10月に行われた名古屋試飲会レポートをアップします!   名古屋と言えば、味噌煮込みうどん、味噌カツ、手羽先などなどB級グルメの王道ながら、ワインの世界は、 正統派ボルドー、ブルゴーニュのグランヴァン、有名シャンパーニュなどの正統派王道を歩むマーケットだと感じていたが、ここ数年の名古屋での自然派ワインの広がりは凄い !!!  La cabotte, innoverなどがいち早く自然派を取扱いはじめ、レストランバーMORRIS、フレンチの老舗 レ・ミルポア、そしてホテルオークラの桃花林などでも自然派ワインが普通に飲める状況になってきた。  もともとワイン文化の高い名古屋、だからこそ、今更自然派ワインが入りにくい環境にあるかと思われたが、スーッと水がしみ込むように自然派ワインの取扱いの飲食店、酒販店が増えてきている。 今回、10月2日にアイリス愛知で開催したCPV合同試飲会には、野村ユニソン㈱、BMO㈱、イーストライン㈱、ウエストエンドジャパン㈱、㈱富士インダストリーズ、(有)クロスロード、日仏商事㈱、㈱サンフォニ―の8社が出展、12時の試飲会開始から17時の試飲会終了までずっとひっきりなしに来場者があり、熱気溢れる試飲会となった。また、試飲をした方々が素直に「美味しい」と評価してくれた。 名古屋、そしてその周辺地域の自然派ワインは爆発的に広がっていく予感が。。。 野村ユニソンブースでは、竹澤本部長自ら熱心にワインの説明。 ソミュール・シャンピニ―の新蔵元、ティエリー・ジェルマンや、2011のマルク・ペノ、アレクサンドル・バンの希少な赤、そして大御所、クロ・ルジャール、パカレ、ジャンボンなどを紹介。 来場者からは、安定した自然派ワインが多いとの高評価を受けていた。 クロスロードの有馬さんも絶好調! コート・ド・ブランのモング―村で造られるChampagne Jacques Lassaigne*ジャック・ラセーニュ、ボジョレーのラパリュの造るアンフォラワイン、ルーション地方のクロ・レオニーヌなどを紹介。 ワインもさることながら有馬さんのキャラクターも受けていた。 そして、今回、来場者を驚かせた超自然派ワインを揃えて参戦したのが日仏商事! あの自然派アルデッシュの自然派、ル・マゼル、ラングドックのマタン・カルム、ロワールのカトリーヌ&ピエールブルトンなどを紹介。 このブースも大人気! BMOの鎌田さんが一生懸命接客中。 本年来日もした、ジャンフランソワ・ニックのフーラル・ルージュ、その弟子ポトロン・ミネ。 ラングドックのムレシップ、ボジョレーのクリストフ・パカレ、マコンのヴァレットなど洗練された自然派ワインを紹介。オリヴィエ・クザンも登場! 一番活気のあったのがイーストラインブース。 出展ワインのボリュームも凄いが、門脇さん、佐藤さんの夫婦漫才コンビのトークも熱く、最初から最後まで人が溢れていた。 ワインは、ロワールの鬼才ジャンピエール・ロビノの ランジュ・ヴァンや、フランスでも珍しい南西部の ニコラ・カラマン、パトリック・ロルス、プラジョルなど個性豊かな数々のワインを紹介。 サンフォニーブースは大園氏が担当。 グリオットから独立したセバスチャンの新しいドメ―ヌ、ババス、トゥレ―ヌの新星女性自然派生産者、マリ―・ティボー、そしてビオディナミの大御所、 ミッシェル・オジェのメゾン・ブリュレなど好評。 試飲会初参加!富士インダストリーズ(FICワイン)の長瀬さん。 ラングドックの高品質リーズナブルワイン、グレ・サン・ポールが大好評! カリニャンの古木から造られる、日本初入荷蔵元、 カラボットの評判も良かった。 ウエストエンドジャパンブースでは、上柳さんが対応。 サン・シニアンの凝縮度がありながらタンニンの滑らかなボリ・ラ・ヴィタレルのワイン、ミネルヴォワで女性が造る、優しい味わいのクロ・ド・グラヴァィヤスが好評でした。 今回、名古屋試飲会にご来場の皆さま、本当にありがとうございました!

19
Nov

果汁を彫刻して緻密な粒子ワインを掘る芸術家ジャンポール・ドーマン CH-VIEILLE JULIENNNE シャトー・ヴィエイユ・ジュリアンヌ・CH-NEUF DU PAPE

CH-NEUF DU PAPEシャトー・ヌフ・ドュ・パップで自然派でありながら、パーカーが2年連続で100点を付けたことがあるCH-VIEILLE JULIENNEシャトー・ヴィエユ・ジュリアンヌ。ここまで繊細な粒子のタンニンが存在するのか?と驚くほどの液体を醸すジャンポール。 収穫直前の8月末から現在まで2カ月間はまともに寝たことがないというほどの気力と精神を集中させるジャンポール。醸造中はお父さんと云えども醸造所に入れない。小さな一つ一つの完璧な作業の積み重ねがここまでの緻密な液体を造り上げる。 ジャンポールのワインはまさに芸術の世界だ。まるで液体を素材に彫刻を掘っているよだ。醸造期間の2カ月間は電話もメールも一切見ない、当然、返事も書かない。極限まで全身全霊で集中して取り組んでいる。毎年、この醸造最終の時期になると顔もゲッソリと痩せこけてくる。   一つ一つの醸造作業には、それぞれのやるべき時期がある。それは昼夜を問わない。やるべき時は夜中でもやらなければならない。今はマセラッション“かもし”が終わって、マールをプレスかけている最後の最終作業の時期に入っている。チョット、ホットしているジャンポール。   小松市の森高さん(酒販店)がお客さん達とワイン芸術家ジャンポール・ドーマンのCH-VIELLE JULIENNEシャトー・ヴィエユ・ジュリアンヌを訪問。ジャンポールは数年前に小松市に訪問した。地元のテレビにも出演した。森高さんも勉強したフラ ンス語で熱く語る。   料理とワイン造りの違いは? 森高さんのお客さんから『ワイン造りにレシピはあるんですか?』ジャンポール『料理のシェフは素材を選ぶことができる。でも我々は天気は選べないので毎年 全く違う素材であることをまず受け入れないと始まらない。毎年初めての経験といって良い。発酵が始まるまでドキドキなんだ。』 一年に一回しかできないのがワイン造り ジャンポール『料理のシェフと違うのは、もし料理で失敗したら、市場にもう一度素材を買いに行き、すぐ調理を再開できる。でもワイン造りで失敗したら、一年待たないと再開できない。一年にたった一回しかできないからこそ、この2カ月間にすべてをかけて集中する価値があるんだ。』   失敗は成功のために存在する。 質問『今までに失敗した経験がありますか?』 ジャンポール『勿論、あります。自然が相手だからコントロールができない部分が沢山ある。それに自分自身も完璧ではないから失敗をする。失敗がないと進歩しない。完璧な人間がいないのと同じように、完璧なワインは存在しない。失敗は成功のためにあるんだ。』 100点満点の醸造家は、実に謙虚な努力家 『我々、人間ができることなんて限られている。自然をすべて受け入れるところからワイン造りが始まる。そこから自分の理想を追求することしかできない。完璧でなくても、その年の調和がとれたかが大切だと思う。』 一言一言をかみしめるように語る謙虚なジャンポール。   ヴィエユ・ジュリアンヌ醸造元の廻りには100年を超す葡萄木が沢山生息している。中にはフィロキセラ前の古木も混じっている。砂質土壌は古木の生息率が高い。当時の植え方は混植だ。グルナッシュ、マルサンヌ、カリニャン、クラレットと赤葡萄も白葡萄も混じっている。 ヴィエユ・ジュリアンヌ醸造の畑はシャトー・ヌフ・デュ・パップ地区の最北端に位置している。しかも北斜面にある。ここのワインがエレガントな理由はここにもある。そして、砂質石灰土壌であり、50歳から超100歳の古木が多数あるというのが大きい。   ジャンポール・ドーマンは3年前より、コート・ド・ローヌ、リラック、ジゴンダスのワインを造っている。元研修生だった若者の畑から収穫された葡萄をパップと同じジャンポール流にて醸造している。ジャンポールの繊細さとそれぞれのアペラッションの特徴が表現されている逸品。 世界で引っ張りダコのジャンポールが手掛けたリーズナブルな力強さと繊細さを兼ね備えたワイン。 ヴィエユ・ジュリアンヌのシャトー・ヌフ・ド・パップ09太陽が強かった、濃厚な色合い、酸は少ないがミネラル感でバランスがとれている逸品。リュー・ディ・クラヴァンは樹齢100歳の古木が多い。細かなタンニンが素晴らしい。芸術的粒子の細かさ。   ヴィエユ・ジュリアンヌの世界中から注目されている超希少ワイン、LA BOSSEラボス。1905年以前の葡萄木の葡萄を仕込んだもの。道路を隔てただけでパップを名乗らない。コート・ド・ローヌ。濃縮感たっぷりなのに繊細、芳醇、旨味、絹の舌触り。   並はずれた探求心と人情の深い人柄がワインの中に ジャンポールを見ているとワインはやっぱり人だと思う。何事にも謙虚な姿勢で探求心をもって磨き続けるジャンポールだからこそ可能なワインのスタイルだ。 東北沖地震の時は、自分達が災害にあった時の為に保管しておいたワインをすべて義捐ワインとして提供してくれた。義理人情の深い人。 小松の皆さんも大感激のテースティングでした。ジャンポールさんが来年N13年1月に来日決定。勿論、東京でも試飲会を開催します。是非、今、最も注目度の高いパップの逸品を試飲にお越しください。  

3
Nov

ピノ・ノワールとブルゴーニュ・テロワールにすべてを賭けるPHILIPPE PACALETフィリップ・パカレ

ブルゴーニュ・テロワールの真髄への道 2012年はフィリップにとって22年目のブルゴーニュでの収穫となった。プリューレ・ロック時代は、現ロマネ・コンチのオーナーのアンリー・フレデリック・ロックに乞われて10年間、プリューレ・ロック醸造所のブルゴーニュきっての名醸畑を栽培・醸造を手掛けてきた。その姿は正にブルゴーニュ土壌に魅せられた研究者としてのフィリップ・パカレだった。 若き頃、物理学を勉強していたフィリップをジュル・ショヴェ博士に紹介したのはマルセル・ラピエールだった。以後3年間、『自生酵母とワインにおけるその影響について』を ショヴェ博士と共同研究する幸運に恵まれた。 アンリー・フレデリック・ロックはその研究生としてのフィリップをみいだして、プリューレ・ロック醸造蔵のオノローグ・醸造長としてフィイリップ・パカレを誘った。当時、アンリー・フレデリック・ロックはまだお兄さんが生存していてロマネ・コンチの後継者になることは考えられなかった。だから、自分独自の蔵を立ち上げる必要性があった。新蔵を立ち上げるに当たって、アンリ・フレデリックは本物のブルゴーニュ・ワインを造りたかった。当時すでにマルセル・ラピエールの自然派ワインが教養あるプロの間では話題になっていた。マルセル・ラピエールからフィリップを紹介された。91年から10年間プリューレ・ロック醸造元の基盤を造り上げた。その間に、アンリ・フレデリックはロマネ・コンチの後継者になるという変化が生じた。2001年、フィリップは独立を決意。 ピノ・ノワールとは?ブルゴーニュの土壌とは?大冒険が続く! フィリップは、ジュル・ショヴェ博士と共同研究した理論を、プリューレ・ロックでのブルゴーニュの有数の名醸畑で10年間に渡って栽培・醸造する実践・実験するという幸運に恵まれた。さらに、突き詰めて自由にピノ・ノワールとブルゴーニュ・テロワール(土壌)の関係を追及し究めたかった。 冷静にものごとを判断して実証していく研究者としてのフィリップの大冒険が待っていた。 フィリップは畑を持っていないことを喜んだ。一つのドメーヌが所有する畑では研究対象が限定されてしまう。未知のブルゴーニュの畑を自由にやってみたかった。 ワイン造りでフィリップが最も重要視しているのは、葡萄木の素性だ。“Bon plant”ボン・プランである事が必要条件だ。フィリップは云う『クローンのピノ・ノワールではどんな有名畑の土壌でもダメなんだ。』動物の血統証のような存在なのだろう。セレクション・マサル方式で植えかえられてきた本物のピノ・ノワール木が必要なのだ。フィリップはテロワール・ワインを次のよう公式化している。あくまで葡萄・品種は分母に位置している。              土壌 × 気候 × 人間  テロワール・ワイン = ――――――――――――――                          葡萄・品種 フィリップは、ブルゴーニュのまだ醸造したことがない畑、村、区画で、Bon Plantボン・プランのピノ品種と土壌の関係を試したかった。 Bon plantボン・プランとはセレクション・マサル方式で植えかえられてきた本物ピノ・ノワールのこと。マサル方式のピノ・ノワールは小粒の葡萄で生産量が少なく病気に対する抵抗性が強く、寿命が長い。 ブルゴーニュの多くの名醸畑は、残念ながらクローン方式のピノ・ノワールが多い。近年、経済的理由から用いられている。苗木クローンは葡萄が大粒で、生産量が多いからである。しかし病気への抵抗力が弱く、寿命が短い。最近では30年が寿命のビノ・ノワールが多い。 2012年は独立して12回目の収穫となる。 今日、9月28日はニュイ・サン・ジョルジュ畑の収穫だった。フィリップの大冒険を実現するには葡萄栽培家との円満で濃密な関係が必要だ。ブルゴーニュには葡萄栽培しかやらない栽培専門農家がいる。醸造は一切やらない。すべての労働時間を畑に費やすことができる。 普通、醸造元は自分の畑を所有して、栽培・収穫、醸造、熟成、瓶詰、を独自でやっている。しかも、販売管理も自分でやっているので、営業に使う時間も莫大だ。当然、畑に出る時間は少なくなる。 今年の様な、湿気が多く病気が大発生した難しい年は葡萄木の状態、土壌の湿気、天気予報を見ながらジャスト・ピン・ポイントで対応しなければならなかった。2012年は、やるべき畑仕事が1日遅れただけでベト病が大発生して大被害に繋がる年だった。畑を借りているフィリップは所有者(農業専門家)との契約で畑仕事を指定できるシステムになっている。やるべき日時にやるべき農作業ができたニュイ・サンジョルジュ畑は、難しかった12年も素晴らしい葡萄が収穫できた。 フランス社会の変化がブルゴーニュ・ワインへも影響を与えている。 フィリップの大冒険は続く。9月29日はポマール畑の収穫。ポマール畑の所有者は農家ではない。だから栽培も自分達で管理しなければならない。今、フランス社会は人件費と社会保障費の高騰、労働時間が週35時間となってから、職人業、飲食業、農業関連の企業が行き詰っている。 月曜日から金曜の午前中まで、つまりほぼ週3日制。しかもアルバイト雇用が許されていない。すべて正式な労働契約をしなければならない。(勿論、収穫期など農繁期は短期季節労働者の雇用を許されている。)零細農企業では、人は雇えないし、やるべき仕事ができない。 そこで、今ブルゴーニュでは新型の農作業専門会社が出現している。例えば、散布専門業者、耕作専門業者、など農作業の一部を請負う会社である。 中にはいい加減な会社も存在するが、農作業のプロ中のプロを集めた会社がある。フィリップも何社か試して、やっと良いプロ会社を見つけた。大きな利点は、耕作の日時、やり方をすべて指定できることだ。勿論、フィリップの右腕のジョワンが立ち会い一緒に農作業をする。 フィリップは、農作業員の雇用で近年悩んでいた。それほどフランス社会のシステムが、職人や芸術的要素がある業種を圧迫している。 佳きフランス文化を消滅しかねない問題までになっている。 ここポマールの畑は、今年からそのプロ集団に任せたお陰で、この難しい12年も小粒でフェノリック熟度の高いピノ・ノワールを収穫することができた。 ピノ、ブルゴーニュの真髄を究める大冒険は続く プリューレ・ロック時代は人の問題とか会社経営の問題などの心配する必要がなかった。ただ純粋に栽培・醸造のことに熱中していればよかった。 ブルゴーニュという土壌性を理解するには、ここに住み、生活する人達の文化そのものに触れずには不可能だ。特に、世界中から人とお金と名声が集中して人間のあらゆる感情が渦巻いている土壌だ。これらを抜きにしてブルゴーニュの真髄は理解できないだろ。 色んな問題を解決しながら人間的にも深みが出てきたフィリップ。人間が変わればワインも変わる。最近、ますます深みが出てきた。 フィリップにとって22回目のブルゴーニュの冒険 フィリップには心強い右腕のジャワンがいる。収穫時期の葡萄園における鬼軍曹。 収穫の仕事は体力的には非常にキツイ仕事だ。だから、疲れてくると注意力がなくなってくる瞬間がある。無意識に傷んだ葡萄を収穫してしまう。そんな時、この鬼軍曹がやって来て、一喝!気合を入れる。 収穫は9月24日から約1週間続いた。オー・コート・ニュイ地区にある民宿所を借り切って約30人が寝泊りの合宿生活をする。勿論、専門の料理シェフも雇っている。今年は、イタリア、コロンビア、スペイン、オランダ、アメリカなど国際色豊かな収穫メンバーだった。 晴天日の昼は葡萄園で昼食をとる事が多い。移動時間が短縮できる。 フィリップの冒険は家族ぐるみ フィリップのお母さんも昼食の手伝いにやって来ていた。 フィリップのお母さんはマルセル・ラピエールの妹さんだ。 フィリップは醸造元設立の初期の頃は醸造所、熟成庫もすべてヤドカリで行った。この状態で、繊細なピノ・ノワール醸造は難しかった。思い切って投資してボーヌ駅付近に元ネゴシアンの理想的な建物を購入。土日も顧みず、あまりにもの冒険・仕事への集中が過ぎて家族に迷惑をかけた時期があった。今は、家族と共に歩んでいる。長女も奥さんも収穫に参加して時を共有している。 フィリップにとって発酵槽はフラスコのようなもの、一年に一回しかできない醸造が開始 満足のいく健全な葡萄は偶然には得られない! 次々と各畑から収穫された葡萄が運びこまれてくる。フィリップは葡萄園と醸造所を行き来しながら陣頭指揮をとっている。フィリップは到着した葡萄をみて満足している。 『2012年は難しい年だが、良く観察してやることをキッチやれば問題ない年だった。冬にあまり雨が降らなかったので、土壌の地下水が乾燥していた。春、夏と天気は曇り空が多かったが、実際のところは、あまり雨は降っていなかった。空気中の湿気で病気が大発生した。雨が降る直前に畑への対処をきっちりやっておけば病気もそれ程広がらなかった。雨が降ると1週間も畑に入れなく、畑仕事がドンドン遅れて結果的に病気が大発生した。12年は天気予報を見ながらの指揮で予断を許さなかった。だから今年、夏バカンスはとれなかった。収穫量の少ないのは冬と春先の大寒波によるもの。受け入れるのみ。』 人間は横にいて、発酵しやすいように導き手助けするだけ。 勿論、発酵槽への葡萄の搬入はポンプを使わず人力で上から重力で落し入れる。この葡萄にはそれぞれの畑の自生酵母が付着している。今年の湿気、太陽熱など12年のインフォメーションを一杯満載している葡萄達だ。葡萄果汁、果肉にはポマールの元海底だったころの石灰質岩盤に含まれているミネラリーなインフォメーションもたっぷり含まれている。自然酵母が働き安い状況をつくりだす。『自然酵母が発酵する事で、畑独自の香りや味や感動の情報を活力増強してワインに現れる。』 それらの独自なインフォメーションをワインという液体の中にポマールのテロワールとして写しだす事が出来るのは、ポマールで育った自生酵母達なのだ。ジュルショーヴェ博士との共同研究で判明した約30種類の酵母が、今、グツグツと泡を出しながらトランスフォーメンションの仕事をしている。彼らのお陰で12年の宇宙からの光エネルギーやメッセージ、何億年前の土壌ミネラルからのメッセージをワインの中に写し出される。我々人間に喜びと勇気をもたらしてくれるために! 『畑独自の香りや味や感動の情報が現れる発酵は、エネルギーそのもの! これは、動きの情報である。ワインは、振動の液体である。多くのエネルギー情報を我々に与えてくれる。また、細胞(DNA)を変動、変換させる力をも持っている』フィリップ・パカレ

2
Nov

自然派の真髄継承を自認する クリストフ・パカレ

CHRISTOPH PACALETクリストフ・パカレの無事収穫を終えました。マルセル・ラピエールの甥にあたり、フィリップ・パカレの従兄という自然派ファミリーの中心的存在。マルセル亡き後の自然派精神の真髄継承と自認しているクリストフ。人当たりのソフトさが心地よい人物。 料理人よりの転身。若い頃は南半球のフランス領の島でレストランをやっていた。30代にフランスに戻ってマルセル・ラピエールの後押しもあって醸造所を立ち上げた。大きな視野をもったゆったり感がワインに表現されている。 クリストフが焦ったところを私は見たことがない。人生、何か悟ったところがある。若い頃、フランスを脱出して世界を見てきたことが、大きく彼の生き方に影響を与えているのだろう。 9月17日より収穫を開始して、一週間で終了した。12年はクリストフにとっても難しい年だった。クリストフはそれでも普段の態度と変わらず、やるべきこと、できることを最大限に実行した。収穫人も近所の良く知っているメンバーのみでやった。 晴天に恵まれて、ブルイ山の斜面での収穫。2012年の収穫量はここでも少なかった。でも葡萄自体の品質は良質だった。和気あいあいの雰囲気の中で収穫が進んでいた。やはり、健全な葡萄を選ぶ選別を注意深く指導していた。 クリストフの醸造所はモルゴン村からコート・ド・ピの丘の横を走る山道を通って10分ほど南に移動するとある。 醸造所から見る景色がこの写真だ。ボージョレ中にエネルギーを送っているコート・ド・ブルイ山だ。今日はこの中腹で収穫をやっている。 ブルイ山の斜面は結構な急斜面だ。収穫は常に下から登りながら行われる。上までたどり着くと、再び歩いて下がり、登りがら収穫を始める。この方が腰が疲れなく収穫しやすい。かなりの重労働だ。上までたどり着けばひと休憩が入るのでそれを目指して頑張っている。 収穫人は各自バケツをもって収穫する。そのバケツが葡萄で一杯になるとポルトゥールと呼ばれている運び人が一杯になったバケツを中腹に設置してあるカジェット(箱)まで運んでくる。このは運び人の仕事があ実に重労働なのだ。葡萄が一杯になった斜面を往復しなければならないからだ。 葡萄を醸造所まで運ぶこのカジェットは15Kg前後の葡萄が入る。下の葡萄が潰れない重量になっている。除梗しない葡萄房を丸ごと発酵槽に入れる自然派の造りには大切な入れ物だ。葡萄が潰れると雑菌が繁殖してしまう危険性が増えるからだ。 12年は開花時に雨が降った為、ミルランデールと呼ばれる小粒まじりの葡萄房が多い。収量は極端に減るけど濃縮感のある良質のワインができあがる。まさに2012年を象徴するような葡萄房だ。 葡萄園から醸造所まで運びこまれた葡萄。例年なら冷蔵庫に入れて一夜冷やすのが自然派の造り。葡萄自体の温度が高いまま発酵槽に入れると雑菌繁殖や酸化の危険性が増えるからだ。今年は朝の気温自体は8度と低い為、その必要はなかった。 葡萄選果を徹底したお陰で健全な葡萄が運びこまれた。クリストフもホットして喜んでいる。2012年はボジョレ中の醸造家が収穫を諦めなければならないか?と思うほどの状況だった。そんな中、収量は例年の50~60%の量になるだろうが、こんな美しい葡萄が最終的に収穫。 嬉しさのあまり、葡萄をくわえてバッカスの真似をするクリストフ。こんなお茶目なとこを持っているのもクリストフらしい表現だ。クリッストフ『この写真を日本の皆さんに送ってくれ!』よほど嬉しかったに違いない。 クリストフ・バッカス 今日は収穫の後、醸造所に皆、集まって一杯を交わした。厳しい斜面の収穫も終えてホットしたところ。このひと時がたまらなく楽しい。ここは近所の人達が集まった気心を知った人ばかりだ。クリストフらしいホワットした自然な雰囲気だ。 近所の醸造家、ニコラ・テスタが遊びにやって来た。ニコラはプリューレ・ロックでパカレの後、醸造長を3年務めあげた人物だ。近所なのでアペリティフの時間頃になると時々やって来る。ニコラのワインはピノッテして限りなくピノに近いガメを造る名人だ。 クリストフもトロンコニック型の木樽を発酵槽に使っている。自然派の造りには柔らかさが表現される。 プレス機は勿論100年以上も経った垂直式圧搾機。グラップ・アンティエール・MC発酵の圧搾にはも最も上品に絞れる必需品。どちらも独立する時にマルセル・ラピエールより寄付されたものだ。 クリストフが最も信頼している仲間です。結論として50~60%減の低収穫量ながら厳しい選果作業を徹底した醸造家のみが、品質の高いワインできる年。自然派の造りは、厳しい選果をやらざるをえない。ことしこそ自然派の品質の高さが分かる年になるだろう。 最後にクリストフの畑から見た美しいリヨン方面の全貌、リヨネ山が遠くに見える。こんな景色を見ながら育った葡萄が我々に感激を届けてくれる。

2
Nov

才気あふれるシリル・アロンゾCYRIL ALONZOの12年収穫

頭脳の回転が速いシリルは次々と手を打った。 ボジョレを基盤に活動するシリル・アロンゾにも2012年は他の醸造家と同様の厳しい天候状況を与えられた。春の寒波時点で、シリルは『今年は収穫量に問題をあり』を予測した。顔の広いシリルは寒波被害の少なかったランティエール村の栽培家と交渉し手を組んだ。 12年は自分独自の畑を持たないシリルには有利な年となった。シリルは栽培家と契約して葡萄を買って醸造をする、というネゴシアン醸造家であることが、功を奏して対応が早くできた。ランティエール村の花崗岩が風化した砂土壌の畑を確保できた。 特別なミクロ・クリマを備えた最良の畑を確保 ここの畑は元火山だった山が風化してなだらかな丘が連なっている丘陸地帯の斜面の畑だ。丘と丘の谷間には小川が流れ、風通し良く、森もあって昆虫、微生物の天国がある。豪雨が降っても谷間に向かって即流れてしまう水捌けが良い好立地。 ネゴシアン醸造家だから可能だった、素早い対応!こんな完璧な葡萄を確保 ボジョレには昔から葡萄を育てることを専門にしている葡萄栽培家がいる。彼らは醸造をやらないだけに、栽培に専念できる時間がある。12年のような難しい年は、やるべき畑仕事が一日遅れただけで大被害につながる年だった。シリルはそこに着眼して見事な葡萄を確保できた。 2012年にここまで完璧な葡萄を見たのは少なかった。やはり葡萄栽培に専念できた畑仕事のプロの成す技だ。ひょっとすると12年はシリル・アロンゾが最も輝く年になるかもしれない。この完璧な葡萄をどうやって料理するかシリルの才気の見せ所だ。 栽培は土壌を知り尽くした専門家と共に! 栽培専門だからできる畑仕事。北ローヌ、コート・ロティなどでやる仕立て、ゴブレ仕立ての上を縛って葡萄に太陽をあてる作業。一本一本の葡萄木の上部を縛るのは豊富な時間がないとできない。12年のような太陽の少ない年は必要な作業だった。 晴天の中、着々と収穫が行われた。約30名の収穫人がハサミの音をカチカチと鳴らして葡萄が摘み取られていく。シリルは単に収穫された葡萄を買い取るだけではない。栽培の仕方、収穫の時期、収穫のやり方を指定できる契約。葡萄の品質を自分の目で確認できる。 不良粒の摘出作業の徹底 2012年はどんなにきっちり農作業をやっても、傷んだ葡萄がやはり存在した。不良粒の摘出選別をやる必要があった。収穫された葡萄を発酵槽まで運ぶ前に徹底的に摘出選別した。アロンゾもSO2酸化防止剤を使用しないので、健全な葡萄のみを発酵槽に入れる必要があった。 葡萄葉の偉大なる力 葡萄の葉っぱ偉大だ。雨風や雹に打たれながらも宇宙の光を享けて、光合成をやりながら葡萄房や果肉、糖などを造りあげてしまう。光をプロテインに変えてしまう。収穫直前の今もセッセと糖を高めて今年最後の務めを果たしている。 マルセル・ラピエールの直弟子 アロンゾはマルセル・ラピエールの直弟子でもある。サヴォワ地方での醸造所を閉めてボジョレに帰ってきたアロンゾに独立を勧めて会社設立まで絶大な援助をマルセルから得た。ワイン造りはマルセル仕込みの自然派だ。その上にアロンゾ独特のアイデアを足して独自のスタイルを編み出した。 アロンゾの醸造は超自然派。収穫された葡萄を除梗せずに発酵槽に入れる。勿論、葡萄園で育った自生酵母のみでの発酵。 SO2酸化防止剤も使用しない。コンクリート槽を使用。アロンゾのワインは果実味主体のスーと入ってしまうタイプ。 葡萄を発酵槽に入れる時も葡萄房を傷めてしまうポンプは使用しない。発酵槽の上までベルトコンベアーで上げて重力で落とし込む。 今年のヌーヴォーは軽めで果実味が心地良いグイグイいける本来の典型的なボジョレ・ヌーヴォーのスタイルとなるでしょう。ガメラーの皆さん各種のアロンゾ・ヌーヴォーをお見逃しなく。

1
Nov

ガメイの究極への挑戦者 ジャン・クロード・ラパリュ

詳細な部分へも常に気を配りガメ品種の究極を追及するジャンクロード・ラパリュにとって2012年は心理的にも、収穫量にとっても厳しい年だった。量は50%を切っていた。冬の剪定時より極小の収穫を狙って短く剪定する為に、収穫減はより大きかったが品質は保たれた。 ラパリュ、収穫された葡萄を食べてみると、フェノリック熟度(タンニン・色素)はきれいに濃縮されている。十分な品質であることを確認するジャンクロード。ミルランデール化した小粒の葡萄房が多いから、かなり濃縮度のある果汁が絞れそうだ。 ラパリュでは12年は収穫量も少ないことから、収穫も少人精鋭の収穫を素早く行った。ラパリュはいつもどこよりも早く葡萄が熟すので、自然派醸造家の中では開始が最も早い。9月15日に開始して20日には既に終わっていた。 ラパリュでは通常の収穫が終わった後、約数週間後にキューヴェ・ランド・メルル用の葡萄を収穫する。11月5日、醸造元仲間が集まって醸造所の横にある畑を収穫。ジャンクロードは多くの若手醸造家に慕われている。ラパリュ一家のような仲間達が手伝いにくる。 Cuvee Le Rang du Merleキューヴェ・ラン・ド・メルル、ガメ品種の究極を追及するジャンクロード・ラパリュは超完熟した葡萄を毎年収穫して、時にはバニュルスのような風味になる年もある。ガメ品種の可能性を色んな方向から試しているラパリュ。 ラパリュの篤い人望! 多くの若手醸造家が集まってくる 最も近い醸造元、ラパンのニコラ・テスタ兄弟も収穫の手伝いにやって来ていた。日本からオザミ東京の田中さんがボジョレ登場。ジュラ地方、ブルゴーニュ、ボジョレと訪問中。田中さんはオザミ発祥当時からの最古参の一人。2年一回フランスを訪問して醸造元巡りをやる。オザミ・スタッフのワインに対する愛情は深いものがある。 ラパリュ収穫のポーズ・休憩は興味深い。若手醸造家が造ったワインを持ち寄って試飲会のようだ。それを皆でコメントしたり、醸造の話になる。皆にとって良い情報交換になる。 ラパリュの暖かい人柄を慕って多くの若者がやって来る。これからワイン造りを始めたい若者、初めて3年目の人などラパリュのワインに感動して仲間入りする人達が多い。 木製垂直式プレス機で絞り中 醸造所ではラパリュが2週間前に収穫して、除梗しないMC発酵をしていた葡萄をジャンクロード自慢の木製垂直式プレス機で圧搾している最中だ。2年前に、念願の100年前の圧搾機を手に入れた。ワインの品格・フィネスが一段と上がった。 絞った後の葡萄 この木製垂直式プレス機は重力で上から無理なくゆっくり圧力がかかる。だから、やさしく上品なジュースが絞れる。絞った後の葡萄の皮が破れていない。つまり皮から汗のごとく流れ出たジュースだからフィネスが備わっている。 2012年搾りたてのヌーヴォーを利く。 搾りたてのワインのことを“パラディ”という。まだ糖度を含んでいるのでやや甘さもあってフルーティーで実に心地よい。この時期になると、近所の人達もこのパラディを飲みたくて人が集まってくる。田中さんも12年のヌーヴォーを日本人で最も早くテースティング。 果汁の濃縮感がたっぷりでいて、フルーティさ抜群。まだ半分は葡萄ジュースなので当たり前。この今の時期しか飲めないパラディ!難し年だったけど、やっとここまで漕ぎ着けた、という感じでホットしているジャンクロード。 オザミの田中さんは、地震いらい2年間は無我夢中でオザミの仕事に集中して頑張ってきた。やっと落ち着いてきたところ。オザミにとってワインは生命線だ。オザミの原点を見つめ直したくての来仏だ。挑戦し続けるラパリュに感動の田中さん。 この二人は共通点がある。どちらも頑張り屋、人当たりが柔らかい、プロフェッショナリズムをもって仕事に打ち込んでいる。そして、多くのファンを持っている二人。本気で頑張っている人同士しか分からない接点がある。 醸造期間中のボジョレの風物詩、いやボジョレ文化! 醸造家をめざす若者、中堅的存在になってきたンニコラ・テスタなどジャンクロード・ラパリュを中心に集まった自然派コニュティー。ラパリュのワインを飲みながらのワイン談義。ジャンクロードも楽しそうだ。 ボジョレといえばシャクトリー(生ハム類)!ボジョレでは生ハムの事を“最良の野菜だ”と言い切る文化がある。何種類もの生ハムを薄切りするジャンクロード。 これで何時間でも飲み続けるのが、ボジョレの文化だ。時には朝まで延々と続く。 夜になると、どこからともなく人がジャンクロードの醸造所に集まってくる。深夜でもゆっくりプレスは続くのを皆知っている。、今年の“パラディ”を皆飲みたいのだろう。ジャンクロードも一人でプレス作業するより仲間がいた方が楽しい。 これもプレス時期のボジョレの風物誌といえる。 ジャンクロード・ラパリュのカメ醸造への挑戦 ガメ品種の可能性を極限まで追求するチャレンジャーのラパリュは数年前よりアランフォ・カメの中での発酵を挑戦している。発酵中から陶器の土をとうして酸素と交流している。カメ醸造ワインは明らかに違った顔を見せてくれる。6カメほど醸造している。 ピノ・ノワールのカメ醸造 2012年はジャンクロードは新たな挑戦を始めた。何とピノ・ノワールを2カメで除梗なしのMC発酵を始めた。ラパリュの造るピノ、さてどんなバランスになるのか本当に楽しみだ。 カメ内での醸造は陶器をとうして蒸発するワイン量が半端ではない。それだけで、このカメ醸造を諦めた醸造家もいるほどだ。カメ醸造のワインは大変魅力的だ。柔らかく、ソフトで芯がしっかりしている。すべてを包み込んでしまう暖かさを備えている。 ジャンクロードもほろ酔いの佳い気分! 夜も更けてきたて、酔いも回ってきたけどプレスはまだ続く。時々、人が交代で舞台のような古式圧搾機の上に乗って手動式のハンドルを回す。あまり強くやってはいけない。ゆっくり、ゆっくりだ。 収穫が始めっていらい連日の徹夜で疲れているジャンクロードは、酔いと疲れが合わさって、ほろ酔い気分! 1時を過ぎても、仲間達は帰ろうとしない。ジャンクロードも調子が出てきた。次々とワインボトルのコルクが開けられた。こうなると朝までの危険な予感。しかし、なんと居心地がよいのだろう。ジャンクロード・ラパリュのワインの心地良さに似ている。 奥さんが心配して迎えに来た。この二人の2人3客でここまでやってきた。奥さんも実際に畑に出て農作業をやっている。この難しかった2012年を乗り越えて頑張ってほしい。 この2人の仕事のお陰でどれだけの人が癒されているか、計り知れない。 この二人にエールを送りたい。

30
Oct

モルゴンのクマGEORGES DESCOMBES ジョルジュ・デコンブ

モルゴンの熊ことジョルジュ・デコンブが12年の収穫を無事終了。春先の寒波、、3回に渡る雹、色んなことがあった12年でしたが、最終的には、この笑顔を見てください。細かく葡萄を観察して徹底した農作業を実行したお陰で素晴らしい葡萄を収穫できた。 デコンブの収穫はボージョレ中の誰よりも遅い9月20日より開始し。デコンブの村名の畑はすべて標高が高い丘の上にある。12年の天候の特徴の一つとして比較的に標高の高い処が好条件だった。低地の平らな区画が最も被害が多かった。ここレニエの葡萄は驚くほどの完璧な葡萄が多かった。 開花時期は3週間ぐらいかかって長期間かかった。その間に雨も降ったりで結実不良もありミルランデール化した葡萄が多く収穫された。小粒が多い葡萄房だ。皮の面積と比較して果汁が少ないので濃縮されたワインが出来上がる。欠点は量が少なくなること。しかし品質は高い。 初日のミーティング 9月20日早朝6:30に30名が集合。収穫を始める前のミーティング。今年の葡萄の特殊性を強調、選果の注意点を細かに説明する。絶対に熟していない葡萄を収穫してはいけない事を強調。収穫人の半分は毎年来ているベテラン、それでも今年は特別な選果眼が必要である。その他、3週間ほどの共同生活などの注意点や、ルールなどを説明。 さあ!朝日の出る前から収穫開始! 7時には葡萄園に到着。まだ日の出前だ。レニエ地区から収穫開始。5度と涼しい。収穫には最適な気温だ。 済んだ日しか見えないスイス国境のアルプスの山々、真ん中の一番高い山がモンブラン山だ。何とすがすがしい朝だろう!まさに収穫日よりだ。この地方ではモンブランが見えると数日後に天候が崩れると云われている。 望遠でモンブラン山を撮る。奥のアルプスの手前にある山・台地がジュラの山々だ。フランス中央山脈とスイスアルプスの真ん中で両方から押されて隆起したジュラ地方も見える。何て美しいのだろ!感激の瞬間。 レニエの畑の登る朝日は美しい。 しばらくすると、朝日が葡萄園に登った。絶景だ。モルゴンの熊・ヌヌーンの愛称で呼ばれているジョルジュ、二男のケビンと朝日を背に打ち合わせ中。冷やっとしてどこまでも済んだ空気を暖めるように浮かんできた朝日。 収穫初日の緊張感、シーンとした葡萄園にカチッ、カチィと葡萄を切る鋏の音が響く。 朝日が出ると一挙に温度が2度ほどは上がったんではないか、と思うほど暖かい感触が体に伝わってきた。収穫初日の緊張感の中、静かに収穫が進んで行った。 それにしても美しい。葡萄園に浮かぶ日の出。すべてを包み込んで育んでくれる偉大な太陽。宇宙、太陽、葡萄、人が一体になる瞬間。 収穫初日の教育・指示が超重要! 初日の収穫は大変重要だ。収穫人への教育・指示の徹底が一年間の仕事を左右してしまうほどの重要度を含んでいる。収穫人が傷んだ葡萄や熟していない葡萄を収穫してしまえば、台無しになってしまう。ジョルジュ・デコンブは指示の為に葡萄園を歩き回っていた。 熟した葡萄のみを選別収穫 収穫人一人一人に摘み取るか否か?の判断基準を教育・指示するデコンブ。特に今年は開花がゆっくり3週間もかかったので初期に開花したものと3週間後に開花したものの葡萄の熟度が極端にちがう。濃縮度が高いデコンブのワインはここの指示を徹底しているからだ。 2重、3重の選別・検品作業で天と地ほどの差がでる! 収穫された葡萄を再度徹底チェックする息子のケビン。初日の収穫時の大切な仕事は、この段階で収穫人への徹底教育・指示だ。特に自然派は発酵槽に酸化防止剤を混入しないので傷んだ葡萄があると雑菌が繁殖してお酢になってしまうからだ。手間暇が3倍かかるけど、この方法をとる以外に自然派ワインは完成しない。 常に現場を把握しておくデコンブ 自分自身も実際に収穫してみるデコンブ。自分が指示したとうりに収穫を実際にやってみる。収穫のスピードや リズムがどの程度で進んでいくかを自分の体で体感してみる。デコンブは徹底した現場主義だ。だから濃縮・繊細なワインができる。 ホットするポーズ・休憩 早朝7時から始まった収穫、10時にポーズ休憩がはいる。3時間も中腰で収穫すると腰がたまらなく硬直してくる。特に初日はまだ体が慣れていないからだ。3日が過ぎると体が慣れてくる。体が慣れるまでの3日間は、もう逃げ出したくなるほキツイ。 朝からワインもでる。コーヒー、チーズ、パン、ソーセージなどが用意されている。朝からワインをグイグイ飲む人もいる。まだ、初日で収穫人同士がお互いを知らないので会話もまだ弾まない。 美しい景色の葡萄園でのこのポーズ休憩時のコミュニケーションも楽しい。自然の中でのカスクルット(軽食)が格別美味しい。腰が疲れてくると、このポーズを待ちこがれる。15分ぐらいの休みだけど、本当に癒される。また頑張ろう、という気持になる。 レニエ地区の最も早熟な60歳の区画は約3時間半で終わった。次の区画への移動だ。移動はトラックの荷台に椅子を積んで、まるで軍隊に移動のよだうだ。収穫時の農道はこんなトラックで結構込み合っている。この時期に風物詩といえる。 12年、デコンブを象徴するような葡萄。ミルランデール化した小粒の葡萄。当然、量は例年の50%ほどになってしまう。でも品質は適度の濃縮感もあって、果実味が素晴らしいグイグイワインになるだろう。しかし収穫量が半分という経営的には厳しい年になるだろう。 デコンブでも醸造所内に収穫人が寝泊まりできる施設を備えている。2週間の合宿生活が始まる。30人分の食事を造る奥さんのジスレンの仕事が超重要。 宿舎での雰囲気を明るく楽しく保つように心掛けるのもジスレンの仕事。 ジョルジュとジスレンの連携仕事が光る2週間。

29
Oct

ボジョレ・モルゴン村の新星 Damien COQUELET ダミアン・コクレ

自然派新世代が!時代は動く! ボジョレ・MORGONモルゴン村の新星・ダミアン・コクレ、甘いマスクで恐ろしく透明感のあるスカットしたガメ・ワインを醸す。ガメ大好き人間ガメラー待望の新人登場。自然派ワインのメッカ・モルゴンは新世代がうごめいている。時代は動く。 ダミアン・コクレは、モルゴンの最良の丘 »コート・ド・ピ »に3,5ヘクタールを栽培している。しかも畑がマルセル・ラピエール家とジャン・フォワラールの隣に位置している最適なミクロクリマを備えている。 ダミアン・コクレ、2012年の収穫が9月20日より5日間行われた。ダミアンにとっても12年は厳しい年だった。春の寒波、開花時の悪天候、その後の湿気、雹とボジョレ中が天から与えられた条件をダミアンも経験した。でもダミアンは闘った。 ライダー仲間が応援に! ダミアンの収穫には幼馴染の友人達が応援に駆けつけてくれる。男気があって親分肌のダミアンには多くの仲間がいる。ダミアンの趣味はオートバイだ。ライダー仲間の結束は強い。しかも、多彩な能力を持った友人が多い。ラベルのデザインも友人だ。営業も手伝ってくれる。 出来うる限りの仕事を実行、素晴らしい品質の葡萄を収穫! ダミアン・コクレは今年の2012年は実質上3年目になる。3年目にして試練を味わった。難しい年ながら出来うるすべてを尽くして闘った。お陰で健全な葡萄が収穫できた。品質はかなり高いワインになるだろう。しかし、収穫量は例年の50%と少ない。 ダミアンを応援したい!頑張れ! ダミアン・コクレのように始めたばかりの若者には2012年の収穫減は経営的には実に厳しい年となる。新人にはワイン・ストックもないし、金銭的蓄積もない。何とかダミアンのような自然派の次世代を担う若が育ってほしい。応援しなければならない。 収穫量は半分ながら品質を上げるべく、選果作業、不健全な粒を丹念に切り落としているダミアン・コクレ。手間暇は3倍かかるけどこの方法しか美味しい自然派を造る事ができない。 小粒の房でミルランデール化した典型的な2012年の葡萄房。素晴らしい濃縮感と 酸を含んだ果肉と果汁を持っている。ダミアン独特の透明感とスーっと入ってしまう心地良いワインが生まれそうだ。 自生酵母もダミアンを応援 ダミアン・コクレの自然栽培の畑。昆虫、微生物、野生酵母が生き生きしていそうな畑だ。この斜面、風向き、湿気、太陽光線の当たり具合など、この微気象に合った自生酵母が天文学的数値ほど生息している。その自生酵母がこの地独特の風味を造り上げてくれる。 自生酵母こそがテロワールをワインに投射してくれる! 自然栽培された畑の葡萄の皮に多くの健全な自生酵母が付いている。約30種類ほどの野生酵母だ。この微生物達がこの地独特のワインの風味を醸してくれる。低アルコールでしか働かない酵母達から発酵が始まって、バトンタッチ・リレーのようにして受け継がれてワインができる。特に初期に働く酵母が超重要。 本物の美味しさの為に、困難な道を この自生酵母がイキイキ生きているダミアンの畑を今収穫している。90%の普通の醸造家は、こ葡萄を発酵槽に入れる時、ここでドシャーとSO2酸化防止剤を大量に投入。元気な自生酵母は全滅する。何という抹殺行為。そのあと人工酵母を投入する。ダミアンは自生酵母のみで醸造。S02無添加はリスクを伴うけど、本物の美味しさを表現したい。ドーピングのような手段は使いたくない。 既にダミアンと自生酵母達は会話を開始している。ダミアンはこの酵母付き葡萄をどのように醸造所に運んで、どんな方法で発酵槽に入れるか、シュミレーションはできている。自然酵母を傷めないようにイキイキしたままで働いてもらう方法を考えている。 12年産はグイグイ典型ヌーヴォータイプ 日本のガメ好きの皆さん。ダミアン・コクレのワインを是非試してみてください。11月の第3木曜日のダミアン・ヌーヴォー12年もダミアンのようにイキイキしたワインに仕上がると思います。若手に頑張ってほしい!応援したい。